市川猿翁「型破りと形無し」のイノベーションと沖縄研修2・3日目
日本列島は真冬並みの寒さ。
しかし沖縄県那覇市は、
それよりも10度以上は気温が高い。
日本のプロ野球12球団では、
ホークスとライオンズ以外の10チームが、
沖縄でスプリング・キャンプを張る。
それほどにこの時期の沖縄は、
快適だ。
さて、日経新聞の最終面『私の履歴書』。
今月は歌舞伎役者の市川猿翁。
梨園のイノベーター。
「30代初めから10年余り、私は毎年
1、2作の復活通し狂言を創っていた」
これがイノベーションの表出。
その中に「伊達の十役」の復活がある。
仙台藩の伊達騒動に登場する主な十役を、
ひとりで演じ分ける狂言。
苦労を重ね、
多くの専門家に助力を得て、
猿翁はこの作品を大成功させる。
「古典と見えて実は創作。
埋もれた作品の面白い部分を引き出し、
時間的には圧縮して、
原作の倍以上の内容、量感、面白さ、趣向を
見せようと創り直す。
面白さを増幅させる趣向のひとつとして
早替わりや宙乗りを用いる」
映画監督スティーブン・スピルバーグからも
大いにヒントをもらう。
だから「歌舞伎のスピルバーグ」と呼ばれる。
そして述懐する。
「真の創造に必要なのは
十分に型を知った上で、
骨法は崩さずに新しいものを求める
『型破り』の精神である。
過去を顧みずに新しさだけを求めるなら
単なる『型無し』になる」
型を取得したうえで骨法は崩さず、
新しいものを追求する。
それが『型破り』。
過去を顧みず新しさだけを求める。
それは『形無し』。
イトーヨーカ堂グループの社是。
「基本の徹底と変化への対応」
これもイノベーションの方法だ。
さてさて、日本マクドナルドホールディングス。
社長兼CEOにサラ・カサノバさんが就任する。
原田泳幸さんは代表権のない会長になり、
第一線からは退く。
2004年、現アップル日本法人社長からの転身。
日経新聞編集委員の中村直文さんが分析。
「原田時代は否定と創造だった」。
まず原田さんは、
創業者・藤田田氏がつくった経営体制を否定した。
そして「100円マック」や「マックカフェ」、
「クオーターパウンダー」などを創造。
話題をかき集め、
集客の原動力をつくった。
しかし、結局は『型破り』にはならず、
2012年からは『形無し』になってしまった。
今日、猿翁と原田マックの二つの記事を読んで、
長期のイノベーションのためには、
『形無し』に陥ってはいけないと、
あらためて強く考えさせられた。
さて昨日は朝から、
沖縄の視察と観光。
まずはサンエーの物流センターへ。
総合スーパー22店、食品スーパーマーケット40店舗、
無印店舗やマツモトキヨシなどのフランチャイジー3店舗、
ローソン1店舗などを支えているのが、
サンエー本社に隣接する
物流センターと食品加工センターだ。
迎えてくれたのは㈱サンエーの皆さん。
左から取締役食品部長の田崎正仁さん、
サンエー運輸㈱社長の笠野章さん、
同じくセンター長の比嘉盛勇さん、
サンエー衣料品部長の上地文勝さん。
この物流センターはトランスファーセンター。
3つのチームに分かれて解説してもらう。
フランチャイジーになっている無印良品の商品は
コンテナ船便で届く。
トラックで運ばれてきた商品はスタッフが検品。
大きな中通路の左側が搬入商品。
右側が各店別に仕分けされ、
搬出されるパレットに積まれた商品。
サンエーの最大の特徴は、
隣接するPCセンターからの保冷商品を、
常温商品と混載配送することだ。
TCセンターの一角には、
衣料品の値付け部門がある。
衣料品は総量で納品され、
自社ですべて値付けされる。
そのほうが仕入れコストの削減につながるからだ。
こうした小さな積み重ねが、
サンエーの利益を生み出す。
そして物流センターに隣接する
サンエー大山店を視察。
平屋のショッピングセンターで
食品館、衣料品館、電気館などがそろう。
大山地区は、
開発が進む商業エリアに変貌。
ショッピングセンター「はにんす宜野湾」は、
イオン・ビッグエクスプレスが核店舗。
上出来のMEGAドン・キホーテ。
さらに高速を飛ばして南風原へ。
イオン南風原ショッピングセンター。
さらにマリンプラザ東浜店へ。
金秀商事の二つの店舗、
つまりタウンプラザかねひで(スーパーマーケット)と
FCのカインズホーム(ホームセンター)、
さらに西松屋などが入るショッピングセンター。
サンエーからイオン琉球、金秀商事まで、
主なプレーヤーを視察した後は、
せっかくの沖縄ということで、
急きょ、首里城を観光。
1429年、第一尚氏王統・尚巴志王の三山統一によって
琉球王国が成立。
その城跡。
その栄華をしのばせる絢爛な首里城。
皆で、記念撮影。
初夏の気分。
最後に、国際通り。
第一牧志公設市場を見学。
市場内は沖縄の産物と食材が並ぶ。
2階に食堂があり、
市場で買った食材を有料で調理してくれる。
観光地の市場だけに呼び込みがすごい。
勉強をして、観光をして、
夜は万代ドライデイリー会幹部で
夕食会。
万代社長の加藤徹さんが、
はじめに感謝の挨拶。
あとはひたすら沖縄焼肉。
余興は三線(さんしん)の演奏と歌。
会長の今津龍三さんと、
三人で写真。
㈱今津社長。
そして元気な写真。
明けて今日、
朝から総括セミナー。
2日間視察した沖縄の競争をまとめ、
ローカルチェーンとしてのサンエーの本質を、
分析、解説。
真ん中で、
万代営業企画部マネジャーの和中正博さんにも、
報告をしてもらった。
実によかった。
最後はフィリップ・コトラー、
マイケル・ポーター、
ジェイ・バーニーの戦略理論など概説して、
沖縄の競争とサンエーの強みを、
整理した。
ご清聴を感謝したい。
その後、ホテルの前で、
全員写真。
成果は非常に大きかった。
最後の食事は、
国際通りのサムズセーラーイン。
ステーキハウス。
肉、ロブスターは美味、
パフォーマンスも見事。
挨拶は赤井慎一郎さん、
ドライデイリー会副会長。
日本アクセス常務執行役員商品統括本部長。
そして最後の最後に、
加藤徹さんとツーショット。
実にいい研修会だった。
サンエーの皆さんに、
心から感謝したい。
猿翁の言うイノベーション、
「形無し」ではなく、
「型破り」を志向したい。
〈結城義晴〉
3 件のコメント
「形無し」と「型破り」の話,とっても深いです。感じ入りました。
これは,野中郁次郎氏が述べられている次の文章にも通じると思います。
「日本には古くから理想の行動プログラムとしての“型”があった。型は人を枠にはめるが,すぐれた型を体得すれば,動きに無駄がなくなり自由が保証される。さらに“型”は獲得するだけで終わりではない。“型”には不断のフィードバックを通じて革新しつづける“守・破・離”という自己超越プロセスが組み込まれている」
日本マクドナルドの“型”は何だったのか,そして,それをどう超越(イノベート)していくのか,そういう思考回路が必要だと思います。
嶋内さん、商人舎Magazineの連載記事もありがとうございます。
城功先生の「カ・カタ・カタチ」にも通じます。
私は原田泳幸さんにはなぜか手厳しいのですが、
経営はゴーイング・コンサーンです。
瞬間的に利益を出すことが経営者の本質ではありません。
そのことを強調したいためです。
結城先生
あっ,確かに「カ・カタ・カタチ」ですね。
今回の記事の趣意についても承知いたしました。
ありがとうございます。