商売のための人と技術と信用「何か失くしたか?!」「商売やっぺ!」
今日、午後2時46分。
NHKテレビをつけて、
日本国民と共に黙祷した。
全国民と共に。
これこそ大切なことだ。
つくづくと、そう思った。
陸前高田。
希望の架け橋。
高さ最大42メートルのつり橋。
総延長3kmのベルトコンベヤー。
近くの山から削った土砂を運ぶ。
1日2万立方メートル分。
そして奇跡の一本松。
空に向かって立つ。
震災直後、『週刊ポスト』誌上で、
ビートたけしが語った。
「『被災地に笑いを』なんて戯れ言だ」
「人の命は、2万分の1でも8万分の1でもない。
そうじゃなくて、そこには
『1人が死んだ事件が2万件あった』
ってことなんだよ」
そのとおり。
「それでも、オイラたちは毎日
やるべきことを淡々とこなすしかないんだよ。
もう、それしかない」
「人はいずれ死ぬんだ。
それが長いか、短いかでしかない。
どんなに長く生きたいと思ったって、
そうは生きられやしないんだ」
「『あきらめ』とか『覚悟』とまでは言わないけど、
それを受け入れると、
何かが変わっていく気がするんだよ」。
同感。
『商人舎Magazine』の特集記事。
気仙沼からの便り。
「復興元年、心の灯りは
自分たちで灯す」
熊谷電気社長・熊谷光良さんの一人語り。
被災してからは
知人、友人たちは皆が皆、
「気仙沼は終わりだ」と
嘆きました。
「お前たち馬鹿だな!
何が終わりなんだ、
アホでねぇか」
皆、きょとんとした顔で
驚いていました。
「何失くした?
商売というのは
人と技術と信用でやるもんでねぇか。
何か失くしたか?!」
「そういや、失くしてねぇっぺ」と。
「だったら、商売やっぺ!
明日の気仙沼を
皆でつくろうぜ」
2011年3月11日の毎日更新宣言ブログ。
私は書いた。
「例えば、セブン&アイとイオンとが、
勝手に動いて先陣争いしたり、
ましてや反目したりではなく、
がっちりと手を握って補完し合い、
全面共闘態勢を敷くくらいの、
商業人としての心意気を見せたい。
心して、取り掛かろう。
まだ揺れは続いている。
社員・従業員の安全はもとより、
地域や顧客の安全と
ライフライン確保のために、
今こそ知恵を出したい。
力を合わせたい」
翌12日には、メッセージ。
「元気を出そう・元気を売ろう」
「自然の猛威の前には、
人間の力は弱い。
謙虚に、謙虚に、
できることをやる。
それこそ
『最初になすべきことから始める』」
しかし今も、
避難生活を送る人の数、
約26万7000人。
東日本大震災余震は、
震度1以上で1万600回。
内訳は、震度6強と6弱が2回ずつ、
震度5強は15回、5弱は46回。
日経新聞『総合欄』。
「3.11忘れず備えを」
「岩手や宮城では住宅再建が始まったばかり」
「福島では放射性物質の除染作業すら進んでいない」
「再び日本列島を襲うであろう大災害に備えながら、
東北の被災地をしっかりと復興する。
3.11の教訓とあの日の決意を改めて思い起こしたい」
その東北経済産業局の
補助金を受けた企業調査。
日経web刊。
売上げが震災前の水準以上まで
回復した企業は36.6%。
達していない企業は63.4%。
大船渡のマイヤは2年で回復。
震災前に届かない企業の業種別割合。
水産・食品加工業は86%、
卸小売・サービス業は69.4%、
旅館・ホテル業66.9%。
経営課題は「人材の確保・育成」が57.9%、
「販路の確保・開拓」が48.3%。
被災地の復興に必要な3カテゴリーの産業。
明星大学経済学部の関満博教授の指摘。
①観光や企業誘致など、
外部から金を引っ張る産業。
②水産加工や電子部品など
地域に雇用を生み出す産業。
③流通や飲食店など
地域の生活を支える産業。
関教授は、
①金、②雇用、③生活の順だが、
私は③生活が一番だと思う。
金をもたらすビジネスに携わる者も、
雇用を生み出す産業も、
皆、そこで安全に安心して、
生活せねばならない。
陸前高田にマイヤは、
2011年8月に仮設店舗を開設。
滝の里店。
陸前高田の一角には、
イオンスーパーセンター候補地。
移動販売車に関して。
「高齢化が進む被災地で成功すれば、
どこでもやっていける」
「震災後、小売り各社が、
仮設住宅に注文用のテレビ電話を設置したり、
タブレット端末を配ったりした」
しかし、
想定通りの利用者獲得は難しい。
「採算はとれていない」。
1962年3月、
米国大統領ジョン・F・ケネディが、
「コンシューマー・ドクトリン」を発した。
第一に、安全である権利。
第二に、知らされる権利。
第三に、選択できる権利。
第四に、意見を聞き遂げられる権利。
救命・救助の次に、
救済が行われ、
復旧の段階となって、
この4つの権利は守られねばならない。
私も三陸・東北を回ったが、
いまやっと復旧の次の「復興元年」だ。
商売に必要なもの。
「何か失くしたか?!」
「だったら、商売やっぺ!
熊谷さんの声が、
耳に残る。
再び、黙祷。
合掌。
〈結城義晴〉