松井忠三良品計画会長の言葉とペガサスクラブ渥美俊一先生の檄
「消費者の興味は、あこがれの追求から、
限られた収入でいかに合理的に暮らすかに移った」
㈱良品計画会長の松井忠三さんの発言。
日経新聞「人こと」のインタビュー記事。
これは、ウォルマートの、
現在のキャッチフレーズに通ずる。
「Save money, Live better!」
商人舎2008年7月の標語でもある。
松井さんのコメントは続く。
「消費行動の変化は、
『石油危機後の経済停滞が、
無印などのPB品を生んだ時のように大きい』」
これを価値観の転換という。
私も、無印良品の誕生には、思い出がある。
1977年4月1日、㈱商業界に入社し、
『販売革新』編集部に配属された。
ちょうどその時、『販売革新』は、
当時の西友ストアー「素材缶詰」開発の一部始終を掲載した。
そしてそれが「無印良品」コンセプトの核となって、
1980年12月、㈱西友のプライベートブランドとして、
40品目でデビュー。
10年後の1989年、
西友から独立した㈱良品計画は、
「無印良品」の企画開発・製造、
流通・販売の製造小売業として成長。
一方、西友は、
ウォルマート・ジャパンとなって、
実質的に、この世から消えた。
最初の素材缶の開発を担ったのは、
「ドゥ・タンク・ダイナックス」。
いわゆるコンサルタント集団だったが、彼らは、
当時はやりの「シンク・タンク(think tank=考える集団)」ではなく、
「do tank=行動する集団」を標榜していた。
リーダーは、46歳で早世した天才小野貴邦。
その弟子ともいうべき人物が、
現在も活躍するドゥ・ハウス社長の稲垣佳伸。
元に戻って、松井さんの言わんとするところを類推すると、
日本の消費者は「あこがれ」のモノの追求をしなくなった。
モノに関しては、「合理的に暮らす」。
限られた収入の中で。
コモディティがこれだけ成熟し、氾濫し、飽和すれば、
賢い消費は可能である。
しかし、それ以外の商品、
すなわちノンコモディティの消費、
あるいはノンコモディティのサービスは、
未だ満たされてはいないと、私は思う。
コモディティに関しては、
「最良のベーシック」が切望される。
だから松井さんは言う。
「まず品目数を3割減らし競争力ある商品に絞り込む」
そのうえで決意はマンジメント全体に及ぶ。
「毎年経営を変革しなければ生き残れない」
さて、昨日は、東京・グランドプリンスホテル赤坂。
ペガサスクラブ2010年新年度政策セミナー。
これは通算すると、なんと第2510回目のベガサスセミナーとなる。
主宰者・渥美俊一先生は、
今年8月に84歳になられる。
ライフコーポレーション清水信次会長とは、
三重県松阪の、同郷の同い年。
こちらは今年7月の参議院選に
出馬予定で士気高揚。
参加者はもう、
「渥美先生の雄姿を見に来る」の観あり。
その期待に違わず、渥美俊一、元気いっぱい。
日本の政治家には、
80歳以上の国会議員がいないそうで、
彼らに爪の垢を煎じて
飲ませねばならないくらい。
もっとも、中曽根康弘氏は、無理やり引退させられても、
この日、前楽天イーグルス野村克也監督の1500勝記念パーティを主催して、意気軒昂。
どこの世界にも「化け物級」はいらっしゃる。
さて渥美先生の今回の講義、
一昨日の27日に60分を3本、
昨日28日には60分を2本。
そして共演の、他のどの講師よりも、
迫力と気力と主張力において、
当然ながら、図抜けている。
685人の聴講者を引き摺り回し、
覚醒させ、決意新たにさせた。
本物の「檄」を飛ばし続けた。
まったく、感服する以外にない。
その渥美先生の今回の分析と主張。
「消費者物価は、
輸入物価・卸売物価ほどには下がっていない」
「消費量は減っているわけではない。
生活必需品は減るわけがない」
「寡占化が急速に進行している」
2009年への批判は、多数。
「セールあの手この手」と、
エブリデーセームロープライスへの逆行。
ローコスト・マネジメントの仕組みのない
「ディスカウント型店舗」。
「現場技能向上の奨励運動」と、
「現場力高揚主義」などなど。
そしてまとめで強調されたことは、
基本経営指標モデルをつくるべきであること。
軸となり、芯となる経営の尺度が
なくてはならないとの提言。
まさしく正論。
それから原理原則の習得と、
ストア・コンパリゾン。
最後まで渥美先生が強調したのは、
「業務システム」の転換と標準化。
不況、不振と言って、
商略で明けくれるよりも、
コツコツと業務制度改革と
教育システム強化を進める方がよいし、
それが2010年の正しい政策である。
私も、この点、感服しつつ、賛同したい。
<結城義晴>