イオン新3カ年中期経営計画の「国際化」と「環境変化激変のこれからの10年」
北海道と青森に初雪が降り、
近畿では木枯らし一号が吹いた。
いよいよ晩秋に突入の感あり。
ドル安円高に関しては、
昨日こそ反動で81円台をつけたが、
このトレンドが止まることはなく、
80円を切るところまで、
考えざるを得なくなった。
さて昨日、イオン㈱から新3カ年中期経営計画が発表された。
初年度は来年の2011年で、期間は2013年まで。
一足先に10月22日に発表されたブリヂストンの中期計画は、
「MTP2010」と略されて、5カ年計画となっている。
3年のタームがいいのか、4年か、5年か。
現在のように変化が激しい時代は、
3カ年くらいの期間設定でなければ、
大きな変更を余儀なくされてしまう。
ちなみに英語では、
年度経営計画はAnnual Management Planと表現され、
中期経営計画は、Middle term Management Plan、
あるいはMedium-Term Management Planという。
対して長期経営計画はLong term Management Plan。
まず経営のビジョンがあって、
ロング・タームがあって、
連続したいくつかのミドル・タームができる。
そのうえで、アニュアル・マネジメント・プランが導き出されねばならない。
例えば、「キリン・グループ・ビジョン2015」は、
2006年から2015年までの9年間のロング・タームがあり、
その中に、3カ年計画が3ステップ組まれている。
3カ年の中期計画を、
4ステップの12年や5ステップの15年も組むほど、
悠長な時代ではないとの考え方であろう。
私も、それは同感。
イオンのミドル・ターム・マネジメント・プランの骨子は、
「国際化」にある。
すなわち「アジアでの事業拡大」。
従って、この3カ年計画中に、
ホールディングカンパニーのイオンの傘下に三本社制を敷く。
すなわち日本本社、中国本社、東南アジア本社。
中国、東南アジアでは、
経営幹部から従業員まで、現地人材を採用・起用。
岡田元也社長は語る。
「ほぼすべての経営判断を委ねる」
連結売上高は2010年度5兆0600億円を、
2013年には6兆円と設定、これはほぼ2割増。
営業利益は2500億円、こちらは1.6倍。
ROE7.0%以上、ROIC7.0%以上。
一方、総投資額は約8300億円。
これまでの3カ年に比べると、10%の削減。
内訳は、国内投資が75%の約6200億円、
中国・東南アジアが25%の約2100億円。
国内では小型店に20%、既存店活性化に20%、その他35%。
第1に小型スーパーマーケット「まいばすけっと」の大量出店。
これはイギリスのテスコの「エクスプレス」をモデルにしている。
また、第2にコンビニとドラッグの融合店、
さらに第3に小型サイズのハイパーマーケットの開発に注力する。
フォーマットのダウンサイジングが、大きなテーマとなる。
そして第4にショッピングセンターも、
3カ年で15程度出店予定。
アジアは、大型の店舗投資。
業態はハイパーマーケットとショッピングセンター。
具体的には、中国での16以上のショッピングセンター開発、
インド、インドネシア、カンボジアへの出店など。
さらに衣料品調達先は、中国から東南アジアにシフトしていく。
これはファーストリテイリングと同じ趣旨。
岡田社長のコメント。
「これからの10年の環境変化は、
これまでで最も激しいものになる」
「環境変化を成長機会と捉え、
今とはまったく違う形で飛躍を遂げたい」
岡田さんの認識の厳しさと、
決意の固さがうかがわれる発言だ。
イオンの中期計画に対する私の見解。
第1は、国際化を図るといっても、
まず国内が盤石であることが大前提。
ウォルマートもテスコも、カルフールもメトロも、
自国内で金城湯池を確保していて、
そのキャッシュフローを原資に海外戦略を展開している。
これなくしては国際戦略は成り立たない。
第2は、海外に出ていくためには、
その国に完全に同化すること。
これも必須の条件となる。
イオンが三本社制にすること、
そして現地の人々を起用して、
「ほぼ経営判断を委ねる」とする姿勢。
これらは大いに評価できよう。
「これからの10年の環境変化は、
これまでで最も激しいものになる」
その激しさに、
いかに耐えるか、
いかに順応するか。
イオンに限らず、
すべての組織、
すべての個人に、
課された試練である。
さて9月の外食と内食の動向が明らかになった。
まず、9月の外食産業市場動向調査。
日本フードサービス協会の発表。
加盟企業全体で前年同月比プラスの0.3%。
これは3カ月連続の増加。
理由は、天候だとしている。
9月前半は7月8月からの「猛暑・酷暑」の延長で、
「残暑」がつづいた。
このため、客数が前年同月比で3.9%も伸びた。
しかし客単価はマイナス3.4%。
小売業もフードサービス業も、
内食も外食も、客数増こそ、
最大のバロメーター。
この外食の数字は、
前年よりも日曜日が1日少なかったうえに、
シルバーウィークも飛び石で、
大型連休でなかった。
外食産業を牽引するファーストフードは、
売上高プラス1.4%。
客数プラス6.0%、客単価マイナス4.4%。
小売業にたとえるとコンビニやスーパーマーケット。
ファミリーレストランは、売上高マイナス0.2%で、
これは小売業にたとえると総合スーパー。
客数マイナス1.2%、客単価プラス1.1%。
ディナーレストランは、小売業にたとえると百貨店で、
こちらは売上高マイナス6.6%、
客数マイナス5.5%、客単価マイナス1.2%。
それでも外食全体で、
0.3%とはいえ前年同月比プラスは、
大健闘と評価できる。
第2は、26日に発表された流通3団体による「スーパーマーケット調査統計」。
日本スーパーマーケット協会(JSA・川野幸夫会長)、
オール日本スーパーマーケット協会(AJS・荒井伸也会長)、
新日本スーパーマーケット協会(NSAJ、旧日本セルフ・サービス協会、横山清会長)、
この3協会に加盟する263社7062店の数値。
日本スーパーマーケット協会の江口法生事務局長が概況を発表した。
9月の売上高は7425億7159万円。昨対102.6%。
食品合計は6380億6035万円、102.5%、
非食品合計も1045億1124万円、103.1%とともにプラス。
理由はコンビニ同様、猛暑とたばこ。
JSA、AJS加盟社の既存店ベースをみても100.2%と前年をクリア。
「猛暑による農産物の相場高もあり青果は103.8%のプラス。
水産はサンマに象徴されたように天候の不順で漁獲量の減少、
単価高が影響し、98.9%と唯一昨年を下回った」
「暑くて調理したくないという人が多かったため、
惣菜は104.0%と大きく伸びた」
意外なところでは、野菜の高騰で、漬物がよく売れたという。
この日、加盟企業を代表して、
㈱コモディイイダ取締役商品部統括部の岩崎吉春部長が同席。
9月の販売実績と10月の動向を述べてくれた。
「9月の全店売上高は103.13%、既存店でも101.45%と好調。
記録的猛暑で飲料113.24%、アイスクリーム132.38%と夏商材が良く売れた」
「たばこは上旬から店頭でカートン売り訴求。昨対ベースで、
第1週107.8%
第2週134.4%
第3週147.2%
第4週223.6%
第5週300.9%
と大きく伸び、平均でも210%の売上増となった。
その反動で、10月は数量で41.2%、金額で45.6%と低調」
「売場と商品がお客様に飽きられないよう、
毎月、行祭事にあわせたプロモーションを仕掛けるが、
9月は彼岸販促で、仏花120%、
果物140%、てんぷら盛合せ120%、
手握りおはぎ182%が良く売れた」
「10月24日までの実績は、
全店105.42%、既存店104.06%と好調を維持。
自社のポイントカード利用者は全客数66%。
カードの保持率、利用率を上げるのが課題。」
「商圏には高齢者が多く、
伝統的行事への意識が高い。
行事関連の商材を強化している。
年末のおせち予約販売も年々アップ。
クリーンなスーパーマーケットでありながら、
地域ニーズを捉えた泥臭いスーパーマーケットであることも、
訴求していきたい」
最後に9月の総合スーパーの成績。
日本チェーンストア協会発表。
会員企業62社、7865店。
総販売額は既存店で前年同月比マイナス0.3%。
これは22カ月連続の記録。
ファミリーレストランのマイナス0.2%に近い。
この中で、食料品販売額はプラス1.2%、
衣料品はマイナス5.6%、住関品はやはりマイナス1.9%。
サービスもマイナス1.6%。
これに9月のコンビニは、タバコ増税神風で、
既存店がプラス12.9%。
一方、9月の百貨店売上高概況は、
31カ月連続で前年同月比5.2%マイナス。
ファストフードがプラス、
ファミレスがトントンで若干のマイナス、
ディナーレストランが大幅連続マイナス。
外食の動向は、小売業の業態と相似性を持っている。
<結城義晴>