「東北関東大津波大震災」現地レポート「七章 水沢・Kマートの顧客満足フェールセーフ」
最初にお詫び。
本日、朝8時ごろから11時40分くらいまで、
最新ブログが画面から消えました。
サーバのトラブルでした。
お詫び申し上げます。
「フェールセーフ」が問題になっています。
もちろん福島第一原発のこと。
「なんらかの装置・システムにおいて、
誤操作・誤動作による障害が発生した場合、
常に安全側に制御すること。
またはそうなるような設計手法」
「信頼性設計」と呼ばれる考え方のひとつ。
装置やシステムは必ず故障する。
あるいは使い手は必ず誤操作をする。
それを前提に「安全側に制御」する。
商人舎のホームページは、
この「フェールセーフ」になっていないし、
私自身の誤作動もたびたびある。
一昨日の朝日新聞『経済気象台』。
「失敗しても大丈夫なフェールセーフ設計が、
できていなかったからだ。
電気制御ができなくても、
堰(せき)を開け冷却剤を流して
原子炉を安全停止させることは可能だ。
使用済み燃料を簡素なプールに貯蔵していたのも疑問だ」
「原子炉内と貯蔵プールをロボットカメラでモニターすること。
一本一本の燃料棒の詳細なデータからシミュレーションすれば、
何が起きているか明確になり、対応も変わる」
そして「国民を信頼し情報公開を急ぐべきだ」と結ばれる。
今さら遅いかもしれないが、
「フェールセーフ」は本当に重要なことだ。
翻って小売サービス業。
「顧客満足のフェールセーフ」が、
構築されていなければならない。
私はこれを「顧客満足保障」と称してきた。
「保障」は守ること。
「保証」は請け負うこと。
「補償」は損害を償うこと。
「安全保障」できなかったことを、
「補償」する手立てはない。
だからこそ「フェールセーフ」は必須である。
「以って自戒とすべし」
さて、チャリティセミナー「商人支援プロジェクト」
テーマは「ひとつになろう日本!」
講師陣がメッセージを出した。
私も300字弱の文章を書いたが、
これも当方の手違いで、
まったく違ったものが掲載されてしまった。
大至急、訂正中。
オリジナルをここに掲載。
最近、このブログに書いたものを織り交ぜ、
私の思いを表現した。
謙虚に、ひかえめに、真摯に、
被災地の商人を支援したい。
ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ、
被災地の商業の復旧と復興を応援したい。
それがやがて必ず
地域の振興につながることを信じたい。
いつも、そして、ずっと、
被災地の商人と心をひとつにしていたい。
支援し、応援し、心をひとつにすることによって、
この社会が、商人の役割を正しく認識するに違いない。
それを願いたい。
「雨ニモマケズ 風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル
ホメラレモセズ クニモサレズ
サウイフモノニ ワタシハナリタイ」 合掌。
最後は、ご存知、宮沢賢治。
東北の震災だから、
賢治の言葉を使いたかった。
さて昨日の午前中は、東京駅から日本橋へ。
名物の桜並木も葉桜となっていた。
それも悪くはない。
そして日本スーパーマーケット協会へ。
大塚明専務理事、江口法生事務局長と、
打ち合わせ、及び情報交換。
大塚さんからはいつも、かならず、
最新の情報と斬新な意見を聞くことができる。
私に対する質問も鋭くて、実務的。
「この震災を経て、マーケティングは変わるのですか?」
「うーん、マーケティングの根本は変わりません」
禅問答?
大塚さんたちも東北の被災企業を訪問してきた。
私が帰ってきた最大余震のあった日に、
同じように帰京したという。
現地の生々しい話、
晴れ晴れとしたエピソード。
互いに、話し始めたら終わらない。
それだけ私たちにとっても、
きつい出来事である。
そのあと、事務局のみなさん揃って、写真。
一昨日は、横浜の商人舎に、来客。
ファイブ・ア・デイ協会理事長の池田健太郎さんと、
㈱ドール副社長の渡辺陽介さん。
4月に開催予定だったドール主催の講演会が、
この震災によって延期になった。
そのお詫びのご挨拶ということだったが、
お二人とも、この間、東北の企業を慰問に訪れていて、
お互いに、良い情報交換の場となった。
さてさて「東北関東大津波大震災・懇親レポート」
その「七章」。
4月7日、昼頃、盛岡を発ち、
東北自動車道を今度は南下。
自衛隊のトラックが走る。
江刺で降りて、奥州市へ。
ヨークベニマルやジョイス、そしてベルプラスやユニバース。
チェーンストアを訪問し、その震災への対応の話を聞いてきた。
しかし単独店はどうだったのか。
それが知りたかった。
そこで旧知のケー・マートを訪問。
奥州市水沢でスーパーマーケットを始めて30年。
200坪の店舗が1店。
しかし、商品開発と店づくり・売場づくりに、
ユニークな特徴を出して、
まさに、「頑張っている」という表現がぴったりの営業ぶり。
千葉喜夫社長(いちばん右)を中心に、
アットホームな会社である。
私も、簡単な激励のスピーチをした。
水沢は岩手県でも内陸であるために、
津波の被害はなかった。
しかし地震はひどかったし、停電。
断水はなかったが、余震の揺れに悩まされた。
幸いなことに、社長が店にいて、
すぐに意思決定。
これがインディペンデントの良さ。
そのうえ社員一同、結束を固めて、
3月11日、大地震の直後、
店内のすべての安全を確認したうえで、
1時間後の4時前にはオープンした。
しかし暗くなってきたので、
1時間半で閉店。
翌日は朝9時から店を開け、
炊き出しサービスなどしながら、
夕方の6時まで営業した。
停電はこの日の夜中まで続いた。
なじみのお客様が、
どんどん押し寄せた。
すぐに商品は売れていった。
震災後10日間は前年対比で200%の売上げ、
その後は150%で推移している。
加盟している全国セルコチェーンや、
懇意にしている企業から商品を届けてもらった。
千葉社長自らトラックを調達して、
商品の集荷に回った。
地元の業者からも、
新しい取引を引き出した。
現在は店舗も売り場も、
ずいぶん回復した。
店舗入り口のプロモーション。
カゴ盛りでセンスよく並べられている。
青果部門も1品1品吟味された品揃え。
店舗入り口付近の日配品の冷蔵ケース前に、
丸テーブルとワインの島陳列。
白いテーブルクロスがレストランのムードを醸し出している。
奥主通路沿いにベンチ風の平台を置いて、島陳列。
こげ茶色のクロスがグレード感を出す。
カゴ盛りの切干大根とそうめん。
奥正面のゴンドラエンドは、美しいし、
売りたい商品の主張がはっきりしている。
精肉売り場の商品も、
1品1品、しっかり吟味されている。
店舗右手は惣菜やパンの売場。
パンは自家製粉の手作り、
惣菜ももちろん手作り。
アメリカ・テキサス州のスーパーマーケットHEB。
この州でウォルマートと互角以上の闘いを見せる。
そのHEBの強さを、自らふたつに整理している。
①オーナーシップ経営の意思決定のスピード
②イーチストアの地域密着の強さ
イーチストアとは、
それぞれの店、1店1店の店ということ。
ウォルマートも自ら言っている。
「私たちは最大の企業をつくろうとは思っていない、
地域の1店1店を最良の店舗にしようと考えている」
だとすると、インディペンデントの生きる道は、
拓けている。
流通の巨人二人の言葉。
ダイエー創業者の故中内功さん。
「生まれ変わったら、ダイエーの前で八百屋をやるんや」
イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さん。
セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。
「オーナシップ経営が一番幸せです」
私は、日本小売業界を、
「大きな森」にたとえている。
巨木もあれば雑木もある。
可憐な花も咲いている。
いろいろな植物があって、
しかしそれぞれの生命力が強い大きな森。
ミニスーパーのボランタリーチェーン「全日食チェーン」。
会長の田中彰さんは言う。
「小売業には大動脈も大静脈もあるが、
毛細血管も絶対に必要だ」
ケー・マートのみなさんに接して、
私はそう思った。
震災の時にも、素早く対応し、
一致団結してお客様に奉仕した。
ヨークベニマルの店長たち、店員たちも、
現場で頑張った。
ケー・マートの人々も、
自分の特徴を出しながら、
1店を守って頑張った。
どちらも、それによって、
自店の「顧客満足のフェールセーフ」をつくろうとした。
それが尊い。
震災はこのことをも、
私たちに教えてくれている。
<結城義晴>