「新日鉄&住金2012年合併」にクリティカル・マスとグローバル範囲の経済の仮説を見る
立春。
春が立つ。
英語では、
Spring has come.
春が来た。
日本語では、
「春」は、
「来る」けれども、
「立ち」もする。
立春は、
冬至と春分のちょうど真ん中。
「寒さがあけて春に入る日」
春の初日。
昨日は、午後、東京・青山から、池袋へ。
立教大学のキャンパスも受験準備で、
校門のところに白テントが張られていた。
春が立つとともに、受験シーズンがやってくる。
新聞各紙の一面トップは、いずれも、
「新日鉄と住金の合併話」
新日本製鉄と住友金属工業が、
2012年秋に合併するとの発表。
これで世界第2位の鉄鋼メーカーとなる。
現在の第1位は、アルセロール・ミタル。
ヨーロッパのルクセンブルクの企業。
2009年段階で粗鋼生産が7320万トンのシェア6.0%。
第2位から第4位までが中国の企業。
2位 河北鋼鉄集団4020万トン、
3位 宝鋼集団3887万トン、
4位 武漢鋼鉄3034万トン。
そして5位 ポスコが2953万トンで韓国企業。
日本のトップが、新日鉄で、
世界では第6位、2761万トン。
日本の二番手は、
川崎製鉄と日本鋼管の合併会社JFEスチールで、
世界第9位の2621万トン。
住友金属工業は日本三番手で1081万トン。
新日鉄+住金では3842万トンで、
2009年時点では第4位にしかならないが、
2010年には4800万トンで世界2位に躍り出、
さらに合併が実現する2012年には、
ミタルに迫る存在を目指す。
1970年、八幡製鉄と富士製鉄の合併によって、
新日本製鉄が誕生。
私は九州の生まれで、伯母が八幡に住んでいた。
八幡の人々は「鉄は国家なり」で、
高い誇りを持って仕事し、生きていた。
その八幡が富士と合併し、
圧倒的な国内トップの座を築いてきた。
しかし中国、韓国の躍進。
2002年のJFEの誕生や住金・神戸製鋼所の提携など、
状況は大きく変化。
その挙句の、今回の合併。
国際的な競争力という視点から見ると、
妥当な意思決定となる。
私は、クリティカル・マスと範囲の経済を言い続けている。
その上で、仮説を立てている。
「それが小売業という拠点産業にも当てはまるのではないか」。
製鉄プロセスの最初の工程は、
鉄鉱石から銑鉄を取り出すものだが、
この銑鉄をつくる炉を高炉という。
高炉をもつ製鉄所こそ、
本格的な鉄鋼会社といえるが、
現在、日本の高炉をもつ企業は6社に減った。
今回の合併とJFEホールディングスの発足もあって、
それが4社になる。
新日鉄・住金、JFE、神戸製鋼、そして日新製鋼。
これまで日本の製鉄会社は、
技術レベルの高さを世界に誇っていた。
しかし粗鋼の生産量では、第6位、第9位、第23位。
世界的にみると、
これらはニッチの存在となりかけていた。
シェア第1位のマーケット・リーダーはインド資本のヨーロッパ企業、
第2位、3位、4位の対抗馬としてのチャレンジャーは、中国勢。
日本はニッチャー。
必然的に鉄鋼の中の高級品、
すなわちノンコモディティを生産することになる。
しかし、高炉企業は一定レベルの生産量をもたねば、
炉を回す生産性が基準を満たさない。
粗鋼はまさにコモディティの典型で、
この産業に属する限り、
ニッチな存在でい続けることは難しい。
鉄鋼の原料は、鉄鉱石や石炭。
この分野は、資源メジャーの巨大資本によって支配されている。
一方、鋼材の販売先の自動車、造船業界には、
原料の高騰を鋼材価格に反映できない。
いわば板挟み。
こういった世界では、
コモディティ化が進み、寡占化が進行する。
企業は巨大化せざるを得ない。
世界首位のインド資本ミタルが、
2006年に当時第2位だったアルセロールを買収。
中国の鉄鋼メーカーは経済成長を背景に急伸。
範囲の経済の枠がグローバル化され、
その中でクリティカル・マスの追求が起こる。
それが新日鉄と住金の合併の本質だ。
これが小売業・サービス業にも当てはまるのか。
私の関心はそこにある。
さて、そのサービス業の代表は、
日本マクドナルドホールディングス。
2010年12月期の連結決算は、
営業利益が281億円。
前期比16.1%増で、過去最高。
売上高は3237億円で、こちらはマイナス10.6%。
営業利益率8.7%。
全店の1割を超える400店以上の小型不採算店を閉鎖。
結果、1店平均売上高が1億5500万円に伸びた。
8.4%の伸び率。
もちろん、「100円マック」などのコモディティ低価格商品と、
400円を超す米国ご当地ハンバーガーの、
プロダクト・ミックス効果も奏功。
さらにドライブスルー・タイプの郊外店を積極開発した。
コモディティとノンコモディティのミックスは、
鉄鋼産業もフードサービス産業も、
まったく同じ経営の原理であることを示した。
小売流通産業も、
「以って自戒とすべし」である。
<結城義晴>