「アホか、おまえは!」とクロネコヤマトの「猫への恩返し」
3月2日。明日は桃の節句。
朝日新聞『折々のことば』
その682、鷲田清一編著。
アホか、おまえは!
(人類学の研究会で)
1970年代の関西の人類学者たちの集い。
国立民族学博物館を交点としていた。
そこでは、こんな
連帯(?)の罵声が飛び交った。
アホか、おまえは!!
「異なる地域の生活文化を知るためなら
何でも食い、何でも験(ため)す、
若い研究者たちの容赦なき相互批判」
なかなかいい。
「誰もが“とりすました学問”など
無用と息巻いていた。
自分をこれまで象(かたど)ってきた文化の
頑迷な基盤を必死で切開し、
揺さぶろうとしていた」
仕事の場でも、
こういった「連帯の罵声」
いいかもしれない。
ただし、それが、
パワハラにならないこと。
ただし、それが、
相互批判であること。
かまやつひろしが、
死んだ。
ムッシュかまやつ。
膵臓癌、78歳。
父親はジャズミュージシャン、
ティーブ釜萢。
従妹は森山良子。
ザ・スパイダースは、
グループサウンズの中で、
図抜けたものをもっていた。
その垢ぬけたセンスは、
ムッシュの影響大であった。
吉田拓郎作の「我が良き友よ」
「これオレが歌うの?」
かまやつは困惑を隠せなかった。
朝日新聞「代表曲の誕生秘話」にある。
幼い頃から洋楽浸け。
カントリーやロックを追いかけた。
それが演歌や歌謡曲に近い歌を、
なぜ、歌うのか。
「広島出身の拓郎は、
大学の応援団の先輩を
モデルにしたらしい。
だけどぼくは東京の真ん中で生まれ育ち、
バンカラや上下関係なんて縁がない。
あっさり歌うしかなかった」
しかし、ふたをあけてみれば、
70万枚のセールス。
「自分で売れると思って
売れたためしがない」
これがいい。
そんなものだ。
「拓郎には、
プロデュース能力があったんだね」
拓郎とは言い合えたに違いない。
「アホか、おまえは!」
「美空ひばりさんからは
『感情移入がないからよかったのよ』
って、目からうろこ、でしたね」
かまやつひろし、
ご冥福を祈ろう。
合掌。
今日の私は、
これまた一日中、
横浜商人舎オフィス。
原稿手直しと、見出し付け。
そして校正なども。
月刊商人舎。
少しずつ、出来上がっていく。
「売れると思ってつくってはいない。
売れるよりも、良いものを」
私の主義は変わらない。
さて昨日に続いて、
商人舎からのお知らせ。
米国研修ベーシックコース。
毎年5月に開催される定評のコース。
出発は5月16日にラスベガスへ。
帰国は22日、5泊7日。
毎朝、セミナーで、
これでもかと講義。
そして飛び切りの店を、
しかも網羅的に視察、インタビュー。
視察をし、調査をする。
試食をし、コミュニケーションをする。
2日目の晩は大調理・試食会。
プレゼンテーションとテイスティング。
レストランを借り切り。
3日目の朝には理解度テスト。
このテストで何よりも、
理解が進む。
その後、チームごとに、
調査、分析、ディスカッション。
ランチはシェイクシャック・バーガー。
4日目の朝は研究発表会。
最後に表彰式。
これ以上ないという充実の内容。
全員が、自ら変わります。
それも自分らしく、変わる。
⇒ご参加ください。
ご派遣ください。
ご検討ください。
さて、クロネコヤマト。
毎日新聞の巻頭コラム
「余禄」
「それはニューヨークの交差点で
突然ひらめいた」
文学的だ。
「周りに米配送会社UPSの車が
4台見えたのだ。
1ブロックに1台、日本でも宅配便は
成功すると確信した」
ヤマト運輸創業者・小倉昌男の回想。
41年前の荷受け初日の取扱個数、
わずか11個で始まった宅急便。
今や1日500万個を超え、急増中。
しかし、ドライバーの人手不足、
長時間労働。
もはや限界。
「労働組合の要求を受け、
ついにヤマト運輸は
荷受量を抑える検討に入った」
日経新聞「ニュースこう読む」
編集委員の田中陽さん。
「日なたぼっこが好きと思えば、
狭くて暗い部屋も好き。
集会を開き、モミモミマッサージをする。
外出先から変なモノをくわえて帰ってきて
お土産のように飼い主にあげるような
しぐさをすることもある」
「猫を飼っている人なら
変わった習性を
目にすることはあるはずだ」
なぜか文学的。
「ヤマト運輸も、
少し変わった習性がある。
そして、その習性こそがヤマト運輸を
最強の宅配便事業者へと
押し上げたといってもいい」
「お金を払ってモノを送る荷主よりも、
お金を払わない受け取り手の事情を
より考えるという習性だ」
田中さんは「生活者目線」と表現する。
「時間帯別の配達指定、
再配達の要望も直接ドライバーに
電話をかけることもできる。
どちらもお金を払っていない
受け取り側のサービスだ」
現会長の木川真さんの言葉。
「お金を基点に事業を組み立てると
独りよがりな取り組みに
なりがちになるのですよ」
そして小倉昌男さんの「私の履歴書」
「サービスが先・利益は後」
そのヤマト運輸が荷受量を抑制する。
しかし「ネット上では、
理解を示す内容の言葉が飛び交った」
田中さんは、述懐する。
「もっと先鋭的な反対意見が多いと
思っていたので意外な反応だった」
そして考察。
「これまでのヤマトのきめ細かな
サービスのありがたみを感じながらも、
『(無料で)そこまでしなくても』と
思っていたのではないだろうか」
同感。
関西人ならば、
「アホか、おまえは!」
というくらいのサービスだ。
「利用者がヤマトの窮状に
理解を示したことは、同社にとって
サービスの見直しの好機だろう」
そして、この文章の最後がいい。
「そろそろ利用者側が
『猫への恩返し』をしても
いい時期にきているのかもしれない」
ここまでやるか、のサービス。
これはカスタマーサティスファクション。
しかし、働く人たちの満足も。
エンプロイーサティスファクション。
顧客満足が際立っていれば、
顧客の方から許してくれる。
「そこまでしなくてもいいよ」
そのこと自体がまた、
働く人たちの満足となる。
はなから、楽をしたいのではない。
顧客の満足が、自分の満足になる。
そうすれば、結果として、
顧客が「猫への恩返し」をしてくれる。
「猫への恩返し」
私にはよくわかる。
〈結城義晴〉