セブン-イレブンおでん1700万個販売と「売価は顧客に聞け」
一雨ごとに秋が深まる。
しかし今日は暑かった。
午前中に来客。
イオンリテール㈱山本実さん。
実務訓練部部長。
会うたびに肩書が変わる。
山本さんが鍵を握っている証拠。
11月の講演の打ち合わせ。
夕方は東京・愛宕へ。
精進料理の醍醐。
フォレストタワー2階にある。
保芦将人さんと会食。
㈱紀文食品代表取締役会長。
左右は取締役の弓削渉さんと三好正信さん。
創業者の保芦邦人さんのこと。
長年にわたる大相撲と紀文との関係、
紀文という会社のブランディングのこと。
さらに国分勘兵衛さんのこと、
磯野計一さんのこと。
保芦さんの話題は多岐に渡り、
私も存分に語った。
お土産もいただいた。
「自然からの贈り物」
ありがたく頂戴した。
私は『店ドラ』にサインして、
お返しをした。
ちょうど日経新聞に、
セブン-イレブンのおでんの話題。
編集委員の田中陽さんが、
『真相深層』に書く。
「9月1日、
セブンイレブンのおでんの販売個数が
1日で1700万個を超えた」
えっと思う人もいるだろう。
「冬の印象が強いおでんだが、
実は9月が1年で最も売れる」
なぜか。
「昼間は残暑が厳しくても
夜に気温が急に下がる」
だから「買う人が一気に増える」。
常盤勝美のウェザーMD。
「それを熟知するセブンは、
店舗のオーナーに強気の仕入れを推奨。
欠品せずに需要を丸々取り込んだ結果が
1700万個だ」
このおでん1700万個の販売の秘密は、
コンビニ4大原則。
フレンドリーサービス、
クレンリネス、
欠品しない、
鮮度維持。
外食産業の3大原則「QSC」は、
クォリティ(Quality)
サービス(Service)、
クレンリネス(Cleanliness)。
コンビニにあって、
フードサービスにない原則。
つまり小売業にあって、
外食業にない原則。
それが「欠品しない」こと。
その指標は「商品回転日数」。
「店の商品が何日ですべて入れ替わるか」の数値。
前期、
ローソンは13.2日、
ファミリーマートは12.3日。
セブン-イレブンは9.7日。
「欠品させるな」。
鈴木敏文会長の口癖。
現在は、2週間に一度、行われているのが、
OFC会議。
いわゆるスーパーバイザーの会議。
現在、約2500人にも及ぶ。
「すぐに欲しい商品が店頭にないことは
ストアロイヤルティー(店舗への信頼度)を下げる」
この原則貫徹は、
来店客数に表れる。
1日平均で、
セブン-イレブンは1052人、
ローソンは873人、
ファミリーマートは950人。
これが平均日販を大きく左右する。
セブン-イレブン66万8000円、
ローソン54万7000円、
ファミリーマート52万3000円。
かつては40万円台の2位、3位企業と、
トップ企業の68万円まで、
20万円以上の差がついた。
それが縮まったが、
それでもまだ、
12万円、14万円の開きがある。
それは4大原則の総力の差。
しかし商品そのものの差もある。
1979年、
日本デリカフーズ協同組合設立。
メーカー約70社が加盟。
開発人員は約1000人。
いわゆるチーム・マーチャンダイジング。
それがセブンプレミアム開発にもつながった。
田中陽さんのレポートの最後に、
井阪隆一社長の言葉がある。
「コンビニに求められる便利さは
時代と共に変わる」
この信念が、
9月1日のおでん1700万個販売につながる。
しかしセブン-イレブンだけで、
おでんが売れたわけではない。
かつて紀文とヨークベニマルが組んで、
真夏におでんを売りまくった。
それも東北地方の気温の差を、
機敏にとらえたマーチャンダイジングの成果だった。
さて、9月の全国企業短期経済観測調査。
いわゆる日銀短観。
小売り・卸売りの販売価格判断DIが、
プラスに転じた。
「上昇」の回答が「下落」を上回ったのは5年ぶり。
「今後も上昇する」との見方が多い。
小売りの3カ月後の販売価格判断DIはプラス6。
足元にくらべ3ポイント上昇。
しかしボストンコンサルティンググループの森健太郎さん。
「一般消費者の価格に対する意識は依然シビアだ」
私も同感。
「価格訴求力の高い商品は値下げし、
他の商品の値段を上げるなど、
メリハリのある価格戦略が今後不可欠」
これは「売価は顧客に聞け」という意味。
売場を通して、
自分の顧客と
会話し続ける。
「欠品させるな」も同じ。
何を欠品させないのか。
それはお客に聞け。
POSデータやID-POSデータに聞け。
それが商売である。
〈結城義晴〉