クローガーとウォルマート「悉皆視察」、それぞれのポジショニング
アメリカにやってきてから、9日が経つ。
今日、ウォルマート・ストアーズ・インクは、
2015年度第1四半期決算を発表した。
ウォルマートは1月末決算。
だから第1四半期は2月から4月まで。
営業収益は1148億2600万ドル、
1ドル100円換算で11兆4826億円で
前年同月比マイナス0.1%。
営業利益は56億8000万ドルでマイナス8.3%、
純利益は33億4100万ドルでマイナス7%。
衝撃が走った。
しかし四半期でこれだけ稼げば、
年間通期では営業利益が、
2兆3000億円くらいか。
すごい会社です。
我々が見ているアメリカの営業状態は、
悪くない。
Eコマースやオムニチャネルへの投資がかさんだ。
さらにこれまで好調だった国際部門だが、
ブラジルやイギリスのアズダなどが、
足を引っ張って、売上高マイナス6.6%。
ウォルマートといっても、
すべてが好調なわけではない。
一方、アメリカのセブン-イレブン。
8269店舗の大チェーンだが、
テデシーフードショップから、
182店舗を買収する。
この会社の本拠地は、
マサチューセッツ州ボストン。
日本国内では、
セブン-イレブンは買収に消極的だ。
しかし海外では、どんどんM&Aをして、
店舗数を増やす。
とくにアメリカでは、
今回のような買収を頻繁に行って、
とくに都市型コンビニの地位を確立しようと、
積極的に動いている。
アメリカを訪れているだけで、
そういったニュースに、
リアリティが増してくるから不思議。
さて、平和堂2015アメリカ研修。
二日目の朝は、私の講義。
朝8時から10時半までみっちり、
フォーマット戦略とポジショニング戦略の、
重要点を丁寧に語って、
とことん理解してもらった。
講義が終わるとすぐに、
リムジンバスに乗って、
クローガーへ。
バナーは「フレッシュ・フェア」。
もちろんチーズも、
スーパーマーケットにしては、
多過ぎるくらいの品揃え。
31歳の若いエリック店長に、
要点を話してもらってから、
質疑応答。
エリック店長は、
18歳でクローガーに入社。
アルバイトからスタートして13年、
5年前に店長になった。
一番重視しているのは、
「カスタマーサービス」
顧客から様々な声が、
メールで寄せられる。
それを必ず、毎日、読む。
それが店長の仕事だ。
62%の声は「お褒め」。
ありがたい。
38%が「お叱り」。
クローガーではこのお叱りのクレームを、
「opportunity」と呼んでいる。
つまり、絶好の機会だ。
お叱りに対応することで、
その顧客をロイヤルカスタマーに、
変えることができる。
クローガーは45四半期連続、
既存店が増収。
それを支えるのが、
カスタマーサービス最優先主義である。
グロサリーはコモディティ・ディスカウント。
ウォルマートにも負けない。
そしてカスタマー・サービス。
入口脇のデリ売り場から始まって、
青果部門、ワイン売り場、精肉部門、
そしてグロサリー、乳製品部門を、
丁寧に説明しながら歩いた。
それからHBCとファーマシー、
アパレルファッション、
そしてノンフードへ。
精力的に歩きつつ、
事細かに説明してくれる。
タイヤ売り場では、
デパートメントマネジャーのアリエルさんが、
顔を出してくれた。
在庫のこと、搬入のこと、
保管と補充のこと。
歩きながら、精力的なレクチャーを聞く。
タンポポマーク の背中の後について、
くまなくバックヤードを巡った。
ロレッタさんも、
厳しい顔つきで、
時折アソシエーツに対して、
指示を与えながら、説明する。
500人ほどのアソシエーツがいるが、
その休憩所。
卓球台が置いてあった。
最後に生鮮食品のバックヤードと、
冷蔵冷凍庫の視察。
フロント(売り場)では、
ウォルマートが実に丁寧な、
カテゴリーフォローをしていることが判明した。
日本の総合スーパーが、
捨ててきてしまった部門やカテゴリーを、
ウォルマートは丁寧に、全て、
網羅してアソートメントしている。
そしてバックヤードは、
その10万品目をこれまた丁寧に、
サポートしている。
Retail is Detail。
小売りの神は細部に宿る。
最後にロレッタさん。
「今日は全部見せました」
悉皆(しっかい)調査という方法がある。
全数調査ともいう。
つまり全部、調査すること。
今日はウォルマートの悉皆視察。
それでしかわからないことが、
わかった。
ロレッタさんに感謝。
団長の田淵寿さんとともに、
感謝の意を評した。
田淵さんは平和堂商品本部本部長。
そのあとはついでに、
同じウォルマートの、
ネイバーフッドマーケット・ファーマシー。
一番奥が調剤薬局。
ウォルマートのマルチフォーマット戦略、
細かく細かく進化している。
そこへ続々と入っていく。
全員で写真。
アメリカの小売業を学ぶには、
アメリカ人の生活を知らねばならない。
その際、モデルルームは、
絶好の研修舞台となる。
44人分を滞りなく、
あっという間に製造したバックヤード。
そのパフォーマンスに、
一同感動。
ちょっとだけの観光は、
ケネディ暗殺のテキサス教科書倉庫。
その暗殺地点。
そしてディナーは、
伝統のイタリアンレストラン「Buca」。
ビールとワイン、
そしてサラダからパスタ、魚料理まで。
最後はケーキ。
ハッピー・バースデー?
長い長い1日。
日が暮れて終わった。
ウォルマートとクローガー。
全米の第1位と第2位。
今日はじっくりとチェーンストアを学んだ。
(つづきます)
〈結城義晴〉