ダラス到着/Walmart・Kroger・HEB・Aldiの商売と哲学
昨日の昼前、
成田空港を飛び立って、
真っ白な雲の上。
樺太、アラスカ、
そして北米大陸の上を飛んでいるときは、
ずっと、真っ黒の夜。
初めてのことだったが、
機中では、食事以外の時間、
パソコンに向かって、
原稿を書き続けた。
いつもは、食事をしたら、
シャンパンやワインを楽しみ、
映画を見る。
その合間にちょっとだけ、
原稿書きをする。
しかし、今回は、
ぶっ続けで書き続けた。
疲れた。
そして11時間ほどのフライトで、
夜明けがやってきた。
アメリカ合衆国の南部。
テキサス州に到着するころは、
厚い雲の上に朝日が見えた。
そして雲の下に出ると、
ダラス・フォートワース空港に近づく。
厚い雲の下は、
緑の大地。
到着しました。
着いてみると、
とてもうれしいニュース。
2017年のノーベル文学賞、
カズオ・イシグロが受賞。
日系イギリス人作家、62歳。
1954年、長崎生まれ。
私より2つ下。
5歳のときに、両親とイギリスにわたって、
ケント大学では英文学と哲学を専攻。
イーストアングリア大学院では、
創作学科に学んだ。
代表作は『日の名残り』
1989年の小説。
これでイギリスのブッカー賞を受賞。
日本でいえば芥川賞か。
執事が主人公のこの作品は、
アンソニー・ホプキンス主演で、
映画になった。
私も観た。
それにしても日本人のノーベル文学賞は、
1964年の川端康成、
1994年の大江健三郎。
イシグロは大作家2人に次いで3人目。
おめでたい。
しかし、村上春樹は、
またしてもノベール文学賞を逸した。
イギリスのブックメーカー「ラドブロークス」
今夏の文学賞ランキングで、
村上は第2位だった。
第1位はケニアの男性作家、
グギ・ワ・ジオンゴ。
しかし、どちらも受賞できず、
イシグロになった。
昨年は、記憶も鮮明だが、
ボブ・ディランが受賞。
村上春樹は、
どうもノーベル賞には、
縁がないのかもしれない。
本人が一番悔しいだろう。
ダラスに着いて、
おめでたいニュース。
まあ、喜んでおこう。
私たちは、すぐに、
リムジンバスに乗って、
ウォルマートへ。
スーパーセンターの右側入口には、
「Market」の表示、すなわち「市場」。
すなわち「食品市場」。
こちら側は食品スーパーマーケット。
ハロウィンの演出の青果平台。
ハロウィンのカボチャの陳列。
店舗左サイドには、
特設コーナーがあって、
ハロウィン全面展開。
レジ前の島陳列にも、
ハロウィンの仮装グッズ。
食品売場側の主通路にも、
ハロウィングッズの島陳列。
キッズ衣料品売場にも、
ハロウィンTシャツ。
つまり直前のプロモーションには、
全店挙げての提案をする。
しかしウォルマートの特徴は、
「早仕掛け・際の勝負」
だからハロウィンの先にも目を向ける。
つまり11月第4木曜日の感謝祭。
サンクスギビングデーには、
ターキーを食べる。
だからそのターキー用ポットを、
島陳列で展開。
そしてさらにさらに、
クリスマスグッズも、
「早仕掛け」。
これが盛大な陳列。
ただし早仕掛けは店の一部で、
それでも極めて印象的に。
直前のプロモーションは、
店舗全体で展開する。
それによって、見事にバランスが取れる。
それがウォルマートの仕掛け方。
オーガニック牛乳のPB。
パッケージがリニューアルされて、
センスアップされた。
ウォルマートに対抗するのは、
クローガー。
非食品強化型のマーケットプレース。
入口は常に、素晴らしい花売場。
顧客を迎える姿勢にあふれている。
高い天井、採光システムのスケルトン。
平台を多用した市場風の青果部門が、
クローガーの特徴。
花、青果、そしてデリカテッセン。
イートインコーナーの一角で、
店長Interview。
ティム・プレス店長。
クローガーの企業政策と、
この店の競争環境を、
わかりやすい英語で丁寧に語ってくれた。
イオンリテールの団員からの質問も、
的を得ている。
特に「クリック・リスト」に質問が集中。
クローガーのオンライン販売の戦略。
それは宅配しないこと。
オンラインで注文を受けて、
店内でピッキングして、
ドライブスルー方式で受け渡しする。
もちろんアマゾン対策。
宅配に関しては現在、
ウーバーと交渉中。
この事業は決定的に、
コストとの闘いだ。
だからそこには慎重に、
そしてシビアに対応する。
プレス店長を囲んで全員写真。
私はもう何度も会っているので、
顔なじみ。
ありがたい。
そしてテキサスの雄HEB。
その非食品強化型フォーマット。
H・E・B plus!
ウォルマート対抗型のフォーマットだが、
そのカギを握るのは生鮮とデリ。
ハロウィンプロモーションは、
低い位置で展開。
それがユニークだ。
こちらは人形の群像。
そしてデモンストレーションコーナー。
店舗奥主通路には、
グルテンフリー商品を集めたコーナー。
そして牛乳はなんと、
1ガロン1ドル15セント。
1リットルにすると30円。
店舗左サイドには、
ハロウィンの大デモンストレーション。
ウォルマートとは違って、
ハロウィンに一点集中。
エンターテインメントコーナーも、
ハロウィンのディスプレー。
出口にもハロウィンプレゼンテーション。
ウォルマートはウォルマート、
HEBはHEBだ!
そんな意志が感じられる。
全米で唯一、
ウォルマートとのガチンコ勝負を、
勝ち抜く企業。
それがテキサスのHEBだ。
そのHEBのアップスケール店舗。
セントラルマーケット。
青果のトップにある氷の壁。
アイス・ウォール。
そしてハーブの大型平台。
リンゴ売場は圧巻。
ワンウェイコントロールの店舗で、
青果からつながるこの売場。
左が鮮魚の対面コーナー、
右が精肉の対面コーナー。
それが向かい合っている。
顧客はここにやって来て、
メニューを決定する。
そのあとはワインコーナー。
このアイルはすべてロゼ。
圧巻。
チーズ売場の島陳列。
ベーカリーからオリーブバーへ。
そして惣菜、デリ、
イートインコーナーへ。
イートインの広大なスペースがあるから、
惣菜がよく売れる。
当たり前のことだが、
その惣菜がおいしくて、
リピート客が増えていかねばならない。
セントラルマーケットは、
それを成し遂げて、大人気だ。
同じショッピングセンターに、
コンテナストア。
「包装する」がコンセプト。
この新しいフォーマットは、
ユニークさにおいて抜きんでている。
つまり模倣が困難なビジネスモデル。
レジ付近も解放的なつくりになっている。
一方、アメリカ随一の廉売店。
ドイツからやってきた、
アルディ。
簡素な店内だが、
クレンリネスが行き届いて、
そのうえカラフルで楽しい。
牛乳は1ガロン1.15ドル。
HEBプラスと同じ。
近隣で競争しているから。
生鮮食品の力を付けた。
ドイツナンバー1企業の実力は、
ヨーロッパやアメリカで発揮されている。
ちょうど売場変更作業をしていた。
たった1人、そしてレジに2人。
3人で店を回している。
アルディもハロウィン販促を展開。
しかし申し訳程度。
これはこれでいい。
そしてダラスに来るといつも、
クイック・トリップ。
コンビニのローカルチェーン。
若人たちが写真をねだってきた。
店内に入ると、楕円形のレジが、
入口を向いていて、
店員がアイコンタクトする。
このレジの設計がいい。
日本のコンビニは、ほとんどが、
レジは横向き。
アイコンタクトなし。
最新のセブン-イレブンの実験店は、
レジが出入り口と正対している。
このクイック・トリップを参考にしたか。
レジにずらりと顧客が並んだら、
すかさずレジ要員を増やして対応。
アルディとは正反対。
これもこの店のポジショニングだ。
そして最後の最後に、
再びウォルマート。
ラスベガスの乱射事件に対して、
星条旗の半旗で哀悼の意を表明する。
もちろん入口はハロウィン。
ウォルマートは徹底している。
主通路には島陳列。
そして牛乳は、
HEB、アルディに合わせて、
1ドル15セント。
1リットル30円。
これは譲れない。
クリスマスショップがオープンしている。
ホームセンター用品売場を、
クリスマス一色にして、
3カ月前の早仕掛け。
ただし、「早仕掛け」は1点集中。
店全体は直前のハロウィン対応。
これ、重要なポイントだ。
そして銃売場。
ラスベガス事件に哀悼の意を表しながら、
銃の売場は淡々と運営する。
ウォルマートのクソリアリズム。
そしてまさにウォルマートは、
アメリカの縮図であることを示している。
アメリカに何を学ぶのか。
商売のネタだけではいけない。
どうすれば売れるか、
どうすれば儲かるかだけでは、
アメリカに来る意味がない。
それにどうすれば売れるかだけを、
考え、追究すると、
絶対に売れない。
むしろカズオ・イシグロのように、
無欲なくらいでなければいけない。
本当は、企業の哲学を読み取り、
自分はどうするかの意志決定をする。
そのためにアメリカを学ぶ。
そして意志決定には、
riskが伴わねばならぬ。
ウォルマートの銃器売場にも、
大きなリスクが潜んでいるのだ。
(つづきます)
〈結城義晴〉