結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年09月07日(水曜日)

春風亭昇太の「三遍稽古」と安部修仁の「コピー」

台風の当たり年?

8月下旬にトリプル台風がやってきて、
その中の迷走10号が岩手に上陸、
さらに12号が長崎から日本海に抜け、
今また13号が発生。

被害に遭遇した皆さんに、
お見舞いを申し上げたい。

私たちの日本は、
台風列島・地震列島。
それに耐える力を知恵を、
私たちの「強み」にするしかない。

さてほぼ日刊イトイ新聞の対談。
春風亭昇太と糸井重里。

昇太さんは、今年、
『笑点』の司会に就任。
乗りに乗っている落語家。
1959年、静岡県生まれ。
1982年、春風亭柳昇に入門。
1992年、真打ち昇進。
2000年、花形演芸大賞大賞受賞。
第55回文化庁芸術祭演芸部門大賞受賞。
新作落語の創作活動に加え、
独自の現代的な解釈で落語に取組む。

その対談の第3回が昨日。
タイトルは、
「真似」と「コピー」の違い。

[糸井]昇太さんは、
柳昇師匠から落語を
学んだんでしょう?

[昇太]はい。
でも、師匠から教わった話は
少ないんですよ。
うちの師匠は、
新作落語をやっていたので、
「新作がやりたかったら、
自分で書け」
と言ってましたし、
古典落語のほうも、
20年間で師匠から教わったのは
二席だけなんです。

[糸井]二席だけ。

[昇太]でも、「三遍稽古」という、
落語家が本来やっていた古いやり方で
教えてくれました。

師匠が弟子であるぼくの目の前で
落語をしゃべるんです。
で、聞き終わったら、
「じゃ、またな」と
言って帰ります。

また何日か経って、
師匠がぼくの前で
落語を一席しゃべる。

それを3回繰り返します。
「三遍稽古」という言葉通り、
3回聞いて覚える
というものなんです。

――相撲には三番稽古がある。
実力がほとんど同程度の二人の力士、
二人だけで何番も続けて稽古する。
それを三番稽古というが、
実際は数番から数十番に及ぶ。
落語の三遍稽古は三度だけ[結城]

[糸井]弟子が自分で
やってみせるというのは
ないんですか。

[昇太]弟子がやってみせるのは、
最後だけなんです。
「あげにいく」という
言葉を使うんですけど。
「覚えましたので聞いてください」
と言って、師匠の目の前でやる。
師匠がそれを見て、
「じゃあ、その落語をやっていいよ」
と、許可が降りるんです。

[糸井]はぁー。

[昇太]いまの時代は
だいたい音源を取らせてくれるので、
それを聞いて覚えることが多いのですが、
本当に落語を教わるには、
昔の「三遍稽古」という稽古の仕方が、
ベストだったと思うんです。

なぜかと言うと、
音源を聞いて覚えると
完全にコピーになっちゃうんですよ。
息継ぎのタイミングまで
同じになっちゃうから。

[糸井]ああそうか。
それはダメですね。

[昇太]落語は、
自分の言葉で
しゃべった方がいいんです。
だから「三遍稽古」で、
なんとなく覚えるというほうがいい。

誰かが作ったものを、
他人が全く同じようにコピーしても、
おもしろくないんですよね。

実際にモノマネ芸をやってる人も、
完全コピーの人って、
いないじゃないですか。
やっぱりデフォルメしているから
おもしろいわけで。

――これこそ、
創意を尊びつつ良いことは真似ろ。
倉本長治に通じる[結城]

[糸井]完全コピー型のモノマネの人は
おもしろくないですよね。
なんだか知らないけど、
その人自身から
出てくるものがないから。

[糸井]「三遍稽古」の3回目の稽古は、
自分としては出来た、
というタイミングで、
「よし、師匠に見せよう」ってなるの?

[昇太]いや、師匠が
タイミングを決めるので、
こっちで決められないんですよ。
地方の公演とかに
カバン持ちでついて行って、
たまたま高座まで時間があるとき、
そういうときに突然
「昇太、やるぞ」って、
はじまるわけですよ。

[糸井]それ、
1回目の稽古から3回目まで、
どのくらいの期間なんですか?

[昇太]2週間ぐらいです。
でもまあ、落語家なんで、
ずーっとなにかしらの落語を
聞き続けてるので、
ある程度、内容を知った上で、
稽古に入るんですけどね。

[糸井]かといって、
袖で聞いていた経験を全部足しても、
「習った」ことにはならないんですね。
稽古という形をとらないと。

[昇太]そうですね。

[糸井]この話はすごくおもしろいですね。
ぼく、どう応用するかまだわかんないけど、
なにかに応用してみたい気分です。
「習う」というのは「真似る」ことだけど、
「真似」と「コピー」は同じではない。
どんな分野においても、そうですよね。

――「模倣」と「複製」は異なる[結城]

[昇太]うちの師匠も、
「芸は模倣だから、
まず、その人のやった通りに覚えなさい」
と言うんですよ。
だから言葉もあまり間違えないように
いったん覚えるんですけど、
そこからどう離れていくのかというのが、
その人の修業だと言ってました。

――この対談。
素晴らしい。

糸井さん同様に、
私も「三遍稽古」は、
学ぶときの、
極意を示していると思う。

ただし、師匠は、本物で、
しかも、その師匠が三遍に、
命を懸けて教える。
弟子もその三遍に、
命を懸けて学ぶ。

だから弟子は、
命を懸けて、それを、
自分のものにする。

そして「あげにいく」

師匠は、弟子が、
命を懸けて自分のものにしていたら、
「いいよ」と許可を出す。

ただ、自分のコピーだけだったら、
「いいよ」はでない。

このあたりがじつに正しい。

日経新聞『私の履歴書』では、
安部修仁さんが語り続ける。
吉野家ホールディングス会長。

高校時代にバンド活動を始める。
ただしこの段階の修業は、
自分でも書いているが、
「コピー」

「楽譜など読めるわけもない。
頼りになるのはレコードだけ。
そこからコードを抜き出すしかない。
でも意外と簡単で
45回転のシングルレコードを
78回転に早送りにすると
ベースの音がはっきりと聞き取れて
コードのキーがわかった。
回転数を変えながら
器用にコードを拾っていく」

これ、ほんとうに、
わかる。

「安部しゃんは、天才と違うか」
メンバーに尊敬された。

しかしやっぱり、コピーだった。

その後、超一流の経営者になるのだから、
このころのことは人生の前置きだが、
「学校では校外で
音楽活動することを禁止していたので、
こっそり中洲のディスコに出入りして、
グループサウンズや
ローリング・ストーンズの
コピーをしていた」

コピーはコピー。
本物の師匠の三遍稽古には、
遠く及ばない。

大学の落語研究会の素人が、
コピーをして落語を語るが、
聞けたものではない。

大学の落研の先輩が、
いくら丁寧に後輩に教えても、
先輩は同じ素人、
本物のプロフェッショナルではない。

どんな仕事も、全く同じだ。
商売も、全く同じ。

「近くに伝説のライブハウス『照和』があり、
そこからは海援隊、甲斐バンド、
チューリップがデビューした」

福岡の『照和』は、
それこそ本物のライブハウスだった。
そこで自分の芸を磨いた者たち、
そしてその中のほんの一握りの、
運を持った者たちが、
メジャーになっていった。

だから何事も、本物から、
三遍稽古で学ばねばならない。

イオンの岡田卓也さん、
名誉会長相談役。
いつも言っている。
「学ぶときは超一流から学べ」

さて台風13号は去っていないが、
私は午後からYCAT。
横浜ベイブリッジ。
DSCN8593-6

そして横浜港とみなとみらい。
DSCN8605-6

大東京を抜け、
荒川べりの東京スカイツリー。
DSCN8609-6

そして到着。
成田空港第2ターミナル北ウィング。DSCN8617-6

ハワイ・ホノルルに向けて、
夜の便で出発。
DSCN8618-6

直前のレクチャーをして、
成田グループは元気いっぱいです。
DSCN8622-6
では、行ってきます。
商人舎ビギナーズコース。
イン・ハワイ。

始まりました。
ドキドキ・ワクワク・ニコニコの
3泊5日研修セミナー。

私は三遍稽古のつもりで、
命を懸けて語る。

よろしく。

〈結城義晴〉


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