【日曜版・猫の目博物誌 その30】ツバキ・寒椿・山茶花
猫の目で見る博物誌――。
猫の目は冬の季節をとらえる――。
寒い朝でも 寒椿
きりきりしゃんと
ひらいてる
ながめていると
手をたたき
こっちのキモチも
しゃんとする
寒い朝なら 寒椿
きりきりしゃんと
ひらいてる
庭下駄はいて
そばへ行き
何かを話して
みたりする
〈サトー八チロー「寒椿」
『抒情詩集』(サンリオ出版)より〉
詩や小説など文学作品には、
「寒椿」(かんつばき)が多い。
演歌や童謡には、
「山茶花」が多い。
しかし寒椿と山茶花は、
混同されていることが多い。
さらにツバキが加わってくると、
またわかりにくい。
学名で見てみると、
「椿」はCamellia japonica。
ツバキ科ツバキ属の常緑樹。
花が開くのは、原種が2月~4月。
園芸品種では9月~5月。
花の開き方は、
内側にまとまっている。
花が散るときには、
根元から首が落ちる。
香りは弱い。
寒椿は学名Camellia sasanqua cv。
こちらもツバキ科ツバキ属の常緑樹。
花が咲くのは10月~2月。
花は平に開く。
香りは強い。
そして山茶花は、
学名Camellia sasanqua Thunb。
ツバキ科ツバキ属の常緑樹。
寒椿と山茶花は非常に近い品種。
花が開くのは10月~1月。
こちらも花は平らに開く。
そして花びらが一枚ずつ落ちる。
香りは強い。
こうしてみると、
まず、寒椿と山茶花は、
見分けにくい。
寒椿のほうが花びらの数がちょっと多い。
ツバキと寒椿・山茶花は、
比較的違いが明確だ。
花が咲く時期が違う。
花が閉じているのがツバキ。
開いているのが寒椿と山茶花。
有名な話だが、散るときに、
首からすとんと落ちるのがツバキ。
河東碧梧桐の句。
赤い椿白い椿と落ちにけり
散るときに一枚ずつ、
花弁が落ちるのが、
寒椿と山茶花。
夏目漱石の俳句。
二三片山茶花散りぬ床に上
ここはやはり山茶花だ。
小林一茶にあるのは、こちら。
火のけなき家つんとして寒椿
それでもみんな、
キク類・つつじ目、
ツバキ科・ツバキ属。
仲良く咲いてください。
寒い朝なら、
ツバキ、寒椿、山茶花。
首から落ちるツバキ、
一枚ずつ散る寒椿と山茶花。
猫はツバキ派でした。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)