結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年12月03日(金曜日)

RMLCで研究した「総合スーパー=ハイパーマーケット」の今後と欧州小売業の寡占

今日の東京・横浜は最高気温23度。
小春日和を凌駕する異常な気候。
あと2度上がれば夏日。

今年は、ずっとこんな異常気候だった。

朝日新聞の看板コラム『天声人語』。
市川海老蔵事件を取り上げて、
「男性の容姿は重要」という読者調査を持ちだした。

「誰に見せるでもなく、
花道を行くわけでもないけれど、
いい顔で齢を重ねたい」

わかる。

大事なことだ。

「男の顔は履歴書」
ジャーナリスト大宅壮一の言葉。

さて昨日は、東京プリンスホテル紅梅の間で、
㈱伊藤園の中間決算発表記者会。
20101203090006.JPG
今夏の猛暑により、
連結売上高1945億8100万円(対前年比8.4%)、
単体でも1693億5700万円(8.2%)と好調。

ソフトドリンクメーカーだけでなく、
今夏の「猛暑・酷暑・炎夏」はやはり「神風」だった。

経常利益にいたっては、
連結112億1200万円、単体105億7800万円。
それぞれ昨対28.7%、20.8%のプラス。

振り返ると2004年も、
猛暑と緑茶ブームで飲料市場は活況だった。

しかし、今年の伊藤園の好調の理由はそれだけではなかった。
本庄大介社長は、語る。
20101203090014.JPG
「緑茶以外の商品が伸びた。
だから市場伸長率より伊藤園の伸びが上回った」

9600億円といわれる缶コーヒー市場への「タリーズコーヒー」初参入、
北米から逆輸入された紅茶飲料「TEAS’ TEA」の好調さ、
紙容器製品によるパーソナル需要の掘り起しなど。
20101203090025.JPG
猛暑効果だけではなく、
経営施策が功を奏した。

景気や天気などの与件に、
経営政策の実行を加える。
それが結果を導き出す。

今月の商人舎標語「実践躬行」そのもの。
最後は宣伝も忘れない。
炭酸飲料の新製品『ゴールデンガイサイダー』が、
12月13日に発売される。

このゴールデンガイサイダーは、
全コンビニチェーンに初めて採用された。
「営業を褒めてやりたい」と本庄社長。

私は午後から、東京・日本橋。
日本スーパーマーケット協会会議室。
商業経営問題研究会12月例会。
通称RMLC。
リテイル・マネジメント・ラーニング・サークル。

今回は最初に代表世話人・高木和成さんからの問題提起。
20101203090033.JPG
日本でながく呼称されてきた「GMS」は復活するか。
それを来年度のRMLCのテーマのひとつにしよう。
これが高木さんの提案。
商業統計では「総合スーパー」との名称を与えられている。
アメリカやヨーロッパのアカデミズム、ジャーナリズム、
そして企業自身が「ハイパーマーケット」と称する。

その業態は、欧米では隆盛しているが、
日本では衰退基調にある。

今後、これらの店舗はどうなるのか、
いかにすれば業績が回復して、
顧客満足と地域貢献を果たせるのか。

先ごろ、イオンは大きな実験に取り掛かった。
幕張の元カルフール第1号店の店舗は、
同社撤退後、イオンリテールの所有となっている。

この1フロア1万㎡の店舗で、
「総合スーパー」生き返りの実験を始めた。

「本家ハイパーマーケット」と名乗っていた店舗で、
まさに、新しいハイパーマーケット実験に臨んだ。

食品売り場はそれほどの変化はない。
非食品に大胆な改革がなされた。

衣料品のトップバリュ・コレクションのショップを設けた。
ROUの雑貨の新しいショップをつくった。
そのほかにも様々な改革を施した。

ひとことでいえば、
非食品は製造小売業の専門店を多数、集積する方式。

ということは、イオンは、
総合スーパーの鍵は「非食品にあり」と考えているわけ。

当り前だろう。
非食品の効率が悪いんだから。
そう考えがちだし、言われそうだが、
はたしてこれがいいのかどうか。

ハイパーマーケットの鍵は非食品か。

イギリス・テスコのエクストラの場合も、
フランス・カルフールのハイパーマルシェの場合も、
鍵は食品が握っている。

まず出発点をよく考えること。

この店を始めとして、
イトーヨーカ堂の改革。
イズミや平和堂の改革。

「総合スーパーはどうなるのか」
来年の大きなテーマではある。

もちろんRMLCはスーパーマーケットも、
よく研究するつもり。
20101203090041.JPG

ハイパーマーケットもスーパーマーケットも、
相互に深く関連しあっている。

ハイパーマーケットの食品をどうするかという課題は、
スーパーマーケットがどうなるかというテーマと、
切っても切り離せない。

さて12月例会の後半は、
「結城義晴のヨーロッパ小売業分析」
20101203090049.JPG
10月に訪れたロンドン・パリの報告。
世界小売業、ヨーロッパ小売業、
イギリス・フランスの小売業。
テスコ、アズダ、セインズベリー、
カルフール、オーシャン、カジノ。
すべての現状数値を出して、
そのうえで、フォーマットごとの実績を示し、
ふんだんに写真を見てもらった。

そのうえで、私の結論。

ここには総合スーパー衰退説を覆す実態がある。
ハイパーマーケットが衰退していない現実がある。

その与件のひとつは「寡占化」。

テスコはイギリスのドライグロサリー市場の30%を占める。
カルフールはフランス小売業の21%を占拠する。
ちなみにウォルマートはアメリカ小売業の13%のシェアをもつ。

この寡占の理由は、イギリス、フランス、
それぞれに異なる。

私はその理由を説明する仮説を導き出した。

このブログではとても書けない分量の分析。
だからやがてこのテーマは1冊、2冊の本になる。

そしてそれが、
日本の「GMS=総合スーパー」を歴史的に位置づけ、
その行く末を予測する内容になる。

私には、確信がある。

13時30分から始まった研究会。
一度も休憩をとらず17時まで。

日本スーパーマーケット協会の事務局が、
ずっと、だれも、会議室から出てこないので、
驚いたほど。

しかし充実した研究会だった。

その後、今年最初の忘年会。
㈱セイミヤ社長の加藤勝正さん、
㈱たいらや社長の村上篤三郎さんと同席して、
話は盛り上がった。

20時30分解散し、宇都宮に帰る村上さんと写真。
20101203105512.jpg

今年も商業経営問題研究会、
最高でした。
ありがとうございました。
来年もよろしく。

来年も「実践躬行」をモットーとしましょう。

<結城義晴>


2 件のコメント

  • 昨日のRMLC例会を欠席してしまい
    申し訳ございませんでした。

    今朝になり、
    風邪の症状が自分に表れはじめ
    必死にかぜと戦っております。

    GMSの今後ですね、かしこまりました。
    私は現場の意見を収集するようにします。

  • 旬さま、今年も一年ありがとうございました。
    来年も研究会はつづきます。

    他の講演会と違って、
    私もかなり好き勝手に語ります。

    するとそれが一番早くて、尖鋭的なものとなります。

    未完成ですが、新しい考え方をつくりだすようなところが、
    RMLCの良さでしょう。

    よろしく。

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