トランプ旋風・円高の波とロピアNY視察研修初日
東京成田国際空港から、
11時間50分のフライト。
着いた途端、
ウォールストリート・ジャーナル。
ドナルド・トランプ次期大統領
インタビュー記事。
「われわれの通貨は、
強すぎる」
アメリカの歴代大統領は、
「強いドルは国益にプラス」が、
基本の考え方だった。
だから直接的にツイッターなどで、
あるいはインタビューなどで、
「ドル高」の誘導やドル安の「牽制」など、
絶対にしなかった。
ドルは昨年11月8日の大統領選後、
急騰した。
トランプ効果などと言われた。
しかし、インタビューでは、
まずこのドル高に対して、
中国をターゲットにした発言。
「米国企業は中国企業と競争できない。
ドルが強すぎるからで、
それが我々を傷つけている」
これに為替市場が反応した。
18日の外国為替市場。
円相場は1ドル112円台半ば。
一方、イギリスのポンド相場も、
1ポンド1.19ドル台で、
約3カ月ぶりの安値だった。
しかしそれが1.24ドル台前半。
前日比3%の上昇。
この上昇率は、
1998年以降で最大。
トランプのターゲットは、
企業レベルから国家レベルに、
エスカレートしてきた。
日経オンライン経営者ブログ。
丹羽宇一郎さん。
伊藤忠前会長で元中国大使。
「トランプ流貿易戦争」
「日本や中国などの企業と
米政府との距離感が
取り沙汰されていますが、
私にはこれが遠くない将来に
トランプ政権の致命傷に
なりかねないように映ります」
最近のツイッターでの言動を分析。
「彼が本気で取り組みたいのは、
『米中貿易戦争』なのか」
元中国大使だからこそ、
強く感じるのだろう。
「米国の貿易赤字の大きな国を
スケープゴートにして、
彼一流の『口撃』をしかけるわけです」
「あいつらの国でつくられた製品が
米国に入って米国内の雇用が奪われる」
「あいつらが不民として
やってくるせいで
米国民の雇用が奪われる」
こんな論法。
トランプの想定する「戦争の舞台は
自動車産業のような第2次産業。
1970年代以降の
日米貿易摩擦の再現のようです」
老婆心ながら、と断って言う。
「アナクロニズムの古くさい戦争」
「しかし時代は変わりました。
米国の産業で強く、しかも伸ばすべきは、
製造業よりも人工知能やIoT、
ネット・通信や宇宙産業のような
先端技術の世界のはずです」
「戦争に例えるなら、
鉄砲や兵士、戦車の数を数えて
戦争をしかけるようなものです」
そしてごく初歩的な経済学で考える。
「中国の安価な製品や、
メキシコからの移民が
流入しなくなって一番困るのは、
米国人のはずです。
安価な製品や労働力がなくなれば、
おのずと米国のコスト構造は
急激に悪化します。
トランプの率いる米国に
待ち受けているのは
物価高です」
この物価高が影響しないのは、
アメリカの富裕層だ。
「結果としてトランプ氏を支持してきた
困窮する白人の層はますます貧しくなり、
雇用が生まれるどころか
所得の格差は、
広がる一方です」
「トランプ氏がこのまま
政策を実現していったとしても、
1年後にはその負の側面が
ブーメランのように戻ってきて
政権は大打撃を被る」
丹羽さんの警告。
聞き入れられる気配はない。
さて、ニューヨークに到着した、
総勢47名の2017ロピア第1班。
これから3泊5日、
ニューヨーク視察が始まる。
まず空港近くのクイーンズ郊外エリア。
ウォルマート・スーパーセンターへ。
アメリカに着いたらまずは、
ウォルマート。
少し古い店だが
朝の11時だというのに、
お客がよく入っている。
ネットで注文し、店頭で受け取る。
ピックアップのコーナー。
クレート陳列の青果売場。
古い店でも売場の管理はよい。
店舗左翼のシーゾナルコーナーでは、
バレンタインのプロモーション。
店舗右翼のグロサリー部門でも、
売場はバレンタイン一色に変貌。
圧倒的なスペースに、
チョコレートやギフト商品が並ぶ。
店舗奥の主通路には、
「アクションアレー」と呼ばれる島陳列。
高額テレビから低額テレビへと、
順番に並べられ、
しかもどれもが驚くほど安い。
この巧みな販売作戦に乗せられて、
サムソンのスマートテレビが買われた。
顧客はカートに入れて購入している。
つまり衝動買い。
ウォルマート、好調だ。
さらに東のクイーンズ郊外へ向かって、
スチュー・レオナード。
その最新店。
昨年1月にオープンした5号店。
ディズニーランドのようなスパーマーケット。
明るくカジュアルな店づくり。
ゴンドラ上部では、
動物や魚が歌を歌ったり、
踊ったりして、お客を楽しませる。
ミート売場では
明日の調理試食大会のために、
ドライエージビーフを購入。
4万円なり。
持っているのは浅田圭介さん。
人事総務部チーフで事務局のひとり。
福島道夫さんは
量り売りのピスタチオを購入。
取締役営業本部長。
昼食は、
デリバーのスープとミート惣菜。
新店のスチュー・レオナード。
私は古い店のほうが好きだ。
雨脚が強くなってきた。
そんななか、バスは疾走し、
トレーダー・ジョーへ。
2層の商業施設で、
ステープルズとマイケルズが入居。
前者はオフィスサプライチェーン1位、
後者はホビー・クラフト専門店チェーン。
商業施設の核店舗が
トレーダー・ジョー。
ユニークな店づくり、
ユニークなプライベートブランドで、
ユニークな企業風土をつくっている。
レジは銀行方式を一部採用。
この後、長蛇の列ができる。
雨の中、
バックヤードでインタビュー。
二人のクルーメンバーが、
対応してくれた。
トレーダー・ジョーのポリシーを、
誇らしげに語る。
プレゼントを手渡して、
女性陣と記念のショット。
やっと笑顔がこぼれたニューヨーカー。
次に訪れたのが、
都市型パワーセンター。
ディスカウント業態の店舗が集積する。
その核店舗はコストコ。
エレベーターに貼られた
コストコの営業時間のサイン。
日曜日も午後7時には店を閉める。
しかしコストコ・コムは24時間対応。
この表記、実に上手い。
そのコストコの店舗は、
地下1階の全フロアで展開。
入口のプロモーション売場では
早くも女性用水着を販売。
早仕掛け・早仕舞い・際の勝負。
肉のロピアらしく、
肉売場の視察は念入りで、
「この商品はうちが勝っている」と、
自信ものぞかせる。
その奥に、デアリー(乳製品)売場。
この店は珍しく変形のレイアウト。
さらにその奥に、
グロサリーの売場。
コストコはこのニューヨーク市で、
第2番目のシェア。
将来の日本を予見させてくれる。
同じショッピングセンターの2階には、
アルディ。
徹底したローコストオペレーション。
段ボールカット陳列したケースが、
そのまま並べられる。
売場はその段ボールで、
うまくカラーリングされている。
デアリー売場のサイン、
「信じられないほどの節約」
生鮮食品の鮮度も上がってきて、
良いものが安い。
オーガニックが強化されている。
アメリカの大トレンドは、
アルディにまで押し寄せた。
アルディも見切り販売を始めた。
これは大きな変化だ。
レジはスピーディ。
スタッフは座ったままキャッシングする。
パワーセンターのアルディは、
全体の集客力に助けられて、
繁盛する。
売れなくても儲かるチェーンストアが、
売れて儲かるチェーンストアへ。
恐ろしい。
センチュリー21。
オフプライスのデパートメントストア。
現在、10店舗だが、
ニューヨーク近辺で大人気。
婦人服、紳士服、子ども服、靴、
香水、コスメ、バッグ、雑貨などの
ブランド商品をディスカウント販売する。
オフプライス旋風は、
アメリカの非食品領域を、
荒らし続けている。
日が暮れて、雨脚が強まってきた。
土砂降りに近い中、
ブルックリンへ。
ホールフーズ環境対策店。
屋上の菜園ハウスが、
照明されて、印象的。
店舗導入部は、
オーガニックの色とりどりの果物。
壁面のカットフルーツ売場。
ミートの対面売場。
左端にドライエージビーフの熟成庫。
ファインカットと書かれた、
カッティングルームが通路から見える。
店舗右翼のフードサービス部門。
サラダ、デリ、スープ、オリーブ、
さらにデザートのバーが並ぶ。
メニューは旬の野菜が中心の、
ニューヨークサラダコーナー。
イオンスタイル碑文谷で導入された。
インストアベーカリーの売場。
クッキーやマフィン、ケーキまで揃う。
アメフトのプレーフィールドのケーキ。
ホールフーズのセンス全開だ。
2階はビールバーとカフェ。
外は雨だが、そんな日にもカスタマーが、
購入した商品を食べながら、飲みながら、
くつろいでいる。
屋上の菜園ハウス。
ここで採取された野菜は
1階の店舗で販売される。
それが「ゴッサムグリーン」
デリバリーと書かれた、
インスタカートのロッカー。
買物代行業が隆盛。
この店のオープン時に導入され、
目立つ場所に移動された。
雨の中の初日の視察を終え、
ホテルにチェックイン。
そしてすぐに、徒歩で夕食会場の
ウルフギャングへ。
ニューヨークステーキの名門。
シーザーサラダとカプレーゼ。
トマトとモッツァレラのサラダ。
厚切りで美味。
シーフード・カクテル。
カキ、シュリンプ、ロブスター。
これだけでおなかがいっぱいになる。
ワインはマグナムボトル。
デキャンタに分けて、
おいしく開かせる。
メインはポーターハウスステーキ。
この量で7名分。
フィレとサーロインを味わう。
うれしそうに頬張る。
一番おいしいのは
実は骨についた部分。
現地コーディネーターの藤森正博さんと
浅田さんもガブリ。
藤森さんはニューヨーク在住。
ニューヨークの経済や消費の変化を、
わかりやすく解説してくれる。
大満足の夕食会だった。
トランプ旋風が吹き荒れるニューヨーク。
始まったばかりのロピア研修。
この研修、
食べるものには、
贅沢の粋が凝らされる。
そこには金に糸目をつけず、
手を抜かない。
若いチーフたち、店長たちが、
この研修によって触発され、
どんどん変わっていく。
(つづきます)
〈結城義晴〉