【日曜版・猫の目博物誌 その18】ススキ
猫の目で見る博物誌――。
猫の目は夜にも見える。
光のないところでも見える。
そんな猫の目で見る博物誌――。
中秋の名月。
そして、ススキ。
萩は月に芒は風になる夕
〈明治29年、正岡子規〉
萩は「はぎ」
芒は「すすき」
夕は「ゆうべ」で夕方のこと。
子規は数多く、
ススキの句を詠んだ。
ハギもススキも秋の七草。
ハギ(Lespedeza)は、
マメ科ハギ属の総称。
落葉低木。
秋の七草は、
キキョウ科のキキョウ「桔梗」
(Platycodon grandiflorus)
オミナエシ科のオミナエシ「女郎花」
(Patrinia scabiosifolia)
ナデシコ科のカワラナデシコ「撫子」
(Dianthus)
キク科のフジバカマ「藤袴」
(Eupatorium fortunei)
マメ科のクズ「葛」
(Pueraria lobata)
そしてイネ科ススキ属のススキ。
(Miscanthus sinensis)
「芒」とも「薄」とも書くし、
「尾花」ともいう。
さらにカヤとも呼ばれ、
「茅」あるいは「萱」と書く。
野原に生息。
多年生草本。
高さは1メートルから2メートル。
人間の身長に近い。
地面の下にはしっかりした地下茎がある。
そこから多数の花茎を立てる。
「花茎」は「かけい」で英語でScape。
花のみをつける茎のこと。
ススキの葉は細長い。
葉は多数、つく。
「根出葉(こんしゅつよう)」
「根出葉」は茎が極端に短いため、
根または地下茎から直接、
出ているように見える葉。
ダイコンやタンポポなど。
ススキの茎は「稈(かん)」
「稈」は中空になっている茎のことで、
稲・竹などがその代表。
ススキは、この稈から多数の葉が出る。
葉も茎もケイ酸を多く含む。
だから堅くて、葉の縁は鋭い鉤状。
「鉤状」は「こうじょう、かぎなり」と読み、
かぎのように折れ曲がった形のこと。
ススキは夏から秋にかけて、
茎の先端に花をつける。
長さ20cmから30cm程度で、
十数本に分かれた花穂(かすい)。
花穂は穂のような形で咲く花のこと。
そのススキの花穂は、
赤っぽい色。
種子には白い毛が生えていて、
穂全体が白っぽくなる。
この種子は風によって飛ぶ。
富士山と芦ノ湖とススキ。
箱根千石原のすすき野原。
光の中のすすき。
幽霊の正体見たり枯尾花
もともとは、
「化物の正躰見たり枯尾花」
横井也有の俳文集『鶉衣』から。
也有は江戸時代中期の国学者・俳人。
幽霊や化物にたとえられるなんて、
ちょっとかわいそうなくらい、
日本の秋を象徴する植物。
月と薄と萩。
今年の秋を楽しむべし。
猫はそう思う。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)