老子24章「自ら伐むる者は功無く、自ら矜る者は長しからず」
土曜日は『老子』
小川環樹訳注の中公文庫から。
老子は中国の春秋戦国時代の人。
諸子百家のうちの代表的な哲学者。
「道家」は老子を始祖とする思想。
そしてその道家の思想による宗教を、
「道教」という。
ちなみに中国三大宗教は、
儒教・仏教・道教。
歴史家・司馬遷が紀元前100年頃に、
『史記』を著したが、
その中に「老子韓非列伝」があって、
老子のことが記されている。
その「老子」第二十四章は、
有名だ。
企(つまだ)つ者は立たず、
跨(また)ぐ者は行かず。
つま先で立つものは、
立ち尽くすことができない。
大股で歩くものは、
長く歩くことはできない。
自ら見る者は
明らかならず、
自ら是とする者は
彰(あらわ)れず。
自分を見せびらかす者には、
なにもよく見えない。
みずから正しいとする者は、
他人より際立って見えることはない。
自ら伐(ほ)むる者は
功無く、
自ら矜(ほこ)る者は
長(ひさ)しからず。
自分でほめる者は、
何も成功しない。
自分の仕事ばかり、
誇りにする者は、
長続きしない。
つま先立ちをすること、
大股で歩くこと。
つまり、自分を大きく見せること。
誇大広告のような人間。
自分を見せびらかすこと、
自ら正しいとすること、
自分で自分をほめること、
自分の仕事を誇りにすることすら。
老子は「道」の立場から、
余分なものとした。
還暦を過ぎると、
「道」も少しはわかってくる。
しかし、いつになっても、
以て自戒とすべし。
老子は宮澤賢治に通じる。
「雨ニモ負ケズ、
風ニモ負ケズ」
「アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ」
「ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ」
だから老子は、
商人に語りかけている。
ありがたい。
今日も朝日新聞一面から、
『折々のことば』
芸がないようだけれど、
いいものはいい。
編著者の鷲田清一さんと、
どうも波長が合いすぎて、
怖いくらいだ。
今日は天気がいいね。
鶴見俊輔『思い出袋』から、
ある小学校長の言葉。
鶴見は昨年7月20日に没した、
哲学者、評論家。
1922年に生まれた大正人。
米国プラグマティズムの紹介者のひとり。
その鶴見が小学生の時、
校長が朝礼でこう挨拶した。
「今日は天気がいいね。」
それだけ言って壇を降りた。
「代わりに、陰で
相当努力していたのだろう、
児童とすれ違った時は名で呼び、
少し長めの話をした」
「語りかけは個々の誰かにするもので、
不特定多数を相手にすれば
演説になると考えたのだろう」
「高い位置に
昇ったことのある人の話は長いのに、
この人は違った」
この校長先生、
もしかしたら「老子」を読んでいた。
来週月曜日の朝礼の言葉。
あなたはどう考えるか。
陰の努力こそ、
必須だけれど。
横浜商人舎横の新田間川。
雨模様。
明日は秋晴れ。
みなさんも、
充実した週末を。
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
自ら伐むる者は功無く、
自ら矜る者は長しからず。
〈結城義晴〉