ジジと金門橋[2010日曜版⑫]
春分の日です。
でも、ユウキヨシハルのおとうさん、
いません。
アメリカにシュッチョーです。
なんだか、さみしい。
みどりの山のうえに、
ならんだ風車。
サクラメントのウィンドミル。
これでデンキをおこす。
おとうさんは、ずいぶん、
とおくにいっています。
もうすぐ、かえってくるはずです。
みどりの山の風車から、
光る海へ。
ながいながい移動。
それがシュッチョーです。
サンフランシスコという街。
坂道のおおいところ。
建物のカベが、
ペイントされていた。
おとうさんは、
いちばんユーメーなところにも、
いきました。
バスがとまっていた。
ダブルデッカー。
ユーメーなところは、
ユーメーなつり橋。
ジョゼフ・シュトラウスという人の銅像。
このつり橋をつくるシゴトをした。
橋をつっているワイヤー。
太いですね。
おとうさんたち、
この橋を、あるくことにした。
「ホント?」
ゴールデンゲート海峡。
サンフランシスコ湾と太平洋のあいだにある。
あるきはじめました。
ひだりには、クルマがはしっています。
ボクは、ちょっと、
シンパイです。
おとうさんは、
「コーショキョーフショー」だからです。
たかいところが、トクイではない。
じつは、ボクも、
たかいところからおりるの、
にがてなんです。
おとうさんのことをおもっていたら、
ボクもちょっと、こわくなった。
それに、このテーブルのうえには、
あがってはいけないことになっているんです。
でも、おとうさん、
ずんずん、スピードだして、
あるいていった。
そして、三分の一のところに、
つり橋の柱がある。
そこが、今日の終点。
すこし、ほっとした。
ケシキはいい。
こわいけど、のぞいてみる。
「ゼッケーかな、ゼッケーかな」
こんなに晴れわたった日はめずらしい。
サンフランシスコ湾が一望。
サンフランシスコの街がみえる。
ひだりに、アルカトラズ島。
ボクも、ちょっと、
ひくいところに。
フシギです。
ちょっとひくくなるだけで、
ぜんぜんこわくない。
さいごに写真。
アサノ先生と。
シュッチョーのシゴトは、
いそがしい。
でもそれがおとうさんのシゴトです。
ちょっと、つかれているけれど、
じぶんのシゴトに手はぬかない。
でも人にシゴトを、強(し)いたりしない。
人のシゴトは、みとめてくれる。
もうすぐかえってきます。
ボクは、まっています。
それがボクの、
シゴトです。
<『ジジの気分』(未刊)より>