ノーベル平和賞受賞・劉暁波の「楽観的な期待」と日本薬業連絡協議会のOTC不振
ノーベル平和賞授賞式。
平和賞だけノルウェーの首都オスロで行われる。
今年の受賞者は、中国人の民主化活動家。
劉暁波(リウ・シァオポー)氏。54歳。
昨年はアメリカ合衆国大統領バラク・フセイン・オバマ氏。
かつては日本の総理大臣・佐藤栄作氏も受賞した。
その劉氏は獄中にあり、家族も自宅軟禁状態と伝えられる。
そこで、代理人もいない異例の授賞式となった。
その式典で劉氏の文章が代読されたが、
これが素晴らしい。
朝日新聞が抄訳を掲載している。
天安門事件が起きた1989年、
劉氏は米国から戻って民主化運動に参加し、
「反革命宣伝扇動罪」で投獄された。
その後、インターネット上に、
「零八憲章」という宣言文が出される。
これは、劉氏が起草したものだが、
中国共産党による一党独裁の見直しや言論・宗教の自由を求めた内容。
そこで、ふたたび国家政権転覆扇動罪で懲役11年の実刑判決がでて、
現在、服役中となった。
しかし、ノーベル賞受賞の文章で劉氏は言う。
「私には敵はおらず、憎しみもない」。
「私を監視、逮捕した警察も検察も、判事も誰も敵ではないのだ」。
「私は、自分の境遇を乗り越えて国の発展と社会の変化を見渡し、
善意をもって政権の敵意に向き合い、
愛で憎しみを溶かすことができる人間でありたいと思う」。
すごい人だ。
「私の心は、いつか自由な中国が生まれることへの
楽観的な期待にあふれている」
ここが、とてもいい。
「私は私の国が自由に表現できる大地であってほしいと思う。
そこでは異なる価値観、思想、信仰、政治的見解が互いに競い合い、共存できる」
「多数意見と少数意見が平等の保障を得て、
権力を担う者と異なる政治的見解も十分な尊重と保護を得ることができる。
すべての国民が何のおそれもなく
政治的な意見を発表し、迫害を受けたりしない」。
以下が有名なフレーズ。
「私は期待する。
私が中国で綿々と続いてきた言論による投獄の
最後の被害者になることを」。
「表現の自由は人権の基であり、人間らしさの源であり、真理の母である。
言論の自由を封殺することは人権を踏みにじることであり、
人間らしさを窒息させることであり、真理を抑圧することである」
まったくもって正当な近代思想だ。
これを国家政権転覆扇動罪と断じるならば、
その国家のほうが前近代ということになる。
さて、このところ出歩いていたので、
業界ニュースが滞っていた。
商人舎スタッフが取材に出かけた。
12月6日月曜日、日本薬業連絡協議会の、
第40回定例合同記者会開催。
場所は新橋の航空会館8Fレストランスエヒロ。
この協議会は、2007年10月11日発足。
趣旨は「日本の薬業発展のための各団体の有機的結びつきと協議の場の会議体」。
正メンバーは6つの組織。
社団法人日本薬局協励会、
有限責任中間法人日本保険薬局協会、
日本チェーンドラッグストア協会、
日本置き薬協会、
有限責任中間法人日本医薬品登録販売者協会、
そして有限責任中間法人日本薬業研修センター。
オブザーバー会員に名を連ねるのは、
日本大衆薬工業協会、
社団法人日本医薬品卸業連合会大衆薬卸協議会。
昨年の薬事法改正を果たし、
さらにその後を検証する役割が、
この協議会には存在する。
まず日本医薬品登録販売者協会の鎌田伊佐雄会長。
改正薬事法が2009年6月1日に施行され、
経過措置期限の2012年まで残すところ1年半。
登録販売者数は8万人を数え、
来年は10万人を超えることが予測される。
「登録販売者の教育が一番重要である」
同協会の内藤隆専務理事の発言。
内容は、極めて重要なこと。
OTC(Over the Counter 対面販売)の販売不振について。
「OTCを必要としている人がいなくなったわけではない。
しかし、OTCは落ち込み、逆に健康食品は伸びている」
消費者には、
「健康食品なんだから安心なんだ」というイメージが先行している。
だからこそ登録販売者が情報提供をしっかりし、
OTCと健康食品との違いを明確に提示しなければならない。
つづいて、
日本置き薬協会の有馬純雄代表理事。
6日に都内で開かれたのは、
「医薬品副作用被害救済制度30周年記念シンポジウム」。
日本薬業研修センターの川島光太郎理事長。
登録販売者の継続教育は、
ネットセミナーと集合研修の2本立てで行われている。
ネットセミナーは今年8月にスタートした。
受講者にはそれぞれ、
ネットセミナー受講証明書、集合研修受講証明書が発行される。
その両方を取得した受講生には、
継続研修受講証明書が発行される。
ネットセミナー受講証明書の発行は、
年間全12回のうち、8回受講したものとする。
(今年は全8回だったので、5回受講で発行とされた)
その後、日本チェーンドラッグストア協会の定例記者会見。
協会にはドラッグストアや薬局だけでなく、
総合スーパーやスーパーマーケット、
さらにディスカウントストアなども入会している。
平和堂、イズミ、西友、ライフコーポレーション、マルナカ、
コープさっぽろ、ミスターマックス。
薬売場に対する関心の高さがうかがわれる。
その寺西忠幸協会会長、
㈱キリン堂会長兼社長。
厚生労働省によって、
「一般用医薬品販売制度定着状況調査」が行われた。
「チェーン店の定着状況が大変高い」という結果が公表された。
寺西会長はこのことを強調した。
JACDS政治連盟の松本南海雄会長。
㈱マツモトキヨシホールディングス会長兼CEO。
「厚生労働省、経済産業省とのコミュニケーションを密にし、
国民医療の充実、健康産業の成長育成に取り組んでいく」
そして来年の第11回ドラッグストアショーについて、
櫻井清実行委員長の決意。
㈱丸大サクラヰ薬局代表取締役。
開催日は2011年3月11日~13日の3日間、
ところは幕張メッセに
「今のところ、279社の出店申し込みがきている。
昨年の来場者数は12万9000人近くだったので、
今年は13万人超えをしたい」
最後に、宗像守事務総長。
調剤支払いにおけるポイント付与問題について。
「現在、医療機関ではクレジットカードでの支払いが認められている。
そのため、ポイントが付与されている」
「しかし、同じ調剤に対し、薬局Aでは1万円支払うのみ、
薬局Bでは1万円支払うと1千円分のポイントが付与される。
このような状況があってはならない。
不公平感と保険制度への不信感につながる」
「常識的なポイント付与は1%程度にとどめるべきであり、
各社の冷静で常識的な対応をお願いする」
ちなみにこのことは現在、公正取引委員会に確認中とのこと。
スーパーマーケットやコンビニ、
総合スーパー、ディスカウントストアでも、
登録販売者を置いて、薬品が売られている。
「衣食」を主に販売する総合スーパーまでもが、
「医食同源」を店舗コンセプトのひとつにせざるを得なくなってきた。
時代はどんどん変化する。
それについていけない者は、
個人も法人も、
国家といえども、
「前近代」に取り残される。
<結城義晴>
2 件のコメント
結城先生へ
一般用医薬品販売制度が定着しつつあることは、この業界に身を置く者として日々実感しています。
反面 医薬品の販売が落ちて健康食品が伸びていることへは、一抹の不安を覚えます。
現在 国内で流通する医薬品はその製造工場から、薬事法に基ずく極めて厳格が品質管理がされており、その安全性は折り紙付です。
一方の健康食品にはというと、私は玉石混交と言わざるを得ません。
「お通じが良くなる、ダイエット効果」を標榜する健康食品には、下剤成分が含まれているものが薬局・薬店でも販売されています。
販売士の方のスキルアップの教育の継続が望まれます。
いまちゃん、感謝。
その通りです。
だから薬局・薬店、ドラッグストアはもとより、
他の小売業態の店でも、
正しい知識をマスターした人々が、
販売に当たるべきなのです。
彼らを私は「知識商人」と呼びます。
昨年の薬事法の改正、
その前の酒税法の改正、
食育基本法の制定などなど。
知識商人の存在は、
ますます重要性を帯びてきました。
これからも国際化が進めば、
さらにさらに「知識商人」の知識と技能は、
有用なものとなります。