談志の遺訓「芸術・芸能」とマクドナルド業績ダウン回復作戦?
月刊『商人舎』8月号、
刷り上がってきました。
今月の特集。
ベニマル・サミット・そしてヤオコー。
スーパーマーケットのクォリティ&サービス型フォーマット戦略
トレーダー・ジョー、
Whole Foods Marketに続いて、
ヨークベニマル、サミット、
そしてヤオコーを特集しました。
いずれも新しいフォーマットを開発し、
新しいマーチャンダイジングを展開中。
それによってアウトスタンディングな
ポジショニングを構築する。
そのケーススタディとして、
三社を取り上げました。
月刊『商人舎』は表紙に400字ほどの言葉があります。
「Cover Message」と呼んでいます。
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終戦直後の昭和22年創業の
第一世代、ヨークベニマル。
商業界ゼミナールで
全国の小売店のモデルになり、
『野越え山越え』の精神と
「ベニマル十二章」を堅持しつつ、
日本のスーパーマーケットをリードし続けてきた。
スーパーマーケットの業態を確立した
関西スーパーをベンチマークし、
極めてオーソドックスなマネジメントを特徴とする
業界の優等生サミットは第二世代。
ライフスタイルアソートメントと
ミールソリューションを標榜しつつ、
第三世代ながら
トップレベルに躍り出たヤオコー。
日本の食品小売業を代表する
クォリティ&サービス型の三世代企業。
その最新店舗の店づくりとMDをスタディすることで、
アウトスタンディングなポジショニング戦略の
要諦を明らかにする。
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8月号の趣旨は、
このCover Messageでお分かりいただけるはず。
しかし、商人舎は、
スーパーマーケット経営だけの
メディアではありません。
「商業の現代化」を標榜して、
たとえばポスト・モダンのチェーンストア・マネジメントを、
探求します。
「業態」から「フォーマット」への転換を提案します。
イノベーションを志す商人を応援します。
一言でいえば、
近代化を果たした小売商業の
悪い部分を修正し、
良い部分をさらに伸ばして、
現代化へと結びつける。
だから対象は多岐に渡ります。
来月は「総合スーパー」の特集を組みます。
ご期待ください。
8月号の取材のご協力、
この場を借りて感謝申し上げます。
トップのみなさん、広報のみなさん、
ありがとうございました。
さて、『ほぼ日』の対談。
立川志の輔×糸井重里。
タイトルは「落語のはなしをしましょうか。」
話題は志の輔の師匠・立川談志のことばかり。
まずは談志の意外な側面。
志の輔「落語界一、
お辞儀がきれいな師匠だった」
糸井「お客様を、しっかりとお見送りする」
志の輔「最初のお辞儀もそうでしたけど、
見送る時は、座布団をさっとはずして、
直に座ったりしたこともありましたよ」
糸井「みごとですよね。
そこに大サービスを感じました。
ほんとうに、ぺたーっとお辞儀してましたね」
権力には楯突くし、
マスコミにはぶっきら棒の談志。
それがお客様へのお辞儀は業界一。
志の輔が教わった肝になること。
「『芸術』と『芸能』の境目が大事なんだ、と。
言い換えれば『芸』と『商売』との間ですね」
「食べるために芸をやってるんだけど、
でも、食べるためだけに
芸をやっているのとも違う」
これは商売の仕事にも通じる。
食べるために商売しているけれど、
でも、食べるためだけに
商売やっているのではない。
食べるために仕事しているけれど、
でも、食べるためだけに
仕事やっているのではない。
談志は志の輔に言い聞かせた。
「自分が納得する『芸術』と、
人を楽しませる『芸能』と、
その間が、おまえの落語なんだ」
自分が納得する仕事と、
お客様の役に立つ仕事。
その間にあなたの仕事の価値がある。
どこに自分の仕事を位置づけるかで、
自分のポジショニングが決まる。
さて日経新聞のWeb刊。
紙の日経新聞のWeb版。
「マクドナルド、円安響き
今期業績を下方修正」
日本マクドナルドホールディングス。
2013年上半期の連結決算。
1~6月期。
半期の売上高は1297億円で、
前年同期比11%減。
経常利益74億円で、39%減。
それでも経常利益率は5.7%。
純利益は45億円で、35%減。
問題の円安の影響は7億円と判定。
既存店来店客数は前年同期比2.8%減、
既存店売上高は6.3%減。
今日、記者会見の席で、
原田泳幸会長兼社長のコメント。
「残念な結果」。
こんな時には、
「遺憾ながら」か、
「残念」か、
どちらかしかない。
上半期の不振の原因。
「コンビニエンスストアとの競争が厳しいなかで
期間限定のハンバーガーを含む新商品の投入を
抑制したことが響き集客に苦戦した」
これはクォーターパウンド・バーガーのことを意味している。
その投入が、遅かった、少なかった。
2013年12月期通期の見通しも発表。
売上高2650億円、10%減。
経常利益195億円、18%減。
それでも経常利益率は7.4%。
連結純利益は117億円、
前期比9%減の予想。
円安により原材料は価格が上昇。
その影響は経常利益を20億円押し下げる。
通期の減益の理由。
第1は、競争激化による期初の客数減。
第2は、為替の円安による原材料費上昇。
アベノミクスは国内消費産業には、
アゲンストウィンドゥなのである。
原田泳幸の見解。
「外食産業を巡る消費環境は極めて厳しい」
外食・中食・内食の間の競争。
業態を超えた競争。
その渦の中心に、
日本の場合、コンビニがいる。
アメリカではウォルマートが、
そこにデンと座っている。
原田泳幸の作戦。
「1~2月の失敗を生かし、
集客に向け新たなメニューを
組み立てることが今後の課題だ」
スーパーマーケットの世界では、
「新MD」という言葉が大流行りだが、
外食産業では「新商品」か。
どちらもマーチャンダイジングによって、
失地回復を狙おうという政策だが、
ではコンビニは、
新商品によってマクドナルドを、
窮地に追い込んでいるのか。
今年度のコンビニの国内出店計画は、
約4000店で過去最高。
出店数から閉店数を差し引いた純増数は、
2300店超で、これも過去最高。
セブン-イレブンは新店1500店の目標を、
着々と実現させている。
その上で、サービス機能、新商品投入。
店全体の存在価値を高めている。
マクドナルドが、
クォーターパウンドバーガーを、
早めに投入しても、
そのバラエティを多様化しても、
太刀打ちはできそうもない。
来年4月の消費増税に向けて、
全軍での総力戦が展開されているのだ。
そのあたりの認識と緊迫感。
ビンビンと感じるアンテナを持たねばならない。
給料をもらうために経営をやっているけれど、
でも、給料のためだけに
商売をやっているのではない。
〈結城義晴〉