セブン&アイ鈴木・カスミ小濵・ユニクロ柳井・ライフ岩崎の年頭所感
2011年の初売り。
全国の小売業・サービス業、
すべての動向はわからないが、
日経MJが「総合」欄で、
百貨店、外食、家電量販店のトレンドを、
ダイジェストしている。
首都圏の百貨店は軒並み、前年よりも成績が良かった。
「倹約・節約疲れ」の表現もあるが、
人間の欲求は大小の波のようなカーブを描いている。
その大きなカーブ自体が下方傾向なのか、
それとも上昇傾向なのか。
それを読み取ることが重要。
小さな波はその時点の現象ということになる。
大きな波を認知しつつ、
毎日・毎週の小さな波をつくる。
商売や仕事とは、そんなものだ。
さて、百貨店2強の一角・新宿伊勢丹の初売りの2日。
売上高は25億円で前年比5%プラス。
1日売上げが23億円というのも凄いが、
年商2200億円を超える百貨店ならではのこと。
客数は3%増だった。
福袋、衣料品売り場、食品売り場、住関連売り場と、
買い回りする顧客が多かった。
百貨店の2強のもう一角、日本橋三越は、
前年比5%プラスと新宿伊勢丹と同じ。
繁盛百貨店は、前年比5%といったトレンド。
銀座の三越は、昨年9月に増床リニューアルしたが、
こちらは40%増。
東急百貨店は2日、3日の全店売上高が、
前年同期比15%プラス。
大健闘。
初売りの商品在庫量を昨年比20%増やした。
それが15%増につながった。
日本中の小売業が絞り込みを政策にしていた時の、
㈱大創産業・矢野博丈社長の言葉を思い出す。
「売上げをつくるには在庫量を増やす」
㈱セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さんの口癖。
「売れ筋でロスを出せ」
売れ筋商品はロスを出す覚悟で、
発注を積極的にし、在庫をたっぷり持つこと。
これは「商売の極意」のひとつ。
ただし、なにが売れるのか、売れ筋は何か、
それがわかっていなければ危険極まりない。
外食は、モスバーガーが三が日の既存店売上高5%増。
すかいらーくの三が日は前年並み。
日本海側の大雪のマイナスを考慮すると、
順調だったと、みずから総括。
一方、家電量販店は、
ケーズホールディングスが2日、3日の売上げ3割減。
家電エコポイント縮小の影響明らか。
ビックカメラは三が日、前年並み。
このあたりを類推すると、
年始商戦の目安は前年比5%増。
あなたの店ではいかが?
地方の店ならば、
「前年並み」で十分合格ラインだろう。
朝日新聞のコラム「経済気象台」。
コラムニスト深呼吸氏が「二つの巣ごもり」を書いている。
一つは「自宅でのプチ贅沢な巣ごもり」
もうひとつは「シングル世帯の高齢者の巣ごもり」
結論は「『家』というものにもう一度目を向ける年」。
クリスマスや年末になると、
テレビでアメリカ映画の「ホーム・アローン」が、
何度も上映されるが、
「自宅で一人、巣ごもり」の「ホーム」は、
複雑な気分になる。
「家」や「ホーム」が幸せやハッピーばかりではないことを、
私たちは知っておかねばならない。
そんな人々も求めている。
小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。
そんなニーズを決して忘れない商売をしたい、
そんな小売業・サービス業でありたい。
さてさて、トップマネジメントの年頭所感。
これも各紙で採り上げられたが、
日経MJが一番、身近。
セブン&アイの鈴木さん。
「消費回復の見込みは遅々としたものになる」
昨年末にもこのブログで鈴木さんのコメントを紹介した。
「全体に沈滞ムード」
2011年の傾向を端的に表している。
だから毎日、毎週の小さな波を演出し、創造する根気が大切。
鈴木さんは続ける。
「総合スーパーは過去の経験を捨てて、
新たな挑戦を進める」
成熟期から衰退期にはいる業態は、
大転換が必須。
自分たちがそれを恐れてはいけない。
喜んで成功体験を捨てるべき。
私は㈱商業界での30年を捨てた。
だから月刊雑誌には目もくれない。
その私自身の経験からも、これは確かだ。
㈱カスミ会長・小濵裕正さんからメールをいただいた。
新年の心境は「めでたくもあり、めでたくもなし、されどめでたくしたい」。
これぞ、商人の心意気。
そして二句。
「日本国 絶滅危惧種に 指定され」
「初日の出 西から出づる 奇跡待つ」
それから「従業員の皆さんへの年賀のメッセージ」。
「企業ブランドの新しい価値づくり」
共感創造―それはいいね!を実現しよう
カスミグループを構成する各社の企業価値を創造する
カスミグループの各店・各職場の存在価値を創造する
カスミグループで働く全従業員の人間価値を創造する
「本もの・善きもの・熱きもの・美しきもの」とは何か、
具体的に探し求め、
「共感創造―それはいいね!」を実現しようではありませんか。
こう呼び掛けている。
本ものには「知」がある
生きものは「本もののとき」ほど真に生き栄える
善きものには「情」がある
生きものは「善きもののとき」ほど豊かに生き栄える
熱きものには「意」がある
生きものは「熱きもののとき」ほど輝いて生き栄える
美しきものには「力」がある
生きものは「美しきもののとき」ほど盛んに生き栄える
小濵さんらしいロマンチシズム。
こんな年頭所感をもらう社員は幸せだ。
さて日経MJにもどって、
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さん。
「『変革しろ、さもなくば死だ。』という過激な言葉を、
あえて今年の方針にする」
世界商人としての柳井正の心意気が、
ひしひしと伝わる。
トップの志が、人を動かし、組織を動かす。
最後に㈱ライフコーポレーションの岩崎高治社長。
「10年ぶりの年間2ケタ新規出店など積極策で、
競争を乗り切る」。
「新興国の経済に牽引されている限り、
日本の賃金は新興諸国の賃金水準に収斂せざるを得ず、
所得環境の改善は期待できない」
この認識はノーベル経済学者ポール・クルーグマンに通じる。
私も、まったくの同感。
国内需要を喚起し、国内の生産性を高めねば、
国民は豊かにはならない。
柳井さんの宣言と岩崎さんの意気込みに共通するもの。
第1に、積極策を誇示するところ。
第2に、全軍を鼓舞しているところ。
第3に、明確な行動方針を出しているところ。
トップマネジメントは迷わない。
社員・従業員はそのトップの考えに共感している。
この組織体制を築いた企業が、
「沈滞ムード」を吹き飛ばすに違いない。
<結城義晴>