「情報&コミュニケーション」とRetail Executive Summit
朝日新聞の『天声人語』
久しぶりに、小気味よい。
「悪い行いというものは、
世間の耳目を集めることにおいて
善行の比ではない」
シェークスピアの表現。
「人の犯した悪事は
真鍮(しんちゅう)に刻まれて永く残り、
善行は水に記されてたちまち消える」
(「ヘンリー八世」小田島雄志訳)
読売巨人軍の三選手の野球賭博。
米国メジャーリーグの二つの醜聞。
1919年のシューレス・ジョーは、
新人最多安打記録保持者だった。
通算安打記録のピート・ローズも、
「真鍮組」。
「彼らだけなのか。
暴力団などとつながっていないのか。
野球賭博などとは無縁な
他の選手のためにも、
とことん調べる必要がある」
そして昨日のドラフト会議。
プロ野球新人選択会議。
ここで与謝蕪村の句。
〈新米もまだ艸(くさ)の実の匂ひかな〉
「草の香も初々しい
穫(と)れたての新人諸氏は、
いわば原石だ。
道を外さず、磨いて玉となる日を待つ」
同感。
さて今日は、東京・日本橋。
マンダリンホテルオリエンタル東京。
「Retail Executive Summit」
マイクロストラテジー・ジャパン㈱主催。
ここで、基調講演を務めた。
今回も40名ほどの経営幹部が集まってくれた。
マイクロストラテジー社は、
BIルーツを提供するITのグローバル企業。
BIツールとは、
「Business Intelligence tools」のこと。
同社の提供先は英国テスコや、
スペインのメルカドーナ、
もちろん米国のホールフーズ、HEB、
ロウズ、コーチなど、
名だたる小売業がずらりと並ぶ。
ペンタゴンもお得意様だ。
私は縁あって、
このsummitのプログラムに協力しつつ、
講演をしている。
日米欧小売業の最新経営トレンドを整理しつつ、
60分間、自論を展開した。
日本のBIツールの導入事例は、
ヤマダ電機。
代表取締役専務IT事業本部長の飯塚裕恭さんが、
ヤマダ電機の戦略と合わせて語ってくれた。
ヤマダ電機は、
ご存知、家電専門チェーンのトップ企業。
イオン、セブン&アイ・ホールディングス、
そしてこの8月以降は、
ファーストリテイリングに次いで、
日本第4位のリテーラー。
現在はスマートハウス事業や、
食品・日用品の実験的販売などまで、
多角化を進めている。
そうした話も盛り込まれていて
実に興味深い講演だった。
海外事例はMr. Desmond Ngさん。
Blackbox BI ConsultancyのCOO。
マレーシア第1の家電専門チェーンが、
センヘン・エレクトリック社。
124店舗を展開する。
その子会社がBlackbox BI Consultancy社。
センヘンは、BIツール活用で、
現場マネジメントが向上し、
収益も大きく変わった。
そのうえで、中小企業向けに、
BIツールを提供し始めた。
そんなドラスティックな報告。
最後はマイクロストラテジー社のプレゼン。
エグゼクティブ向け、ミドルマネジメント向け、
現場スタッフ向け、さらに顧客向け。
階層別に、さまざまな切り口で
BIツールを提供する。
とくにスマホやタブレットを使った、
直観的なアプリ開発は秀逸だ。
なにより面白かったのは、
印藤さんが紹介したUsher(アッシャー)。
Usherは個人認証アプリだが、
ID・パスワードを省略した利便性で、
海外では、大学や会社に導入されている。
最後に、再び私のプログラム総括。
BIツールによる情報の効率化によって、
コミュニケーションを高めなければならない。
情報とコミュニケーションとは別物である。
しかし両者は依存関係にある。
コミュニケーションは知覚の対象であり、
情報は論理の対象である。
情報は、記号である
情報は、人間的な属性を除去するほど、
有効となり、信頼度も高まる。
しかし情報はコミュニケーションを前提とする。
コミュニケーションは必ずしも、
情報を必要としない。
〈ピーター・ドラッカー〉
情報の効率化を進め、
その分のリソースを、
コミュニケーションに投入せよ。
それが私の結論。
愛媛のフジからは、
大西文和さんが参加してくれた。
人事総務部長。
3年前、商人舎のアメリカ視察に参加してくれて、
それ以来、フェイスブック仲間。
紀文食品の山本真砂美さん。
山本さんは2015年末年始商戦の要点を、
『月刊商人舎』10月号に、
寄稿してくれたばかり。
ライフコーポレーションの森下留寿さん。
取締役経営企画本部長兼
新規事業開発本部長。
森下さんもフェイスブック仲間。
成城石井の原和彦社長と早藤正史さん。
早藤さんは執行役員店舗運営本部長。
イオンリテール南関東カンパニーの井関定直さん。
ビジネスイノベーションチームリーダーで、
『月刊商人舎』10月号の特集に登場してもらった。
社内の反響は上々らしい。
よかった。
最後は大久保恒夫さん。
セブン&アイ・フードシステムズ社長。
積もる話をし、終盤は、
ゴルフの話で盛り上がった。
小泉潤一さん、棟方一成さん、
そして丹野いづみさん、
お疲れさまでした。
いまや情報は悪行も善行も、
真鍮に刻まれて永く残る。
善行のごとく、「水」に記されて、
「たちまち消える」なんてことなはい。
記録に残すのは情報だ。
コミュニケーションは記憶に残る。
その記録に残るものを効率的に処理し、
記憶に残るものを一段と鮮明にする。
これが商売やビジネスの鍵を握るものだ。
〈結城義晴〉