「はれのひ事件」の「損得と善悪」とインターネットの「10秒将棋」
成人式の祝日明け。
はれのひ(株)の成人式晴れ着事件。
着物の販売とレンタルの会社。
今日までに全店が閉鎖して、
事実上事業を停止した。
そのため、同社から晴れ着を買ったり、
レンタルの予約をしたりした新成人が、
振り袖を着られなかった。
預けた着物が返却されない被害もある。
警察には180件以上の相談が寄せられた。
本社は横浜市にあるので、
神奈川県警が詐欺容疑も視野に入れて、
経営実態や契約状況を調査中。
当然、責任者の行方も追跡している。
東京商工リサーチによると、
シーン・コンサルティング(株)として創業、
当初は振り袖販売店向けに、
コンサルティング事業を展開していた。
2012年7月、横浜市内に店舗開設。
和服の販売と貸し出し事業をスタート。
2014年8月、横須賀店、
2015年4月、福岡天神店、
同年12月、八王子店、
2016年6月、つくば店、
同11月、柏店と、
多店化を果たした。
2011年9月期決算で、
売上高3500万円だったが、
2016年には4億8000万円に飛躍。
しかし昨年から資金繰りが厳しくなって、
今回の事件に至った。
そのはれのひ篠﨑洋一郎社長、
昨年7月20日の商人舎[特別セミナー]を、
受講していた。
幸か不幸か、私は、
名刺交換などしていないけれど。
タイトルは、
小売業の情報技術革新
――大久保恒夫・當仲寛哲・結城義晴、
世界潮流からマネジメント活用までを
語りつくす。
レンタル業は、
ネットサイトなしには展開できない。
だから参加したのだろう。
しかし昨年7月はもう、
事業が行き詰りかけていたはず。
実際にセミナー参加費1万円(本体価格)は、
その後も払い込まれず、
商人舎経理担当の城山佳代子が、
何度も電話して回収した。
城山は思い出しつつ、言う。
「電話に出た女の子がかわいそう」
そうか?!
一生に一度の成人の日に、
晴れ着が着られなかった新成人のほうが、
よほどかわいそうだ。
それでも、それも一つの苦い思い出。
なんとか成長の糧にしてほしいものだ。
寂しさと寒さ似ている冬の日を
カップスープで温めてみる
〈日経歌壇より 平塚・風花雫〉
寂しさと寒さは似ている。
カップスープがありがたい。
これだれが
買うんだろうというような
ラスト一個を手に取りレジへ
〈同 堺・一條智美〉
誰が買うんだろう。
私だ!
歌人の心意気。
店にとってはありがたい。
朝日俳壇にも日経俳壇にも、
いい句がなかったので、
今日は短歌。
さて、今日は朝から、
鈴木哲男さんと二宮護さん来社。
鈴木さんは著名なコンサルタント。
二宮さんは腕利きの編集者。
三人で単行本をつくります。
その打ち合わせ。
思い返せば、
鈴木さんと出会ったのは1977年。
マーケティングコンビナートの事務所。
原宿にあった。
今井俊博先生のもと、
安部擁子さんがチーフコンサルだった。
鈴木さんは当時、
イトーヨーカ堂のRE所属。
積極的に外に出て学ぶ人だった。
REはRetail Engineeringの略。
鈴木さんは1990年に、
イトーヨーカ堂を円満退社し、
コンサルタントになった。
そして「52週MD」の考え方を生み出し、
その権威となった。
二宮さんとの出会いは1973年。
早稲田大学童謡研究会に、
新入生の二宮さんが入会してきたとき。
まったく偶然にも、
二人とも9月2日生まれだった。
その後、二人でバンドを組んで、
弾き語りをした。
二人とも創作をし、
幹事長になって、
保育園に慰問に行ったりした。
そしてどちらも無事卒業し、
私は先に(株)商業界へ、
二宮さんは(株)日本実業出版社へ。
同じビジネス出版の編集の道を歩んだ。
その後、二人とも編集長を経験し、
二宮さんはフリーの編集者となって、
現在、仕事を選びつつ悠々自適。
私の単行本を3冊担当してくれている。
『Message』(商業界刊)
『小売業界大研究』(産学社刊)
『小売業界ハンドブック』(東洋経済新社刊)
鈴木哲男さんの集大成となる単行本を、
この春、満を持して発刊します。
ご期待ください。
さて、日経新聞電子版「経営者ブログ」
日本のインターネットの草分け、
(株)IIJ会長の鈴木幸一さん。
正月だからインターネットの話。
「ようやく助走段階が終わったところで、
今後の展開を考えると、
あらゆることが、まったく、
異次元の社会になるのではないかと、
怖い想像が膨らむばかりである」
どんな怖いことか。
「3年以内に、次の技術的な進展があって、
一桁違ったレベルの利用形態が可能になる」
「その利用形態は、
仕組みごと変える意思があれば、
いまの段階では想定の外といったことが
可能になるはずである」
仕組みごと全部変える意思が必要。
「後ずさりの余地を与えず、
無限軌道のレールに乗ったように、
どこまでも、進まざるを得ない」
「後ずさりしながら進むことで、
考えるという行為が
何らかの意味を持つはず」
しかし、
「後ずさりをして考えることを
省略しない限り、
産業や経済の構造変化に
置き去りにされるのが、
インターネットという
技術革新の特異な特徴である」
後ずさりして、
考えてはいけない。
それを省略しないと、
置き去りにされる。
すごいことを言う。
鈴木さんはIoTやAIを、
「現在進行形」と評するが、
それらは言うまでもない。
「いまだに、形とならない
利用形態についても、
無限に想定することができる」
そして最後に、
「SFの世界よりも、
具体化される現実のほうが、
先に進んでしまうのではないか」
もちろん私は、
急かせているのでもなく、
脅しているのでもない。
しかし、このIT革命のスピード感は、
身をもって体験しておかねばならない。
後ずさりしてはいけない。
考えてもいけない。
将棋の世界でいえば、
奨励会の修行中の若手棋士たちが、
しょっちゅう10秒勝負をする。
つまり直感の読みの将棋。
それに似た感覚だろうか。
そうすると藤井聡太四段のほうが、
羽生善治永世七冠よりも強い。
そんな時代が来ている。
もちろん「考える」ことを、
全面否定しているわけではない。
それどころかこれまで以上に、
熟考を重ねなければいけない。
ただしこの「10秒感覚」を持った者を、
責任者にしなければならないだろう。
Chief Information Officer。
昨年7月のIT特別セミナーでは、
そんなことも強調した。
残念ながら、
商業界精神は語らなかった。
それが心残りではあるけれど。
遅ればせながら、
「損得より先に善悪を考えよう」
〈結城義晴〉