首都圏店舗クリニック東京・神奈川編は隣接競合「三和vsオーケー」&「イトーヨーカ堂vsジャスコ」そしてサミット、ヤオコー、オオゼキ
一昨日のニュース。
10月の景気ウオッチャー調査。
「足もとの景気実感を示す現状判断指数」。
9月から1.0ポイントの3カ月連続ダウン。
エコカー補助金終了、たばこ増税など、
個人消費の落ち込みが大きい。
この指数を構成している3大項目は、
①家計、②企業、③雇用。
10月にはすべての数値が低下してしまった。
2~3カ月先の先行き判断指数も出しているが、
それは9月段階から0.3ポイントのダウン。
これは2カ月ぶりの悪化。
しかし2カ月先となると、12月、
3カ月先となると1月。
すなわち年末年始の先読み指数は、
良くはない。
心してかかるべきだ。
さて、昨日から今日にかけて、
首都圏店舗クリニック。
メーカー・卸売業の中堅・若手社員41名とともに、
スーパーマーケット、総合スーパーの優良店をウォッチング。
昨日は、首都圏の外環状線国道16号の西側を探索。
朝11時に新横浜集合。
Apec警備厳重な横浜。
まずは、サミットストア町田旭町店。
1階にダイクマ、2階にヤマダ電機、
地階にサミットストアのスーパーマーケット。
21世紀に入る前から、サミットはこの地区で、
ディスカウントストアのダイクマと、
コラボレーションで出店してきた。
サミットが開発した物件にダイクマが参加する。
ダイクマが手当てした物件にサミットが乗る。
そのダイクマは、イトーヨーカ堂の傘下にあったが、
ヤマダ電機に売却されてしまった。
しかしサミットと組んで出店した店は残っている。
それがこの町田旭町店。
古い店だが、良くメンテナンスされ、
なおかつ最新型にリニューアルされて、
状態はすこぶる良い。
店舗クリニックの場合、
日本でもアメリカ、ヨーロッパでも、
その日の最初に訪れる店は重要。
後の店の基準になるからだ。
サミットストア町田旭町店は、その意味で、
最良の店ではあった。
次に訪れたのが、
三和とオーケーの激戦地。
「オセロ主義」を出店戦略の核とする三和は、
4つのフォーマットを持っている。
そのうちのディスカウントタイプ「フード・ワン」。
もともとレギュラー型のスーパーマーケットだったが、
隣接地にオーケーが進出してくるというので、
対抗型のフード・ワンにフォーマット転換した。
オセロ主義とは、出店エリアを2㎞の升目に区切り、
オセロのようにその升目すべてに自社店舗を埋めていく作戦。
オセロ主義をとると、必然的にマルチ・フォーマットとなる。
4平方㎞ごとに標準化した物件が確保できるはずもないからだ。
隣は、オーケー。
「高品質 エブリデー・ロー・プライス」を標榜する。
2008年にオープンしたディスカウント・スーパーマーケット。
この隣接競合、日本有数のケーススタディ。
ディスカウント型2店舗の競争は、
近隣同業に強いインパクトを与える。
この2店舗から、少なからず影響を受けているサミットが、
いかに対抗し、対応しているかも、知ることができる。
この3店舗は、必見の競争を繰り広げている。
その後、国道16号線を北上して、
JR横浜線の古淵駅近隣の総合スーパー隣接競合地区へ。
イトーヨーカ堂古淵店。
そしてジャスコ相模原店。
前にも書いたが、私が『販売革新』編集長の頃、
「イイ戦争・古淵の闘い」という特集を組んだ。
どちらも箱型の「日本型GMS」と呼んだりする一時代前の総合スーパー。
オペレーション力はイトーヨーカ堂が優れているはずだが、
隣り合わせで毎日毎日、競争していると、
追いかける者が少しずつ追いついてくる。
今や、それほどの遜色のない売場となっているから不思議。
イトーヨーカ堂が旧来タイプの箱型GMSであるのに対して、
ジャスコはちょっとだけショッピングセンタ―志向で、
それが総合力となって、互角の戦いを見せている。
一方、イトーヨーカ堂もテナント揃えの重要さをジャスコから学んで、
その後、ショッピングセンターのアリオ開発につなげた。
競争は、競争する者たちを進化させる。
そのことが、良く分かるケーススタディとなっている。
バスの中で、ずっと解説。
私はもう、アメリカ視察モード。
メーカー・問屋の中堅・若手対象ということもあって、
説明はいつも以上に懇切丁寧になる。
国道16号をさらに進むと、
相模原のアイワールドへ。
ロヂャース、ダイクマ、アイワールド。
1990年代に関東の非食品ディスカウンター御三家だった。
ロヂャースは太田順康副社長が、
スーパーマーケット店舗に転換させた。
ダイクマはヤマダ電機に売却された。
そしてアイワールドは、
1階にオオゼキを誘致し、
上階にはダイソーを導入して、
何とか生き延びている。
この多層階商業施設は、
いまやオオゼキによって持っている。
結局、バッタ仕入れの非食品ディスカウンターは、
長続きはしなかった。
私の言う「ディスカウンター1000億円限界説」を、
この3社は証明することとなった。
アメリカのウォルマートやターゲット、Kマートのように、
仕組みでディスカウントできる企業体をつくり上げるしかない。
オオゼキの店舗入り口で展開されていた「号外セール!」レタス98円。
昨日の最後は、ヤオコー相模原下九沢店。
「ザ・マーケットプレイス」と名づけられている。
この10月26日にオープンしたばかりで、
現在、ヤオコーの実験店との位置づけ。
何を実験しているかというと、
従来のライフスタイルアソートメントのヤオコーに、
「エブリデー・ロー・プライス」の要素を組み入れる趣旨。
21世紀に入って、アメリカのウェグマンズは、
「コンシステンシー・ロープライス」を採用した。
すなわちこれは、
ウォルマートの「エブリデー・ロー・プライス政策」の取り込み。
どうやらヤオコーも、その域に入ってきたということ。
実に良い店で、視察者一同、満足。
その後、中央高速道路を走り抜け、
埼玉県大宮市のホテルへ。
そして、夕方の6時半からセミナー。
8時40分までのレクチャー。
ゲスト講師は、リテイル・マーケティング研究所社長の浅香健一先生。
浅香先生は立地論の専門家。
「集める立地・集まる立地・近寄る立地」の持論と、
業態・フォーマットとポジショニング論。
松嶋奈々子型企業、大竹しのぶ型企業など、
たとえ話がとても面白くて、勉強になった。
私の話は、業態・フォーマット論と「店舗・商品論」。
メーカー・問屋の中堅・若手に「商品構成グラフ」の考え方を、
これまた丁寧に解説。
かくて、首都圏店舗視察初日、順調に終わった。
浅香先生とホテルの中華料理で乾杯。
お疲れ様でした。
しかし店を回るのは楽しい。
アメリカでもヨーロッパでも、
日本でも。
今回も、思い出した。
「亡き父よ、店見るたびに見るたびに」
合掌。
<結城義晴>