結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年12月21日(火曜日)

11月の百貨店&コンビニ販売統計の明暗とサイゼリヤ正垣泰彦の「人のために、正しく、仲よく」

今日の夕方5時ごろの皆既月食。
北海道を除いて、全国的に雨模様。

残念ながら、見ることができなくなりそう。

ならば、ジョン・レノンではないが、
「想像してごらん?」

さて昨日は重要な数字が発表された。
百貨店とコンビニの11月販売統計。
最大の大型店業態と最小の小型店業態。

1972年まで三越が日本小売業の王者だった。
それを抜いたのが総合スーパーのダイエー。
当時、SSDDSなどと称した。
「セルフ・サービス・ディスカウント・デパートメント・ストア」
言い得て妙だが、これがこの業態の本質を表している。

2000年に、そのダイエーの売上高を抜いたのが、
コンビニのセブン-イレブン。

かくて1店当たり最大面積の業態から最小面積の業態へと、
日本小売業の主役は移り変わってきた。

11月は明暗が分かれた。
2カ月ぶりに暗の百貨店と明のコンビニ。
百貨店は地方店舗が低調で、2カ月ぶりに前年割れ。
コンビニはタバコ販売額が回復基調で、2カ月ぶりに前年クリア。

その全国の百貨店91社・261店舗の11月売上高は、
前年同月比マイナス0.5%で5556億円。
総店舗面積は2.9%減って643万7641㎡、
総従業員数も6.2%減って9万3570人。
面積が減り、従業員が減る。
売上高が減ることよりも、
社会的には大きな意味がある。

ただし、明らかに衰退業態の百貨店。
「衰退業態は立地が限定されていく」
これ、結城理論のひとつ。

百貨店は大都市圏型の業態。
だから地方都市の店舗が落ち込むのは当然。
衰退業態は立地が限定されるからだ。

主要カテゴリー別で増えたもの。
家庭用品が2カ月連続増。
婦人服・洋品、その他家庭用品、菓子2カ月連続増、
家電5カ月ぶりの増、
化粧品24カ月ぶりの増。

一方、コンビニの既存店はプラス1.1%。
客数もプラス1.9%。
しかし平均客単価は依然としてマイナス基調で0.8%減。

店舗数はプラス1.4%の4万3291店、
客数はプラス3.3%の11億4952万人。

そして重要な平均客単価569.2円で、これもマイナス0.2%。
いつも言うが、コンビニの平均客単価は、
日本人の生活価値観の最重要数値。
なぜならコンビニを利用しない日本人はほとんど存在しないからだ。
まさにエブリデー・ストア、エブリボディ・ストア。

そのコンビニの焦点は、増税したタバコの動向。
急減した販売金額は回復基調。
高額になっても、本当のタバコ愛好者は減らない。

誠に過激なたとえだが、麻薬はいかに高額でも、
中毒患者は無理をしてでも購買する。
タバコはその軽症の商品。
だから高くなっても、
止められない者はその高額品を買い、
だから数量ベースでは大きく減り、
金額ベースでは元に戻る。

そのコンビニの11月の商品構成比。
日配食品が5.5%プラスの34.4%、
加工食品が4.4%プラスの30.1%。
非食品だけ1.0%マイナスの31.0%、
サービスも3.4%プラスの4.5%。

弁当・惣菜は日配食品に含まれる。
これが中食の代表で、
外食産業と競合している。

百貨店とコンビニの明暗。
12月がどう推移しているか。
問題はこちらだ。

さて昨日は、午前中、
東京・秋葉原で単行本の打ち合わせ。
4月に発刊される予定。
ご期待ください。

その後、立教大学大学院結城ゼミの渋木克久さんと、
埼玉県東武野田線野田市駅で待ち合わせ。
外食産業の雄、㈱サイゼリヤ吉川本社を訪問。
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吉川工場が併設されている。
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1階の階段を上がると、
ラファエロ・サンティの「アテナイの学堂」。
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ここでサイゼリヤ代表取締役会長の正垣泰彦さんに面会、
の予定が、行き違い・勘違いで、東京・浜町の東京Officeへ。
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渋木さんは「外食産業の海外戦略」を研究している。
ベースはジョン・ダニング教授のOLIパラダイム。
そのケーススタディとして、
世界のマクドナルド、日本からは吉野家とサイゼリヤを研究。

サイゼリヤは創業者の正垣泰彦会長自ら、
ヒアリングに応じてくださった。
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インタビューは夕方5時過ぎから始まって、7時近くまで。
1時間の予定が、正垣さんのご厚意で、
2時間近くまで延長して、盛り上がった。

サイゼリヤは、売上高994億円(2010年8月期・連結)、
店舗数888店舗(国内842店 海外46店/2010年8月期・連結)

「人のために、正しく、仲よく」
この理念が海外戦略にも中国戦略にも貫かれている。
正垣さんのモットー。
だから中国・上海の1号店でも、
「中国の人たちに喜んでもらいたい」というのが出店の動機だった。

しかし最初はまったく売れなかった。

そこで正垣さん自ら意思決定し、
7割引きの価格を出した。
貧しかった中国人にレストランに来てもらうためだ。
原材料も現地調達。

やがてお客たちも、働く人たちも、
「正しく、仲よく」を理解し、信じ始めた。

1日100人の客数だった店が、
3000人にも増えた。

反日デモのときにも、
デモに参加する人たちが、
サイゼリヤの店に集まり、
サイゼリヤの店にもどってくるほどになった。

「あそこの店は安くておいしい」
その実現だけを考えてビジネスをしてきた。

渋木さんのインタビューが終わりに近づくと、
故渥美俊一先生の思い出、
チェーンストア経営の理論、
アメリカ流通業の話題、
オーストラリアのエピソードなど、
テーマはどんどん広がった。

久しぶりに、私は同志と巡り合った気がして、気分が良かった。
そして固い握手。
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「不況は商人を鍛える」
倉本長治は言った。

しかし海外進出も商人を鍛える。
ドラッカーの言う「企業の目的」は「顧客創造」である。
中国に顧客をつくる仕事は、
サイゼリヤにふたたび、その原点を教えた。

私は、思った。
来年は、もう一度、原点に戻る年だと。

正垣さんに、心から感謝。

<結城義晴>


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