「4年目のアベノミクス相場」と堤清二「わが記憶、わが記録」
Everybody! Good Monday!
[2015vol52]
2015年の最終週。
第53週目。
今日12月28日は、
民間企業は仕事納め、
行政府は御用納め。
小売業、サービス業は、
明日明後日と年末の際の勝負。
日経新聞の『羅針盤』は、
「4年目のアベノミクス相場」のタイトル。
編集委員の北沢千秋さんが書く。
「30日は大納会。大波乱がなければ
日経平均株価の年足チャートは
4年連続で陽線となりそうだ」
「陽線」とは、株取引の用語で、
その期間に始まった株価よりも、
終わった株価が高かった場合のこと。
新年1月4日を「大発会」、
そして12月30日を「大納会」と呼ぶ。
日本の株価は4年連続で、
大発会の平均株価よりも、
大納会のそれの方が高かった。
第2次安倍政権は、
2012年12月26日に始まった。
民主党からの政権交代だった。
そしてアベノミクスは4年目に入る。
北沢さんは、
証券会社の専門家の声を拾いつつ、
そのアベノミクスに評価を下す。
「目立つのは官による民事介入」
企業に賃上げや設備投資を求める。
賃上げには百歩譲って、
分配政策の一環だと考えることができる。
しかし企業への設備投資要求は、
「市場原理にそぐわない」
「企業は海外投資やM&Aなどを積極化し、
リスクを取っている」
それがエコノミストの意見。
安倍政権は「国内総生産」の拡大を望む。
それは「国内で生み出された付加価値」である。
民間企業は「国民総所得」に貢献している。
こちらは「国民が国の内外で生み出す付加価値」
両者にズレがある。
「株式市場が
アベノミクスに賛同してきたのは、
異次元緩和による円安や成長戦略が
投資リターンの増大をもたらす
と考えてきたからだろう」
北沢さんは市場の声を代弁する。
「企業への圧力は
アベノミクスの限界を表している」
最後は再び、相場格言。
「大回り3年」
意味は、「相場の大きな波は
3年で転機を迎える」
「政権交代から丸3年。
来年はアベノミクスの賞味期限が
市場で試されそうだ」
落ちは残念ながら、つまらない。
もう一つ、毎日新聞の『余禄』が、
堤清二さんのインタビュー本を取り上げた。
書名は『わが記憶、わが記録』
あのセゾングループの元代表で、
ペンネーム辻井喬(つじいたかし)の作家。
一昨年、86歳で逝去。
サブタイトルがいい。
「堤清二×辻井喬オーラルヒストリー」
(中央公論新社刊)
Oral Historyとは、
「直接話を聞き取り、
記録としてまとめること」
堤清二という経営者・個人と、
辻井喬という作家・詩人。
両面を持つ人物に、
ジキルとハイドにインタビューするごとく、
しつこく迫った。
迫ったのが、三人の学者。
それも超一流。
政治史学者・政治学者の御厨貴さん、
経済学者の橋本寿朗さん、
そして哲学者・倫理学者の鷲田清一さん。
「家族のこと、
経営の成功と失敗、セゾン文化、
作家活動を縦横に語る」
これは、読もう。
「時に『辻井喬』の世界から動かない語り手を
聞き手が『堤清二』に連れ戻す様子は、
緊張感がある」
これは、読まねばならない。
そしてコラムニストの思い出。
堤さん自身は革新支持でも、
こう語った。
「人間としてまっしぐらに
生きようとしていれば、
右でも左でも構わない」
最近の私の考え方は、
故渥美俊一先生よりも、
堤さんの方が近いかもしれない。
何しろ「流通産業の現代化論者」なのだから。
そして私は、堤さんが登場すると、
必ず上野光平さんを思い出す。
西友の実質的創業者で、
経営者・堤清二の右腕。
コミュニストとしては、
堤清二の師匠。
上野さんこそ、現代化を志向し続けていた。
コラムの最後。
「諸事、二項対立で
論じられることが多かった年が暮れゆく。
腰を据え、来し方行く末を思うには、
堤さんの夢の跡を追った書がふさわしい」
こちらは落ちも、よろしい。
「二項対立」では割り切れない世相を、
二項対立で論じる。
堤さんが最も嫌った論旨だ。
割り切れないことを、
割り切ってしまってはいけない。
そんな風に考えて、
私も来し方行く末を思うことにしよう。
では、みなさん、あと少し。
今週も、Good Monday!
〈結城義晴〉