ニューヨークへ出発する日の「クルーグマンの諦念?」
今日の1月17日。
22年前の今日、
阪神淡路大震災が起こった。
6434人が亡くなった。
そのあと、2004年10月23日に、
新潟県中越地震が起こり、
さらに2011年3月11日の東日本大震災。
そして昨年4月16日、熊本地震。
22年前、私は㈱商業界で、
食品商業編集長だった。
あれから、22年。
こんなにも大きな地震や津波が、
次々に日本列島にやって来るとは、
とても想像できなかった。
ただ、耐えるしかないのだろうか。
多分、耐え続けて、そのたびに、
それを乗り越えるしかないのだろう。
今日は朝から、横浜ベイブリッジ。
大きな橋の真ん中くらいから、
横浜港、みなとみらい、
そして富士山が見えた。
絶景に感動。
バスは動いて、
ランドマークタワーと、
富士の姿が重なった。
美しい。
1時間半で、成田空港。
第2ターミナルで、
チェックイン。
そして出発。
今回は㈱ロピアのニューヨーク研修。
福島道夫さんと浅田圭介さん。
福島さんは取締役営業本部長、
浅田さんは人事総務部チーフ。
本隊は別便で、羽田空港発。
2班に分かれて、期間は10日間。
実り多い研修をして、
ロピアの躍進を支えたいと思う。
JAL006便に乗り込んで、
12時間。
このブログはしばらく、
最新アメリカ報告となる。
もちろん今週金曜日の20日には、
ワシントンDCで大統領就任式。
その現場感覚も、
報告しようと思っている。
日経web刊の経営者ブログ。
IIJ会長の鈴木幸一さん。
「それでもトランプ氏が
大統領に就任する」
「その言動は相変わらずで、
いささか食傷気味になってきた。
選挙中の発言と、
大統領としての考えは違うわけで、
少しは変わってくるのかと思ったのだが、
どうも余計な深読みのようだった」
同感。
「大統領という責務を担う資質が
ないことを危惧するばかりである」
ツイッターで繰り返しているのは、
「米国第一、生産の場を米国に戻し、
雇用を取り戻す」ばかり。
「世界経済に触れることもない。
まして、世界の将来に対する理念や、
世界における米国の役割には、
一切触れようとしない」
初めての記者会見。
「はぐらかしては脅す」
従来のやり口の繰り返し。
CNN記者の質問に対しては、
「君のメディアは、Fakeだ」
「一切の質問に答えようとしないのには、
空いた口がふさがらなかった」
「ツイッターでしかものを語らない
米国の大統領の時代」
「今後、世界はどこに向いていくのか、
いささかなりとも、考えてみたくなる」
「トランプ現象を注意深く見つめることが、
未来を考えるためのひとつの
鍵になるかもしれない」
日本の知性は、
トランプ現象に対して、
冷静だ。
一方、アメリカの頭脳。
ポール・クルーグマン教授が、
ニューヨークタイムズのコラムで発言。
朝日新聞デジタルに掲載。
ニューヨーク市立大学教授で、
2008年にノーベル経済学賞受賞。
「さあ、私たちはいま、
何をしたらよいのだろう?」
クルーグマン博士、
ずいぶん落ち込んでいる。
「さしあたり、このひどいショックに
個人としてどんな態度を取り、
どう振る舞えばいいのかを話したい」
率直だ。
「選挙とは、権力をつかむ人を
決めるものであって、
真実を語る人を決めるものではない」
「トランプ氏の選挙運動は、
かつてないほど欺瞞に満ちていた。
このうそは政治的な代償を払うことなく、
確かに多数の有権者の共感をも呼んだ」
「だからと言って、
うそが真実に変わることはない」
経営者も政治家も、
もちろん学者もジャーナリストも、
嘘は絶対にいけない。
「理知的に正直に考えれば、
だれもが不愉快な現実を
直視しなければならない」
「つまり、トランプ政権は米国と世界に
多大な損害を与えることになる」
「悪影響は、今後何十年、
ことによると何世代も続くだろう」
ずいぶん、深刻な言い回しだ。
第1に「気候変動の行方が懸念される」
パリ協定はおそらく白紙に戻される。
「損害は計り知れない」
第2に「最悪の場合、陰湿な人種差別が
米国全土で標準となる可能性がある」
第3に「市民の自由」も、
心配しなければならない。
そしてトランプ現象の皮肉。
「トランプ氏の政策は、
彼に投票した人々を
救済することにはならないだろう。
それどころか、支持者たちの暮らしは、
かなり悪化すると思われる」
「しかし、このことは徐々に
時間をかけて明らかになる」
だからすぐに、
政権の破たんが訪れるわけではない。
ではアメリカ国民は、
どうしたらいいのか?
「一つの素直な対応は、
沈黙することだろう。
政治に背を向けることだ」
クルーグマン自身、
「あの日以降の大半はニュースを避け、
個人的なことに時間を費やし、
基本的に頭の中を
からっぽにして過ごした」
しかしクルーグマンは、反省する。
「民主主義国の市民の生き方」は、
そうでは決してない。
そして米国人の特性を語る。
「道を誤ることもあるかもしれないが
必ず元に戻る道を見つけ、
そして必ず最後は正義が勝つ」
そう考えるのが、
アメリカンスピリッツである。
しかしそれでも、
自信喪失気味に自戒する。
「おそらく、米国は特別な国ではなく、
一時代は築いたものの、
いまや強権者に支配される
堕落した国へと転がり落ちている
途上にあるのかもしれない」
あのクルーグマンが、
行ったり来たりの論説。
最後に気を取り戻す。
「だが、免れようがないと言って、
この状況を受け入れるつもりはない。
受け入れたら、予言の自己成就に
なってしまうだろう」
「米国があるべき姿へと戻るのは、
だれもが予想するより、
長く、険しい道のりだろうし、
うまくいかないかもしれない」
「でも、やってみるより
ほかに、ない」
このアメリカ随一の頭脳の反応は、
次々に起こる大地震への、
日本人の諦念のごとくに聞こえてしまう。
その日本人らしさを意識しつつ、
アメリカ・ニューヨークの空気を、
吸いながら考えることとしよう。
〈結城義晴〉