月刊商人舎「ワイン戦略特集」と鈴木敏文「再増税無理」発言
月刊商人舎3月号、本日発刊!!
特集は、
The Wine MD Book
ワインの戦略的マーチャンダイジング教本
[Cover Message]スーパーマーケットもコンビニエンスストアもワインを売る。総合ス―パーも百貨店も、ディスカウントストアも、そしてドラッグストアやホームセンターですら、ワインを販売する。もちろん酒類専門店はそのスペシャリストだ。なぜ、ワイン販売が多業態化するのか。それは酒販免許が拡大されたからだが、さらにアルコールの消費トレンドが低下傾向にあるにもかかわらず、ワインだけが伸び続けているからだ。しかし、では、なぜワインは伸び続けるのか。ホメーロスのギリシャ神話では、神々の王ゼウスがブドウとワインの神バッカスの父となる。キリスト教ではワインはイエスの血と見なされる。つまり西欧の文化の源にワインが存在する。長い目で見ると、日本でもまだまだ生活の洋風化は限りないほど続くのだ。「金曜日はパン買って、花買って、ワインを買って、帰ります」。ワインはフードとペアリングされる。ワインはライフスタイルと切り離せない。ワインこそ現代人の生活そのものだ。だからワインは戦略商材なのである。
【目次】
[Message of March]
零戦化現象に陥るな!
Strategic Wine MD
三つのニーズをいかにつかむか? 結城義晴
Total Wine & More
米国18州130店ワイン・スーパーストアの真実
ワイン販売の第一人者が解き明かす
戦略Categoryの戦略的MD体系
山田恭路
第1部 ワイン市場成長の3つの要因
第2部 ワイン売場成功の鉄則
第3部 マーケット・データ
日本一の酒卸国分のスペシャリストたちが明かす
ワインMDトレンドと売り方改革
イオンリカー「ワインへの特化」
輸入会社コルドンヴェールで一頭地を抜く
【Casestudy1】イオンスタイル御嶽山駅前店
【Casestudy2】イオンリカー自由が丘店
平和堂100坪大型リカーショップのとんがり
アルプラ フーズマーケット大河端は
450種類のワインMD
大阪梅田百貨店競争で「一人勝ち」の理由
阪神梅田本店ワイン売場
ヴァン・ナチュールの可能性を探る
自然派ワイン専門店「銀座カーヴ・フジキ」
ワイン特集を編んでみたかった。
美しい雑誌を作りたかった。
それができた。
デザイナーの七海真理さんには、
特に感謝したい。
みなさん、ぜひ、手に取って、
ご覧ください。
Website商人舎magazineでは新連載スタート。
「お客と社員に支持される生産性向上策」
ネット会員限定の記事で恐縮。
著者は新谷千里さん。
サミットリテイリングセンター代表。
あの㈱万代出身のコンサルタントです。
極めて重要なテーマ。
楽しみにして熟読してください。
さてテレビ東京の番組『未来世紀ジパング』
番組をつくるためというので、
今朝、電話インタビューを受けた。
メディア・メトルの金本良香さんから。
詳しくは書けないけれど、
番組のきっかけは、
月刊商人舎の2013年の特集記事。
丁寧にレクチャーしました。
さて、今日は日経新聞の『視点・焦点』に、
鈴木敏文さん、登場。
セブン&アイ・ホールディングス会長。
私のブログにも連日のご登場。
聞き手は編集委員の田中陽さん。
タイトルは「バブル崩壊時の心理」
続いて「再増税は無理」とある。
「長く小売業の経営に携わっているが、
最近の消費を取り巻く環境は
バブル経済の崩壊が始まった
1990年から91年の雰囲気に似ている」
こういった観察と経験は、
鈴木さんならではのもの。
「だらだらと株価が下がり、
急騰したと思えば
すぐまた大きく下がる。
これが繰り返されると
消費者の不安感がジワジワ広がる」
2008年のリーマン・ショックは、
一時の急落だった。
だからスーパーマーケット業態、
コンビニ業態など、
日常の買物への影響は長引かなかった。
「消費者は財布のひもが固いのではない。
消費に対する積極性がないだけだ」
これこそ鈴木敏文の持論。
「そもそもモノ余りの時代なので
焦って買う必要はない。
限られた所得の中で
慎重に商品やサービスを選んでいる」
「消費者の防衛意識」を鈴木さんは強調する。
いわゆる鈴木流消費者心理学。
そのうえで暖冬への認識も、
世間とは違う。
「暖冬が消費に暗い影を落としたのは確かだが、
販売データをよく見ると、
そもそも営業成績の悪い店舗が
さらに数字を落としていた」
「暖冬は言い訳の一つでしかない」
このあたり、いつも厳しい。
だから鈴木さんには、
天気の言い訳は許されない。
私の言い方では、
「ああ、お天気産業よ!」
競争も同じ。
厳しい競争が展開されると、
そもそも成績の悪い店から数字が落ちる。
そもそも業績の悪い企業がさらに悪化する。
そして、きっぱり。
「この消費環境では
来春予定の消費税率10%導入は
やるべきではない」
これは清水信次さんと同じ見解。
日本チェーンストア協会会長。
ライフコーポレーション会長。
私もまったく同感で、
1月からそのことを指摘している。
「2段階(8%と10%)の税率引き上げは
痛税感を強めてしまった」
これも流通業界を代表して、
鈴木さんが発言することに意味がある。
「買い急がなくてはならないモノは少なく、
前回のような駆け込み需要が
起こらない可能性すらある」
ここから鈴木流『色彩』マーケティング。
「百貨店の西武やそごうの売り場を見ると、
ピンクや白など明るい色目の商品が人気だ。
かつては景気がよくなる時に
見られる現象だったが、
今回は『気分くらいは明るくしたい』
という気持ちの表れだろう」
当たっている、いないかはわからない。
しかし鈴木さんは本来、
マーケッターなのだと感じさせる。
「値の張るスーツが売れず、
バッグやアクセサリーなど
小物アイテムの動きがいい」
「消費者物価指数がなかなか上がらないのは
消費者の選択眼が
一段と厳しくなっている証しだ」
だから「原材料高を
価格に転嫁しただけの商品では
消費者は手にしない。
単純な値上げは認めない
という消費者の意思の表れだ」
これも鈴木敏文の持論。
「この厳しい姿勢が続く限り
デフレ経済から脱却できない」
そして「デフレ脱却には
新しい価値を提供できる商品開発が必要で、
それこそ民間の努力と知恵が試される」
「新しい価値を明確に打ち出せる商品は
既存品より若干高くても売れる」
これが実は、
ワインの戦略性をも意味している。
「大事なのは常に新しい商品を出し、
既存品も改良を怠らないことだ」
これはマーケティングではなく、
企業活動において当たり前のこと。
「高齢社会は消費活動に
マイナスになるなんてことはない。
より便利なモノ、
少量でもおいしいモノが求められる」
より便利なコト、
おいしいコトが、
求められると、私は思う。
いいワイン、おいしいワインが、
それが適切な価格で、
販売され続ける必要がある。
しかし、ワインを飲むコト、
ワインのある小洒落た生活、
ワインと一緒に食べる食品の提案こそ、
消費者が必要としているものだ。
ワインのあるライフスタイル、
ワインとフードのペアリング。
それがワイン・マーケティングの戦略だ。
最後の一言。
「消費者ニーズは時代とともに変化する。
それに対応していけるかが
企業の盛衰を分ける」
これは伊藤雅俊さん以来の、
イトーヨーカ堂グループの社是。
「基本の徹底と変化への対応」
言い続けることは必須だ。
しかし言い続けるだけでは、
組織は動かない。
いや、動く組織と動かない組織がある。
動かない組織でも、
そのオルガナイザーは、
動かさねばならない。
それがマネジメントである。
〈結城義晴〉