まど・みちお「セミ」と「大企業を元気に」と「ヘルスノミクス」のアホか!
暑い暑い夏が、
おわりに近づいた。
横浜商人舎オフィスの裏の遊歩道。
蝉の亡骸。
うつ伏せで死んでいる。
小蟻が近づいている。
『セミ』
土の中から けさでてきて
もうセミが うたえてる
ならったことも ない
きいたことも ない
とおい そせんの うたを
とおい そせんの ふしで
たいよう ばんざい ざい ざい ざい
たいよう ばんざい ざい ざい ざい
うたは もえて もえて
こずえへのぼり くもへのぼり
くも つきぬけて そらへと のぼり
たいようの てに すくわれて
そのゆびに あそんで ちりこぼれ
きらめき ながら
ゆらめき ながら
またふるさとの うみやまかわへと
しんしん しんしん まいおりてきて
つちのなかへと しみとおっていく
(まど・みちお)
あんなに暑かった夏が、
終わろうとしている。
甲子園は、群馬県の前橋育英高校が、
延岡学園高校を破って初優勝。
海の向こうでは、
イチローが日米通算4000本安打。
アメリカ大リーグでの記録でも、
ルー・ゲーリックに並んだ。
考えてみると8月下旬は、
野球とベースボールの季節。
しかし日本の高校生の夏は終った。
お疲れ様。
ゆっくり休みなさい。
さて日経新聞『私の履歴書』。
今月は狂言師の野村萬。
「〇〇師」という呼び方、
なかなかに、よい。
医師、薬剤師、看護師、
楽師、能楽師。
宣教師に、伝道師というのまで、
ある。
ただし人間国宝の「師」はめったにない。
その人間国宝の狂言師・野村萬。
日本洋画壇の重鎮・中川一政画伯から可愛がられた。
初めて中川画伯主催のお茶会の席に招かれた。
その茶会の席に、
世阿弥の言葉を書いた軸が掛かっていた。
「上手はへたの手本也
下手は上手のてほんなり」
素晴らしい。
これ、マネジメントに通じる。
同じく日経新聞経済コラム『大機小機』。
今日のタイトルは、
「大企業を元気にしよう」
「経済活性化の決まり文句が
ベンチャー育成である」
安倍晋三政権の第3の矢でも、
成長戦略の柱にベンチャー育成が掲げられる。
だがコラムニストの指摘は、
「大企業の圧倒的な存在感」。
日本の企業数は421万社余り、
大企業は1万社ほど。
企業数でわずか0.2%のシェア。
利益では70%。
納税額では約50%、
従業員数も30%超。
設備投資では70%。
特許出願のシェアは90%。
だから、
「第3の矢の果実を効果的に得るためには、
大企業の元気を引き出すことが不可欠」
そこで、大企業の活性化策が羅列される。
事業再編の促進、
設備投資促進税制、
企業統治の強化。
社外取締役の活用、
法人税をはじめ企業の税負担の軽減。
労働市場の流動化一辺倒ではなく、
長期雇用を促進していく。
良い意味で、
「日本型企業文化の再活性化」も有益。
私は大企業も中小企業も、
どちらも大切だと考えている。
「商業の現代化」のためには、
自然界の森のように巨木も雑木・雑草も、
どっちも必要だ。
手っ取り早くアベノミクスを実現させるならば、
「大企業活性化策」を打てばいい。
しかし私たちの最終目的は、
アベノミクスではない。
アベノミクスも一時の一手段だ。
アベノミクスで思い出したが、
今週の日経は、特徴的な連載をしている。
「へルスノミクス 健康の経済学」
今日はその第3回。
「食事は抜いてもサプリメントは抜かない」。
そんな馬鹿な食生活をしているのが、
和洋女子大学教授の三浦俊彦さん。
54歳にもなって、朝、
次々とサプリを飲んで大学へ向かう。
1日の量は300錠。
購入費は月10万円超。
「1日3食全てがカップ麺ならよい方で、
ポテトチップスだけの日も」。
東京近郊で一人暮らし。
自宅にはサプリの瓶が山積み。
食への関心は薄く、
睡眠時間は不規則で運動もしない。
が、サプリだけは「飲まないと不安」。
健康とは程遠い生活で、
健診でもしばしば再検査。
アホか!
そう罵倒したくなるが、
「サプリ依存症」人間は増加中。
2012年の統計。
単身世帯の健康食品支出額は1万3018円。
これは1万0367円のコメを上回る。
コメと健康食品は2011年に「主従逆転」。
その理由を記事は「手軽さ」に求める。
「つまりコンビニエンスストアの存在」。
コンビニには、
菓子のような袋入りサプリがずらり。
富士経済の調査。
13年の健康食品市場は、
1兆9000億円。
しかし意外にも、
特定保健用食品(トクホ)は伸び悩む。
2007年がトクホのピーク。
それ以降、2割以上の減少。
主因は「広告の表現」。
トクホは曖昧な表現でしか、
効果を訴えることができない。
トクホ以外の一般の健康食品は、
効果が認められていないにもかかわらず
個人の体験談をアピールする。
消費者は安易に、
サプリなどの一般健康食品へと流れる。
アホか!
行動経済学で、
「認知的不協和」と呼ばれる行動。
人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、
またそのときに覚える不快感。
一方、国民生活センターには、
2012年度に健康食品による健康被害が、
536件寄せられた。
「粗悪な商品や過剰摂取」が害をもたらす。
健康食品で不健康になり、
市場拡大の裏側で医療費が膨らむ。
「『健康』の看板が泣 く」
とコラムニスト。
アホか!
と、結城義晴。
蝉ですら、
ならったことも ない
きいたことも ない
とおい そせんの うたを
とおい そせんの ふしで
歌うのに、
自分で自分の食生活や健康を守れない。
もちろん産業界も、
大企業に限らず、
「健康の看板」を泣かせてはいけない。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
「海の向こうでは、イチローが日米通算4000本安打。」
結城先生へ 昨日はTVでイチローが「4000本安打達成」のインタビューに答えていました。イチロー曰く「4000本安打の裏には、8000本以上の失敗がありました。私は打てなかった8000本の一つ一つの失敗を乗り越えたことを思い出します。」とのコメントに私は感動しつつ、今年の夏の高校野球で、優勝を逃し敗れた全国の3956校の高校球児たちへこのイチローの言葉を贈ります。
まだまだ残暑が続きますお体ご自愛ください。
いまちゃん、同感です。
私もブログに書きました。