結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
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2016年05月08日(日曜日)

【日曜版・猫の目博物誌 その3】富士山

猫の目で見る博物誌――。
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大プリニウスの『博物誌』の次の古典は、
中国は張華の『博物誌』。

張華は西暦232年から300年の人。
三国時代から西晋の政治家にして文筆家。

幼い頃に孤児となり、羊飼いをしていた。
しかし学芸の才に恵まれ、
『鷦鷯賦』という作品を著す。
それが認められ、声名は高まり、
魏の国に仕え、歴史編纂の職に就く。
魏は『魏志倭人伝』の魏。

魏から禅譲されて、
晋の国が三国時代を統一すると、
今度は晋の武帝の信任を得て、
政権の中枢を担うようになった。

その張華の『博物誌』は、
神秘主義を背景にした荒唐無稽の記録。
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プリニウスにも、
張華にも及ばないけれど、
猫の目博物誌――。
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朝一番で、
東海道新幹線。

必ず富士の山に、
カメラレンズを向ける。DSCN8572-6

標高3776 m、
日本最高峰の活火山。
しかも独立峰。

それが美しい。
DSCN8574-6

日本三名山、そして三霊山。
1936年(昭和11年)に、
富士箱根伊豆国立公園に指定。

1952年(昭和27年)に特別名勝、
2011年(平成23年)に史跡、
さらに2013年(平成25年)6月22日、
世界文化遺産に登録。
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地質学上は成層火山。

しかし、どうしてこんなに、
大きくて美しい山が生まれたのか。

猫は、それが知りたい。

富士山は、四段階に分かれて、成長した。
一番最初は先小御岳、
せんこみたけ」と読む。
数十万年前にできた火山。
それが富士の起源。

二番目はその上にできた小御岳「こみたけ」。
20万年前から10万年前までの火山。

このころ、このあたりには、
三つの火山が活発に活動していた。
箱根山と愛鷹山、そして小御岳山。

箱根山にはまだ芦ノ湖もなかった。

しかし、10万年前になると、
愛鷹山と小御岳山が火山活動を停止。

それにかわって、
三番目に古富士が活動を開始。
「こふじ」と読む。

この10万年前は古富士と箱根山の時代。

古富士は8万年前ころから、
繰り返し1万5000年前ころまで噴火を続け、
噴出した火山灰が積もって、
標高3000m弱まで成長。

一方、箱根山も6万年くらい前に、
大噴火を起こして山頂部が大きく陥没。
カルデラが登場。

箱根山の活動は低調になるが、
古富士はますます活発になっていく。

このころは氷河期の真っ最中。
富士の山頂・山腹は
年中雪や氷に覆われていた。

その氷雪を噴火が溶かし、
そのたびに大量の土石流が発生し、
広大で緩やかな裾野をつくっていった。
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さらに氷河期終了の約1万1000年前、
四番目の新しい富士の活動が始まる。
新富士「しんふじ」と呼ぶ。

新富士火山の噴出物によって、
古富士は完全に覆われてしまい、
現在のような姿が登場する。

つまり富士山は、
「4 階建ての火山」である。DSCN8582-6

もちろん新富士の時代にも、
山体崩壊が発生。
「山体崩壊」とは、
火山が噴火などによって、
大規模に崩壊すること。

最後の山体崩壊が起こったのは、
2900 年前。

歴史に記録が残っているのは、
『続日本紀』の天応元年(781年)の噴火。
それ以降、大噴火は10回。

最大の噴火は平安時代の「貞観噴火」
864年(貞観6年)、
青木ケ原溶岩が噴出。
歴史書『日本三代実録』に記録が残る。

最後の大噴火は1707年(宝永4年)。
「宝永大噴火」と呼ばれ、
噴煙は成層圏まで到達。
江戸には約4cmの火山灰が積もった。

新井白石『折りたく柴の記』に記録されている。

この時の大噴火によって
富士山体に宝永山が生まれた。

この噴火の49日前に、
南海トラフで地震が起こった。DSCN8584-6

しかし美しい富士山は、
北アメリカプレートと接している。

さらにフィリピン海プレートの外縁部に位置する。
つまり相模トラフと駿河トラフを、
陸上側に延長した交点に位置する。

そのうえ、すぐ西に、
糸魚川静岡構造線がある。
これはユーラシアプレートとの境にある。

富士は3つのプレートの境界域に位置している。DSCN8597-6
美しすぎるものには、
いつだって怖さがともなう。

だから猫は、できるだけ、
美しさを愛でてやろうと思う。
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〈『猫の目博物誌』(未刊)より by yuuki〉

【東京大学名誉教授・藤井敏嗣先生の「富士山の誕生と噴火の歴史をひもとく」を参照させていただきました】


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