サンフランシスコ15店駆け巡りで見えた「新しい海の古い船」
サンフランシスコの山火事。
遠くの山々の上層部を、
茶色の空気が覆っている。
そして焼け焦げ臭い。
記録的な火災だ。
ナパやソノマの山火事は、
ワインづくりに大打撃を与えた。
そんな中、申し訳ないけれど、
私たちは、元気に研修。
15店舗を駆け巡った。
まずサンフランシスコ市街の対岸へ。
アラメダ島。
ライフスタイルセンター。
新しいショッピングセンター。
ここで浅野秀二先生に遭遇。
このアラメダの住人。
トレーダー・ジョー。
ここでインタビュー。
メイトのレロイさん。
活発な質問が出て、
実に有益だった。
立話だったが、レロイさんは、
30分以上も丁寧に対応してくれた。
通訳は藤森正博さん。
固い握手。
こういった時、私は、
かなりしっかり握る。
そして全員写真。
店は相変わらず充実。
トップエンドは、
トリプルジンジャー。
そして同社では初めて見たが、
12品目以下のエクスプレスレーンと、
バゲッジオンリーのレーン。
バスケットだけのレーンは、
アメリカでは実にいいアイデアだ。
隣のセーフウェイ。
ハワイのホノルル店と並んで、
この店は全米有数のセーフウェイ店舗。
花売場は見事。
オーガニック中心の青果部門もいい。
レジにはバルーン。
そしてコールズ。
ジュニアデパートと自称するが、
私はノーマルとディスカウントの、
両デパートメントストアの中間だと思う。
集中レジ方式が百貨店では珍しい。
その向かいにTJMax。
オフプライスストアのトップ企業。
そしてコールズから、
完璧に顧客を奪っている。
いわば百貨店の天敵。
DAISO。
1.5ドルショップで、
こちらのダラーストアの中で、
異彩を放つポジショニング。
日本で100円で売っている商品を、
1.5ドルで販売する。
それでもよく売れている。
アラメダのターゲット。
ウォルマートの同業態ライバルで、
ちょっと低迷していたが、
随分回復してきた。
入口にはハロウィーンのお知らせ。
そしてレディスのマネキン。
やや大柄の女性のマネキン。
入口の対角線のところに、
プロモーションコーナー。
ハロウィーンプレゼンテーション。
「かぶってみました!」
似合う、ひどく。
食品はついで買い用の売場。
ドラッグはCVSヘルスに売却して、
CVSファーマシーが入っている。
そしてこれ。
主通路上の島陳列。
ウォルマートのアクションアレーを、
ターゲット流にアレンジした優れモノ。
多分、定着すると思う。
それからバークレー・ギルマンの、
ホールフーズ。
入口左手にアレグロコーヒー。
直営のコーヒー工場と、
バリスタと喫茶室。
右手が自慢の青果部門。
突き当りがスペシャルティ部門で、
チーズ売場。
その隣はプレミアムクラフトビール売場。
さらにバルク売場。
壁面とバルクのカラーコントロールが、
絶妙。
奥主通路の角にはミートの対面売場。
そしてシーフードの対面売場。
店舗左翼はサービスデリとセルフデリ。
エクスプレスレーンに顧客が並ぶ。
ハロウィーンプレゼンテーションも、
とてもお洒落。
結局、この小型の店は、
ワンウェイコントロールとなっている。
ただし青果とチーズの間に、
アマゾンのロッカーがセットされた。
同社がアマゾンの傘下にあることを、
思い知らされる。
隣にダラーツリー。
ファミリーダラーを吸収して、
ダラーゼネラルに次いで、
Dollar Store業界第2位。
店は汚い。
しかし2人で500坪を管理して、
効率は非常によろしい。
Dollar Store、おそるべし。
REI。
リクリエーショナル・エクイップメント。
アウトドア用品のチェーン。
圧倒的なコンサルティングサービス。
店員のモチベーションは高く、
働きがいのある企業ランキングの常連。
そしてバークレーボウル。
サンフランシスコのとんがり店舗。
世界一の青果部門を持つ。
店の売上げの30%が青果部門。
導入はオーガニック青果。
そして圧巻のくだもの売場。
選別値入れ方式で、
SKUを増やして買いやすくする。
そのうえ、マージンミックスで、
丁寧に少しずつ利益を稼ぐ。
柑橘類もこの長い陳列線。
バナナも珍しい品種が揃う。
この時期にはこの巨大なカボチャ。
鮮魚部門も鮮度抜群。
手づくり惣菜は、
しっかり固定客をつかんでいる。
チェッカーは、青果の値段を、
全部覚えている。
それがまたこの店の模倣困難性でもある。
コストコ。
相変わらずの大繁盛。
「おためしのおすゝめ」は、
コストコの専売特許。
そして氷詰めのカニとロブスター。
こんな売り方は初めて見た。
コストコはいつも、どの店も、
無敵の繁盛ぶりだ。
次はリージョナルショッピングセンター。
核店舗は百貨店、
メイシ―ズ。
このショッピングセンターでは、
最高級の百貨店で、
やはり図抜けた商品力と演出力だ。
一方、シアーズ。
私の表現では、
ディスカウントデパートメントストア。
表にこんな張り紙。
「私たちはここにとどまっています。
私たちは撤退することはありません」
ああ、情けない。
売場にはほとんど、
顧客がいない。
そしてウォルマート。
2層の変形レイアウト。
JCペニーが撤退した後に入居。
こちらはハロウィーン全開で、
集客力を発揮している。
リージョナルショッピングセンターに、
ウォルマートが出店することは、
原則的には絶対にない。
しかし、ディベロッパーも、
止むに止まれず誘致したのだろう。
だから賃料は無料に違いない。
アメリカの小売業態も、
ショッピングセンターも、
旧態依然としたものは、
どんどん淘汰されている。
最後はその旧態依然の、
スーパーマーケット。
レイリーズ。
コンベンショナル型と呼ばれ、
「伝統型」と訳される。
入口にはハロウィーンのディスプレー。
その奥にサンドイッチの対面コーナー。
さらにデリが続いて、
この連続売場は最新型だが、
天井は低く、きわめて古い印象を与える。
そして奥主通路は、
精肉、乳製品と続いて、
突然、青果部門が現れる。
変なレイアウトだ。
その理由は店舗右翼に、
ウェルズ・ファーゴが入っているから。
米国の銀行業界で最多の支店を持つ。
顧客には便利だろうが、それが、
スーパーマーケットの壁面を占めると、
通常のレイアウトが組めない。
この店にはドラッグストアも、
併設されていない。
つまり典型的なコンベンショナル型。
それはすなわち、
「業態」の域を脱することなく、
したがってポジショニングはない。
残念ながら、
古い形の店からはだんだん、
顧客が離れていく。
吉田拓郎の「イメージの詩」を思い出す。
「古い船には新しい水夫が
乗り込んでゆくだろう
古い船を今動かせるのは
古い水夫じゃないだろう」
「何故なら
古い船も 新しい船のように
新しい海へ出る
古い水夫は知っているのさ
新しい海のこわさを」
マーケットは新しい海になっている。
そこに古い水夫たちの古い船が、
取り残されている。
(つづきます)
〈結城義晴〉