高橋是清『随想録』とコーネル・ジャパン12月講義の結城・荒井・矢作3人揃い踏み
高橋是清の『随想録』(中央公論新社)が話題。
この11月に発刊されたばかり。
与謝野馨衆議院議員が岡田克也民主党幹事長に薦めたとか、
何かと話題になっている。
朝日新聞の「経済気象台」でも取り上げられた。
高橋は、1929年の世界大恐慌のなかで、
強力な指導力で日本を列強に先駆けて景気回復させた。
その考え方の骨子は、一言でいえば、
「円安で輸出を促進し、デフレ脱出をはかる」こと。
「最近の世界経済の事情は当時とよく似ている。
違いは異常な円高であることだ」
そこで高橋にならって、
「円安にしていくのが国の基本政策であるべきだ」となる。
「歴史的にみても、経済における唯一とも言える明解な指標は
ゆるやかな間断なきインフレである」
だからポール・クルーグマンが提唱するインフレターゲット論が、
台頭してくる。
「デフレで経済が救われたことはかつてない」
しかし今の日本政府にも日銀にも、それができない。
「政府不在の日本の、
『純情で、ええ格好しいで、事なかれ主義の円』へのしわ寄せは、
さらに強くなる恐れが大きい」
コラムは例によって、皮肉で終わるが、
高橋是清の「実践躬行」こそ、
見習わねばならない。
今月の商人舎標語。
「実践躬行」
「ええ格好しい」と「事なかれ主義」が、
実践躬行を阻害するものだ。
日経新聞の記事。
「イオンモール10%増益」
3月から11月の3四半期の連結営業利益が過去最高を記録。
280億円との報道。
売上高は1060億円で、これは4%のプラス。
この営業利益率の高さは小売業のそれではない。
なぜ総合スーパーは苦しいのに、
ショッピングセンターは好調なのか。
新規のショッピングセンター3店が貢献したと同時に、
SC全体での一斉割引セールが奏功。
テナントは専門店であるから、
総合店は伸びなくとも専門店は集客した。
この総合と専門との店揃えのなかで、
ショッピングセンターは両者に競争を強いている。
それがショッピングセンター事業としてのイオンモールの好調の理由。
現在、全国に55カ所展開しているが、
その動向は、示唆に富んでいる。
さて昨日から、コーネル・ジャパンの12月1日目の講義。
いつもの法政大学イノベーションマネジメント研究センターの教室。
第1講は私の「チェーンストア経営概論」。
毎年のようにレブハーの『チェーンストア』から入る。
ここにチェーンストア誕生時の原点があるからだ。
そして日本に特有のチェーンストア理論の解説。
すなわち故渥美俊一先生の体系をダイジェストし、
その理論の評価をする。
もちろん私の考え方などがどんどん入ってきて、
最後は世界のチェーンストアのこれまたダイジェスト。
第2講は、先月に引き続き、
荒井伸也首席講師による「スーパーマーケット原論2」。
現時点でも『日本スーパーマーケット原論』(パルス出版)は、
唯一の教科書といってよい。
そのエッセンスを2カ月にわたって、
講義していただく。
これはコーネル・ジャパンの看板講義。
「ゴルフに例えるとマネジメントはプレーヤーのようなもので、
マーケティングはキャディのような役割」
ゴルフにたとえる荒井先生独特の言い回し。
私もよく使わせてもらっている企業の複合目的の図。
これを私は33年前に細谷泰雄先生から教わった。
利益と使命と能力開発が循環する。
このすべてが企業の目的となる。
ドラッカーの「企業の目的は顧客の創造」は、
この循環の中の使命を示す。
それが荒井先生の説明。
第3・4講は、法政大学・矢作敏行教授の「小売イノベーション論」。
矢作さんにはコーネル・ジャパンの主任講師も務めていただいている。
矢作先生は小売業のイノベーションの本質を研究している。
その矢作理論の体系が、3時間で展開される。
これまたコーネル・ジャパンの看板講義。
矢作先生は大学講座スタイルで、受講生からの質問も受けるが、
受講生にも次々に質問を投げかける。
例えば「小売業は何をつくるか?」
一方、第3期生からも質問が出る。
真っ先に質問したのは㈱キョーエイ常務の森雅之さん。
指名されて質問に応えているのは、
㈱アンデルセン・広島アンデルセン販促企画室係長の髙木明子さん。
風邪気味の㈱ラルズ・第5商品部ゼネラルマネジャーの松尾直人さん。
矢作先生からむずかしい質問。
「コンビニとスーパーマーケットではどちらが模倣しやすいか」
あなたはどう考えるか。
㈱阪食の営業本部店舗運営部長の廣田亘さんにも、
質問が投げかけられる。
荒井先生も矢作先生も、
自分で「考える」ことを重視する。
それがこのプログラムの特徴である。
だれかに考えてもらうのではない。
自分で考える。
あるいはともに考える。
それが何よりも大事だ。
私がいう「ポジショニング」とは、
自分の位置づけを明確にすることだ。
それには当然ながら、自分で考えねばならない。
今日の授業が終わって、3人の講師が控室で談笑。
すべての講義が終わると既に夜の8時。
それから全員で法政大学近くの飯田橋のイタリアンレストランに向かった。
コーネル・ジャパン第3期生の忘年会。
忘年会は本当に盛り上がった。
最後の挨拶は副学長。
レストランは貸し切り。
ざわざわしていて聞き取れないので、
店のハンドマイクをお借りして、
「実行の三期生」に向けて今年一年のねぎらいと新年への抱負の一席。
だいぶ、ワインを飲み過ぎている・・・と思う。
みんな、本当に楽しそう。
荒井先生も楽しそう。
矢作先生も満足げ。
事務局統括の村尾芳久本部長は、
お酒は飲んでいないが、
やっぱり楽しそう。
ビールとワインでご機嫌の私は、まだ挨拶している。
ハンドマイクを持たされたら、やはり、アジ演説のごとく
最後の挨拶は簡単には終わらない。
楽しい夕べだった。
皆さんに感謝。
声が枯れた。
< 結城義晴>