結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年05月25日(水曜日)

流通問題研究協会記念講演の「流通革命論の軛を絶つ」

「世の中には3種類の人がいる。
『話せば分かる人』
『話しても分からない人』
『話さなくても分かる人』だ」
毎日新聞巻頭コラム『余禄』

「政治家は『話しても分からない人』にも
分かってもらう努力を続けねばならない」
元首相の小泉純一郎さん。

商人も同じ。

話してもわからない人にも、
わかってもらう努力を続ける。

それが商売だ。

15年前にイタリアで、
主要国首脳会議が開催された。
いわゆるジェノバ・サミット。

その時に小泉さんが、
各国首脳に対話の努力を訴えた。

日本でも明日から、
伊勢志摩サミットが開催される。

そのときに、
アメリカのバラク・オバマ大統領が、
広島を訪れる。

朝日新聞は作家の塩野七生さんに、
イタリアに電話して話を聞いた。

「久方ぶりに日本外交にとっての
うれしいニュースだと思いました」

「特に、日本側が
『謝罪を求めない』といっているのが、
大変に良い」

なぜか。

「謝罪を求めず、無言で静かに迎える方が、
謝罪を声高に求めるよりも、
断じて品位の高さを
強く印象づけることになるのです」

「しかも、それは日本政府、マスコミ、
日本人全体、そして誰よりも、
広島の市民全員にかかっているんですよ」

ここからが塩野流。

「歴史を一望すれば、
善意のみで突っ走った人よりも、
悪賢く立ちまわった人物のほうが、
結局は人間世界にとって
良い結果をもたらしたという例は
枚挙にいとまがありません」

塩野さんは、悪賢く振舞えと説く。

「ただ静かに、無言のうちに迎えることです。
大統領には、頭を下げることさえも求めず。
そしてその後も、静かに
無言で送り出すことです」

「原爆を投下した国の大統領が、
70年後とはいえ、広島に来ると決めたのですよ。
当日はデモや集会などはいっさいやめて、
静かに大人のやり方で迎えてほしい」

大人のやり方。

「われわれ日本人は、
深い哀しみで胸はいっぱいでも、
それは抑えて客人に対するのを
知っているはずではないですか。
泣き叫ぶよりも無言で静かにふるまう方が、
その人の品格を示すことになるのです」

品格。

「伝わる人には伝わります」

塩野さんは、
「話さなくともわかる人」に訴えよ、という。

「『謝罪は求めない』は、
『訪れて自分の目で見ることは求めない』
ではありません」

むしろ、自分の目で見てもらう。

「米国大統領オバマの広島訪問は、
アメリカで心を痛めている人たちに、
まず、自分たちが抱いていた
心の痛みは正当だった、
と思わせる効果がある。
そうなれば、感受性の豊かな人びとの足も、
自然に広島や長崎に向かうようになるでしょう」

「広島の夏の行事の灯籠流しに
多くの外国人が参加するのも、
見慣れた光景になるかもしれないのです。
そうなれば、原爆死没者慰霊碑の
『過ちは繰返しませぬから』という碑文も、
日本人の間だけの『誓い』ではなくなり、
世界中の人びとの『誓い』に
昇華していくことも夢ではなくなる。
それが日本が獲得できる得点です」

「そしてこれこそが、
原爆の犠牲者たちを
真の意味で弔うことではないでしょうか」

広島や長崎は、
見てもらうだけ、その場に来てもらうだけで、
話さなくともわかる人を増やす。

さて、今日は、
東京タワー向かいの機械振興会館へ。
一般社団法人流通問題研究協会、
その定時総会の記念講演。

初めに協会会長の玉生弘昌さんのあいさつ。
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㈱プラネット代表取締役会長。

「流通は安売りをやめよう。
流通で働く人たちの給料を上げよう」
いま、玉生さんはそう言っている。
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私のこの日の講演テーマは、
「流通革命と超チェーンストア」
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月刊『商人舎』、昨2015年12月号で特集した。
その時のタイトルは、
「流通革命論」の軛(くびき)を断つ
―2015脱チェーンストア経営の弁証法
gekkan201512

1962年、林周二著『流通革命』が発刊された。
若き東京大学助教授だった。
それは、卸売業、小売業に、
多大な影響を与えた。
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小売業、とりわけチェーンストア産業に、
及ぼしたインパクトは、その後もずっと続いた。

倉本長治の商業近代化の目覚めから始めて、
もちろん林周二「流通革命論」をたっぷり、
それから渥美俊一のチェーンストア理論、
アンリ・ファヨールの管理過程論と、
P・ドラッカー、ヘンリー・ミンツバーグの反論。

マネジメントとマーケティングを論じつつ、
ポストモダンのチェーンストア戦略を提示した。
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セブン&アイの鈴木敏文さんが掲げた
「脱チェーンストア宣言」
ファーストリテイリングの柳井正さんが語る
「超チェーンストア」
そして流通科学大学の石井淳蔵教授が整理する
「流通3.0」
いずれもが新しいチェーンストア像を示している。

そうした主張を整理し、
ポストモダンの流通産業を論じた。
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多くの先輩の前での講演は、
いつになく緊張したし、
投影スライドのトラブルがあって、
大いに冷や汗をかいた。
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それでも、ありがたいことに、
多くの皆さんから評価をいただいた。
ご清聴に、心より感謝したい。

その後、場所を移して懇親会。
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副会長の齋藤充弘さんが乾杯のあいさつ。
全日本食品㈱会長。
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廣田正さんにも久々にお会いした。
三菱食品特別顧問を辞し、
現在は廣田オフィスの代表。
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斉藤さん、玉生さんと4人で、
楽しく語らった。
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細川玲理さんと写真。
細川さんはカスタマーコミュニケーションズ㈱で、
私のいわば同僚。
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締めのあいさつは、
田上正勝さん。
㈱プラネット代表取締役社長。DSCN0850-1

そして、三本締め。
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最後は、協会の重鎮・三浦功先生を囲んで。
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左からプラネット常勤監査役の黒岩昭雄さん、
三浦先生、玉生さん、田上さん。

お疲れさまでした。

機械振興会館から徒歩1分。
私の古巣の㈱商業界がある。
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道路に面した倉本長治主幹の碑。
「店は客のためにある」
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今日の講演も、この言葉から始めた。

だからいつも「気を付け!」の姿勢になる。

ありがたいことだ。

〈結城義晴〉


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