師走の考察「企業巨人化と起業減少時代」の将来
Daily商人舎、
公開中のニュースは、二つ。
ジャパン・ニュースは、
福岡シーホークの免税店競争。
サツドラとラオックス。
サツドラはサッポロドラッグストアー、
ラオックスはかつての家電量販店。
北海道から九州福岡まで、
出張ってきて免税店を展開する。
すごい。
社長は、富山浩樹君。
ラオックスは、
中国第1の小売業に買収された。
家電量販店チェーン蘇寧雲商。
こちらも、いまや免税店チェーン。
インバウンド消費は、
売れ筋商品の傾向が、
がらりと変わった。
だから百貨店の商材はもう、
「爆買い」されることはない。
しかしドラッグストアは、
いまだインバウンド購買業態。
Daily商人舎ワールドニュースは、
「米国2017最も働きたい職場」
Best Places to Work 2017。
Fortune「働き甲斐のある企業」とは違う。
インターネットサイトglassdoorの調査。
小売サービス業は、
7位にインナウトバーガー、
27位にHEB、
33位にトレーダー・ジョー、
34位にコストコ・ホールセール。
私の推薦する企業ばかり。
50位にはウェグマンズが滑り込んだ。
Daily商人舎もよろしく。
さて、日経オンライン経営者ブログ。
みなさん、自分の手で執筆していて、
文章はごつごつしているけれど、
率直で、真理を突いている。
とりわけ、鈴木幸一さん。
日本のインターネットの草分けでIIJ会長。
「企業が巨人化し、
起業が減少する時代」
「米国の実情を見ると、
最近の起業数は1970年代以来、
もっとも少なくなって、
起業数よりも多くの企業が、
廃業に追いやられている」
中小企業の起業が、
その国の経済の活力である。
どんな国でも、
中小企業が躍動していなければ、
将来の発展はない。
「IT分野でも、多くの創業者は、
株式公開するまで
企業を育てるのではなく、
さっさと創業した会社を
売却することが目標となっている」
アメリカの小売業界も、
同じ発想である。
古くはマーヴィンズ、
マーシャルズ。
トレーダー・ジョーがそれだし、
マリアーノスも最後はそうなった。
「いまや超巨大企業が君臨して、
創業者の夢も、その枠組みの中で
利益を得ることでしか
なくなってしまったのかもしれない」
英国エコノミスト誌10月24日号。
時価総額に見る世界のトップ10企業。
2006年と2016年の比較。
2006年.
1位エクソンモービル(エネルギー)
2位GE(製造業)
3位ガスプロム(エネルギー)
4位マイクロソフト(IT)
5位シティグループ(金融)
6位バンク・オブ・アメリカ(金融)
7位ロイヤル・ダッチ・シェル(エネルギー)
8位BP(エネルギー)
9位ペトロチャイナ(エネルギー)
10位HSBC(金融)
10年後の2016年。
1位アップル(IT)
2位アルファベット(IT)
3位マイクロソフト(IT)
4位バークシャー・ハザウェイ(金融)
5位エクソンモービル(エネルギー)
6位アマゾン・ドット・コム(IT)
7位フェイスブック(IT)
8位ジョンソン&ジョンソン(ヘルスケア)
9位GE(製造業)
10位チャイナテレコム(通信)
時価総額で比較する限り、
金融業とエネルギー産業が、
IT巨大企業にとってかわられた。
鈴木さんも指摘する。
「巨大企業がますます
巨大になっていく傾向は、
どの産業も変わらない」
米国上位100社のGDPシェア。
1994年は33%、
2013年には46%。
五大銀行の金融資産。
2000年が25%、
現在45%。
エコノミスト誌の分析。
「巨大企業がM&Aによって、
ますます巨人化することは、
競争を押し潰すものだ」
「巨人を緊張させ、
巨人の陰に隠れている企業に
チャンスを与えるために、
世界は健全な競争を必要とする」
同感。
だから巨大企業はいつも緊張し、
健全な競争に参画しなければならない。
自ら企業内起業家を多数、
排出しなければならない。
中小企業も、
自ら新しいイノベーションに、
挑戦しなければいけない。
あくまでも、自ら。
鈴木幸一さんの述懐。
「IIJを創業した頃は、
IT業界の巨人と言えば、
マイクロソフトくらいだった」
「インターネットは技術的に大変な割に、
どこで収益を上げるのかがよく見えない、
そんなことを言っていた彼らも、
3年もたつと、ウィンドウズ95を発売し、
インターネット分野でも
巨人の存在となってしまった」
つまり巨大企業のマイクロソフトも、
インターネット分野で企業内起業した。
「起業家の中には、
事業をマイクロソフトに売却し、
若いうちから富を得て、
優雅な生活を始めた知人も多い」
「巨大な数の顧客を確保し、
巨大なデータを集めるほど、
巨人として優位になる」
それがビッグデータ化に、
拍車をかける。
「起業家の関心が、
巨人に緊張感を与える技術をつくりあげ、
時間をかけて発展させることよりも、
売却に走るようになった」
鈴木さんは、やや、悲しそう。
「しかたのないことかもしれない」
そして自分のIIJの過去を振り返る。
「あらゆる可能性があったはずのIIJ」
「なによりもまず、
様々な挫折の
苦い記憶が浮かんでくる」
「師走は、物事を否応なく
振り返らされる季節のようだ」
苦い挫折の記憶。
そしてIT業界の若者たちは、
「世界の巨人を凝視しながら、
将来を考えるほかないのである」
しかし小売サービス業は
自分の顧客の世界をもつ。
たとえ世界の巨人と闘うとしても、
その自分の商圏内でのことだ。
ITの若者たちよりも、
その分、幸せだとも考えられるし、
逆に小ぢんまりしてしまうともいえる。
中小小売サービス業のなかに、
世界を見渡すほどの人間が、
出てきてほしいものだ。
師走はそんな将来のことも、
考えさえてくれる季節である。
〈結城義晴〉