【日曜版・猫の目博物誌 その40】ツツジ
猫の目で見る博物誌――。
猫の目は季節を読み取る。
梅、桃、桜、そして新緑。
その新緑の中のツツジ。
ツツジは漢字で「躑躅」
英語で、Azalea。
フランス語ではazalée。
世界に600種以上、
日本には40数種がある。
キク類asterids、
ツツジ目Ericales、
ツツジ科Ericaceae、
ツツジ属Rhododendron。
その植物の総称。「総称」という時の博物、
やたらに種類が多い。
混同しやすい仲間、つまり種も多い。
ツツジ属の植物は、
低木が一般的だが、
高木もある。
葉は常緑、ただし落葉性のものもある。
低木、高木、
常緑、落葉性。
種類が多くて、
新しい品種を開発するから、
反対の性格を持ってくる。
ただし葉は「互生」
葉のつきかたには4種類ある。
第1が「互生」(ごせい)
第2が「対生」(たいせい)
第3が「輪生」(りんせい)
そして第4に「コクサギ型」
互生は、茎の節に、
1枚ずつ互い違いにつくこと。
ツツシ゛はこれだ。
対生は、茎の節に、
2枚の葉が向かい合ってつくこと。
同じ面に、2列に並ぶと、
「二列対生」という。
そして輪生は、茎の節に、
3枚以上の葉がつくこと。
コクサギ型は珍しいが、
左右に2枚ずつの葉がつくこと。
花は、特徴的だ。
漏斗(ろうと、じょうご)型で、
先端が5つに割れて、五裂している。
ツツジは花弁(花びら)が、
合着して1枚となる合弁花(ごうべんか)。
そのじょうご型の花を数個、
枝の先につける。
花の中心にあって、
一番長く伸びているのが雌蕊(めしべ)。
その周りの短いのが雄蕊(おしべ)。
雄蕊は5~10本つく。
ツツジは虫媒花。
だからツツジの花の内側には、
上方の花びらにだけ斑点がある。
この斑点を「蜜標」(ガイドマーク)と呼ぶ。
昆虫に蜜の在り処を教えて、
思惑どおりに花粉を運んでもらう。
つまり昆虫をガイドするためのもの。
ツツジは4月、5月の春先に花を咲かせる。
ツツジ属(Rhododendron)は、
大きく5つに分類される。
⑴ツツジ亜属
⑵ヒカゲツツジ亜属
⑶無鱗片シャクナゲ亜属
⑷セイシカ亜属
⑸エゾツツジ亜属
シャクナゲは、
この⑶無鱗片シャクナゲ亜属。
サツキは、
⑴ツツジ亜属のヤマツツジ節の花。
それ以外をほとんどすべて、
ツツジと呼ぶ、と考えていいだろう。
日本で一般的なのが、クルメツツジ。
サタツツジとヤマツツジ、
それにミヤマキリシマなどが、
かけ合わされて生まれた。
満開のときは圧巻。
ヒラドツツジは大型のツツジで、
街路樹としても植栽されている。
これはケラマツツジやモチツツジ、
キシツツジなどを親としている。
ツツジとサツキ、シャクナゲ。
見分け方。
開花時期はツツジが3月から5月。
サツキは4月から7月。
そこで江戸時代から、
「春咲きを躑躅、初夏咲きを皐月」といわれた。
サツキは皐月からきた。
シャクナゲは4月から6月に開花する。
ツツジは一般的に落葉樹。
サツキとシャクナゲは常緑樹。
ツツジは花や幹に照りがない。
それに毛が密集している。
一つの蕾に3輪の花が基本。
サツキは葉の表面に照りがあり、
花はツツジよりも肉厚。
一つの蕾に1輪から3輪咲く。
シャクナゲの花は、
5から10輪以上が車状に咲く。
葉は、表面に光沢があり、
丸みを帯びて細長い。
全国にツツジの名所は多い。
その中でも、
「一目百万本」の奈良県御所市葛城山。
圧巻のヤマツツジ(御所市フォトギャラリーより)。
5月上旬の今頃から蕾が膨らみ始める。
2分咲き、3分咲き、5分咲きと、
日毎に少しずつ開いていく。
5月中旬頃が「見頃」。
その後、満開を迎え、
5月下旬にシーズンを終える。
最後に松尾芭蕉。
躑躅生けてその陰に干鱈割く女
「干鱈」は「ひだら」、干した鱈。
ちょっと立ち寄った茶店。
ツツジが生けてある。
そのツツジの陰で、一人の女が、
安い干し鱈を割いている。
見たまんまの句だが、
ツツジと干し鱈。
庶民の生活が描かれて、
良い句だ。
桜の次のツツジ。
季節は移っていきます。
そのツツジは「春咲き」
次がサツキの「初夏咲き」
生きていたら一度、
葛城山に行ってみたかったなあ。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)