セブン&アイの利益主義・イオンのシェア主義とサンフラン自由視察
アメリカから帰って来て、
日経MJをチェック。
3月27日1面特集は、
「Jフロント奥田会長退任」。
脱・百貨店化を進めた奥田務会長。
最後の仕事がピーコックストアの売却だった。
いいか悪いかはわからないが。
3月29日は、
「誰がダイエーを追い込んだ」。
これは編集委員の田中陽さんが、
書き下ろした原稿。
最後に、イオンの責任を指摘。
「誰もダイエーを浮上させられず糸は切れ続けた。
イオンは、その10年以上に及ぶ歴史に
終止符を打つ重い責任を負う」
「YY共闘、アマゾンを挟撃」。
ヤマダ電機とヨドバシカメラが、
アマゾン・ドット・コムを狙い撃ちする。
日経新聞本紙は毎日、
アメリカでも、
インターネットで読むことができる。
しかし日経MJはそれができない。
不便だ。
だから帰国してから、
まとめてチェックする。
まとめて読むのも、
流れがわかって、
なかなかよろしいが。
しかし、疲れた。
フィッシャーマンズワーフでの最後の晩餐も、
ダンジネスクラブは美味だったが、
私はずいぶん疲労感にまみれていた。
表情に出ている。
もちろんそれは、
この研修が充実していたからだが、
帰って来てから1日、
疲れは簡単には抜けない。
「ほぼ日」で糸井重里さんが、
また「ことば」について書いている。
「やぁ」「おはよう」
「どうも」「げんき?」
「いいお天気だね」
「あんまり意味ないと思われるようなことばを、
いくつか並べてみました。
でも、このことば、
本気で声に出せますよね」
「意味じゃないところで、
本気で語りかけられる。
親しいものどうしが、
肩をぽんっと叩くみたいにね。
目が合ったときに、
思わず出る笑顔みたいにね」
私が月曜日に使っているのは、
「Good Monday」。
これも、意味のない掛け声。
寅さんが蛾次郎に呼びかける。
「相変わらず馬鹿か~」
これも、掛け声。
「意味じゃないところで、
人と人がやりとりすることばは、
触覚に近いような役割をしています。
つまり、マッサージみたいなことかな」
これは外国人にも、
「人間じゃない生きもの」にも通じる。
糸井の愛犬ブイヨンにも、
結城の愛猫ジジにも。
「人と人が集まっているところには、
そういう『ふれあう』ための
ことばが交わされます」
「マッサージとか、タッチに近いものなので、
ある種の摩擦熱のようなものが発生します」
そして、ここでコピーライターの真骨頂。
「すこーし、暖かくなるように思います」
アメリカ小売りサービス業、
そのホスピタリティは、
糸井の言う「意味のないことば」を、
ポジティブに掛け合うところから、
生まれる。
人と人が集う店には、
そんなものがあふれている。
さて日経新聞一面に、
セブン&アイ、
今期予想営業益3000億円台」。
来年の2014年2月期の決算予測。
連結営業収益は5兆6400億円、
前年比13%プラス。
連結営業利益は3400億円で、
前期比15%プラス。
国内小売業初の3000億円超えで、
上場企業ではトップ20に入る。
原動力はコンビニエンスストア事業。
国内コンビニ、米国セブン-イレブン、
ともに過去最高益。
2013年2月期連結決算は、
営業利益2956億円。
かすかに3000億円に届かず、
しかし2年連続で過去最高。
一方のイオンは、
傘下のシネマコンプレックス運営会社を、
国内最大とする。
ショッピングセンターなどに入る複合映画館。
ワーナー・マイカルとイオンシネマズの合併。
合計スクリーン数は609となる。
現在、首位のTOHOシネマズは567スクリーン。
国内スクリーン数は約3300。
イオンのシェアはほぼ2割。
2年後の2015年度には、
国内占拠率を3割にもっていく。
ショッピングセンターは、
物売り機能だけでは、
充分ではない。
非物販事業、すなわちサービス業と、
物販事業、小売業との複合施設でなければ、
多くの顧客満足を創り出すことはできない。
非物販業の要素を、
物販業が取り入れると同時に、
商業集積の中に、
非物販業を取り込む。
それが大きな戦略。
映画もその一つだが、
イオンは確実に、
ショッピングセンター・テナントの、
ジャンルを増やしている。
セブン&アイは利益主義、
対してイオンはシェア主義。
この好対照ぶりは、
むしろポジショニング時代にこそ、
ふさわしいものだ。
ダイエー、西友、
イトーヨーカ堂、
ジャスコ、マイカルと、
並んだ時代は、
レース型競争だった。
考えてみると、
このビッグ5のダイエーとマイカルが、
イオンに統合される。
西友は世界のウォルマート傘下。
イトーヨーカ堂グループは、
かつての子会社セブン-イレブンが軸。
おもしろい時代なのかもしれない。
さてアメリカ・サンフランシスコの最終日。
自由視察は充実。
「ケーブルカーが着いて
折り返すあたり♪」
豊田勇造の歌声を思いだす。
その前に、ユニクロ。
昨年10月のオープン直後のような混雑はないが、
ずっとカラフルな売り場になって、
アメリカン・トレンドを吸収している。
夜の外観も素晴らしい。
ギャップは絶好の立地。
しかし弱含み。
ギャップの向かいには、
フォーエバー21。
ファスト・ファッションの躍進組。
しかし売り場のクレンリネス、
メンテナンスはいつもよろしくない。
ウェストフィールドSCには、
アバクロンビー&フィッチ。
全米チェーンストアランキングでは、
100位からずり落ちたが、
相変わらずのユニークなポジショニング。
2階にはエアロポステール。
FORTUNE「働きがいのある企業」で、
97位に滑り込んできた。
ウェストフィールドSCの隣に、
路面店のオールド・ネイビー。
ギャップの低価格路線店で、好調。
カラフルな売り場はユニクロ以上。
中心価格帯は10ドル。
店内にピックアップ・トラック。
そしてオフプライスストアの
ロス(Ross)。
全米チェーンストアランキング42位。
年商86億ドル、1124店。
8600億円で伸び率9.5%。
ステータスブランドの売れ残り品を、
集荷してきて雑然と並べただけの売り場。
しかし時間をかけて探せば、
掘り出し物が安く手に入る。
このコンセプトが受けて、
大繁盛。
コンテナストアも、
ダウンタウンの路面店で出店。
こちらは「働きがいのある企業」で、
全米16位。
これ以外にもシティ・ターゲット、
ホールフーズの最新店、
食品強化型ウォルグリーン。
見所満載の「ケーブルカーの折り返すあたり」。
サンフランシスコ中心部は、
コンテスト型競争のメッカでもある。
レース型競争一本槍では、
生き残ってはいけない。
アメリカも日本も。
〈結城義晴〉