日曜版【猫の目博物誌 その58】フキノトウ
猫の目で見る博物誌――。
「大寒」を過ぎて、一番寒いときです。
そんなころを「款冬華」といいます。
フキノトウが出始めたかな?
「二十四節気」は1年を24に分ける。
だから二十四節気は15日が基準。
さらに「七十二候」は、
二十四節気を5日ずつ3つに分ける。
すると、1年は72に分けられる。
これが「しちじゅうにこう」である。
古代の中国で考え出され、
それぞれの七十二候に名称がある。
それは、気象や動植物の変化をとらえて、
短い漢文になっている。
二十四節気の「大寒」は、
今年は1月20日、
または1月20日から2月3日まで。
その大寒は冷気が極まって、
一年で最も寒さが厳しい時季。
二十四節気の「大寒」も3つに分けられる。
第1が「款冬華」、
第2が「水沢腹堅」、
第3が「雞始乳」。
それぞれに「はるのはなさく」、
「さわみずこおりつめる」、
「にわとりはじめてとやにつく」と読む。
第1の「款冬華」は今年は1月20日〜24日。
フキノトウが雪の中から、
顔を出しはじめるころ。
第2の「水沢腹堅」は1月25日〜29日。
川の水に厚くて堅い氷が張るころ。
第3の「雞始乳」は1月30日〜2月3日。
春の気配を感じたニワトリが、
そろそろ卵を産み始めるころ。
おもしろい。
その「フキノトウ」は、
キク科フキ属の多年草。
「蕗の薹」と書く。
日本原産の山菜。
フキノトウはフキの蕾(つぼみ)の部分。
フキの花が咲くと、
そのあとに地下茎から茎が出て、
葉が伸びる。
この茎を「フキ」と呼んで食する。
これも春の山菜。
もちろんフキもキク科フキ属。
フキノトウは春先、
いっせいに芽を吹き出す。
自生している天然物は、
雪が解け始める頃に出てくる。
まさに「款冬華」。
フキノトウは、蕾が硬く閉じていて、
締まりがあるものがおいしい。
大きくなり過ぎると、
苦味が強すぎる。
フキノトウはカリウムを一番多く含む。
カリウムはナトリウム、つまり塩分を、
排泄させる機能を持つ。
フキノトウの苦み成分は、
アルカノイドとケンフェール。
アルカノイドは、
肝機能を強化する働きがある。
食べると新陳代謝が促進される。
ケンフェールは、
「発ガン物質を抑制する働きがある」
などとされることがある。
だがそれをそのまま、
POPなどに書いてはいけない。
「発がん物質を抑制する働き」が、
「期待されている」と、
もって回った言い方をする。
それよりもこのちょっとした苦みが、
蕗の薹のおいしさである。
てんぷらなどとてもおいしい。
〈土佐料理 朝比奈〉
そつとしておきたき固さ蕗の薹
〈「青胡桃」より小宮山勇〉
フキノトウは春を予感させます。
だから春が待ち遠しいときは、
フキノトウを味わってください。
てんぷらなど、いいですね。
もうすぐ節分です。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)