「小売り王者が消える日」とサンフラン都市型モデル店舗群の店齢
春の嵐。
商人舎ホームページの人気コラム、
「常盤勝美の2週間天気予報」。
週の初めの予想だが、
ぴったしカンカン。
「日本海を低気圧が発達しながら進むため、
各地で南寄りの風と雨脚が強まり、
荒れ模様の天気となる」。
常盤さんは、
「花散らしの嵐」と表現した。
今日になっての気象庁の見解。
予想最大瞬間風速は、
西日本から北日本の陸上でも35メートル。
予想される降水量は、
四国や東海で250mm、
近畿で200mm、関東甲信で180mmなど。
各地で警戒警報。
十二分に警戒して、
お店を守ってほしい。
さて日経新聞の『真相深層』。
「『小売り王者』が消える日」
編集委員の中村直文さんが書く。
ダイエーがイオンの子会社になる話。
イオンとは純粋持株会社のことだから、
株式会社ダイエーはなくならない。
イオンは店名もダイエーのまま残すとコメント。
だから当面、店も残る。
株式公開買い付けが始まるのは7月中旬。
筆頭株主の丸紅から24%を取得、
自社の持株と合計で4割強を保有する予定。
しかし記事のダイエー幹部のコメント。
「今回がダイエーの名前が
残るかどうか、
最後のチャンス」。
ダイエーの社内にも悲壮感が漂う。
現在の売上高は8300億円。
ピーク時の4分の1。
有利子負債は2011年度末に600億円。
産業再生機構入りした2004年度は、
1兆5000億円だった。
財務体質は大幅改善。
しかし営業力回復はままならず。
1㎡当たり売場販売効率。
2008年度に59万4000円、
2011年度に54万8000円。
2008年度以降、ずっと最終赤字。
理由の一つは、店の老朽化。
約200店の平均店舗年齢は30弱。
イオンリテールは15年、
イトーヨーカ堂も20年。
「店舗年齢」とは、
新店としてオープンしたり、
あるいは大型改装したりした年から、
数えた店の年齢。
三者いずれも、
合格点はもらえないが、、
特にダイエーは、
ちょいとひどすぎる。
故渥美俊一先生の持論。
「全店平均店齢は、
小学校低学年で
なければならない」
「悪くても、小学生高学年レベル」
ダイエーは論外の三十路。
イトーヨーカ堂も成人レベル。
イオンリテールも中学校3年。
あなたの会社は、
あなたの店は、
小学校?
それとも、
中学、高校?
この記事で一番おもしろかったのは、
この店齢のところ。
以って自戒とすべし。
アメリカのアルバートソンが駄目なのも、
シアーズが苦しいのも、
この店齢によるものだ。
つまり、会社全体の投資力が、
現場の力量を大きく左右する。
それ抜きに、
「現場力」や「人間力」を、
強調し要求してはならない。
では、イオン傘下でダイエーはどうなるか。
「マイカルやヤオハンの道をたどる」。
これが中村さんの読みか。
1997年にイオンが救済したヤオハンは、
マックスバリュ東海になった。
2001年に会社更生法申請したマイカルは、
2011年、イオンリテールに統合された。
サティの名も今はない。
両社ともに、
「法的整理後にイオンが支援企業となった」。
だからダイエーもやがてイオンとなるか、
マックスバリュとなるか。
これがこの記事の予測。
一言でいえば、
「非ダイエー化」。
ダイエー店舗の空きスペースには、
イオンバイクやイオンリカーなどが
導入されるらしい。
プライベートブランドは、
トップバリュに統一される。
「両社がそれぞれ持つのは
『意味がない』」と、
岡田元也イオン社長。
人員は、
「国内の新店にダイエー社員を配置し、
自社の社員はアジアに転用する」。
これは、なかなかいい。
そして、結論。
「ダイエーはイオンの国内外での
成長のための補完企業として
位置付けられているフシがある」。
そして、「そこには、
自律的な成長企業としてのダイエーはない」。
しかしこれは当たり前のこと。
現在のダイエーが持つ人的、物的資産を、
イオン全体の中で位置づけ、
最大限、有効に活用する。
ただしその中で、
現在のイオンとダイエーの社員や物件には、
公平、平等に対応するに違いない。
それ以上でもいけないし、
それ以下でもいけない。
自立的成長企業としてのポテンシャルは、
もはやダイエーにはない。
例えばドイツアルブレヒトファミリー傘下の、
米国トレーダー・ジョーのような。
あるいはアーデングループ傘下の、
ゲルソンズのような。
問題はダイエーのブランド。
これはそれぞれの物件の状態によるだろう。
私は何でもかんでも機械的に、
イオン流に変えることは、
むしろ損失が大きいと思う。
総合スーパーは全てイオンにし、
スーパーマーケットは全部、
マックスバリュにする。
これはいけない。
是是非非の案件となると思う。
全体最適の中で、
ダイエーが有するブランドを、
有効に活用するのがいい。
これも、当たり前のことだが。
だから「非ダイエー化」ではなく、
ダイエーの「イオンへの融合」となる。
会社の吸収や合併、統合には、
定石があって、
それは実はイオンが、
一番よく心得ている案件だ。
かつての「小売り王者」。
ノスタルジーは確かにある。
しかし顧客から顧みられない店は、
ノスタルジーで残してはいけない。
カスタマーとは、
顧みる客だ。
〈これ結城義晴の商標登録!!〉
顧客から支持されている店は、
ダイエーの名前を使って、
顧客に満足を与えるべきだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
そしてダイエーの社員諸君には、
「商人の本籍地と現住所」を訴えよう。
ダイエーを本籍地とする誇りを持ち続けてほしい。
しかし現住所は純粋持株会社イオンの所属となる。
さて、昨日の続き。
サンフランシスコ・ダウンタウンの自由視察。
まずシティ・ターゲット。
ターゲットの2012年度は、
売上高733億ドル(7兆3301億円)
伸び率4.9%。
純利益29億9900万ドル(2999億円)、
こちらの伸び率は2.4%、
総店舗数1778。
今月発刊のFORTUNEでも、
ウォルマートのライバルとして取り上げられている。
その新しいフォーマットが、
シティ・ターゲット。
売場面積 5000~9000㎡。
2012年7月に、このサンフランシスコをはじめ、
ロサンゼルス、シカゴ、シアトルにオープン。
特に流行ファッションやデザイナーコレクションなど、
アパレルを強化している。
もちろん生鮮食品もある程度、
品揃えする。
グロサリーや冷凍食品は、
重要部門。
ターゲット得意のファッション、
住関連、ドラッグストアをコンバイン。
オーディオや家電も、
都会人の生活に欠かせない。
子ども用品もスペースをとって展開。
土曜、日曜、祭日には、
顧客でごった返す。
出店コストは高いが、
それは客数と売上高で回収する。
世界的な都市化現象が、
シティ・ターゲットを生み出した。
そのシティ・ターゲットから、
2ブロックほどの地点に、
ホールフーズがオープンした。
ホールフーズの2012年度は、
売上高116億9900万ドル〈1兆1699億円〉、
伸び率15.7%、既存店伸び率8.7%とすごい。
純利益は4億6600万ドル(466億円)で、
伸び率35.9%。
売上高は1兆円を超え、
期末店舗数も335店の、
大チェーンとなった。
青果部門はご覧の最高レベル。
シーフード部門は、
アメリカ最高。
精肉は対面販売中心で、
こちらも最高級品とオーガニックがズラリ。
そしてナチュラルチーズ。
加工食品もオーガニック中心。
売場の最後にサービスデリ。
フードサービス部門と呼ばれる。
レジは大繁盛店用のスタイルが確立された。
トレーダー・ジョーもホールフーズも、
今や都市型店舗では、
このスタイルが主流。
日本ではセブン-イレブンの繁盛店が、
すべて、このスタイルに進化している。
イベント・スケジュール・ボード。
都市型店舗の中で、
ホールフーズは一番、
経験が深い。
それだけに、安定した店づくりを見せる。
そしてウォルグリーン。
ウォルグリーンの2012年度は、
売上高716億3300万ドル(7兆1633億円)、
伸び率はマイナス0.8%。
しかしアライアンス・ブーツを傘下に収め、
規模は1000億ドルの大台に乗る。
純利益は21億2700万ドル(2127億円)、
伸び率マイナス21.6%。
期末店舗数はなんと8385店。
食品強化を進めて、
客数伸びを狙う。
ほとんどスーパーマーケットのような食品売り場。
カットフルーツもこんなに品揃え。
ミート、デアリーも多段ケースで、
豊富なアソートメント。
冷凍食品はリーチインケース。
中通路には島陳列。
店舗右サイドにDPE。
そして店舗の一番奥に、
調剤部門。
ここにはいつも顧客が並んでいる。
サプリメントもこの店が一番。
ビューティケアもご覧の売り場。
Tシャツなどファッションも、
ハンガー陳列で展開。
そしてレジはホールフーズと同じ。
アメリカの都市型店舗は、
定型型が出来上がりつつある。
そしていずれも、
店齢1歳、
または0歳。
イノベーションと進化がある。
日本のコンビニに通じる革新性だ。
イオン傘下となるダイエーにも、
このイノベーションが求められている。
〈結城義晴〉