ホーキング博士が主張した「仕事をあきらめないこと」
スティーヴン・ホーキング博士逝去。
Stephen William Hawking。
イギリスの理論物理学者。
「車椅子の天才科学者」。
76歳だった。
21歳のとき、
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され、
余命数年と言われた。
23歳のときに、
ロジャー・ペンローズと共同で、
ブラックホールの特異点定理を発表した。
アインシュタインの「一般相対性理論」が、
破綻する特異点の存在を証明した。
「我々はとても平凡な小さな惑星にいる、
進化したサルの一種に過ぎない。
しかし我々は宇宙を理解できる。
それが我々を何か特別な存在にしている」
車椅子の人生について語っている。
「第1に、星を見上げて、
自分の足を見ないようにすること」
「第2に、仕事をあきらめないこと。
仕事はあなたに、
意義と目的を与えてくれ、
それがなくては、
人生は空っぽになるからだ」
「第3に、運よく、
愛を見つけられたなら、
愛がそこにあることを忘れず、
投げ捨てたりしないこと」
「仕事を
あきらめないこと」
ほんとうにその通りだ。
AIやロボットにも言及している。
「ロボットが必要なものを
全て生産するようになれば、
富の分配をどうするかによって
結果は大きく違ってくる」
正論だ。
「ロボットが生み出す富を
皆で分け合えば、
全員が贅沢な暮しをできるようになる。
逆に、ロボットの所有者が
富の再分配に反対して政治家を動かせば、
大半の人が惨めで貧しい生活を送ることになる。
今のところ後者の傾向が強い。
技術革新で富の不平等は拡大する一方だ」
死ぬことに関しては、
いつも考えていた。
「過去49年間、
寿命を全うできない可能性と
隣り合わせだった。
死は怖くないが、
早く死にたいとは思わない。
まずやっておきたいことが山ほどある」
もっともっと生きていてほしかった。
ほかの障害者の人たちへの助言。
「障害に妨げられずに
あなたがうまくできることに集中し、
何ができないかを無念に思わないこと」
「身体的だけでなく、
精神的にも、
障害者になってはいけない」
平昌冬季パラリンピックの、
開催中の逝去だった。
心からご冥福を祈りたい。
さて、日経新聞「私見卓見」
倉林貴之さんがデジタル化に関して語る。
野村総合研究所パートナー。
「デジタル化は大切だが今後、
より重要になることがある。
社員のコミュニケーション能力だ」
「ある程度の便利さが当たり前になると、
今度はコミュニケーションの優劣が、
モノやサービスを選ぶ際の物差しになる」
そのときの課題。
コミュニケーションは従来、
無償で提供されてきた。
それに「ちゃんと値段をつけること」
「消費者と直接やり取りする分野では、
コミュニケーションの提供が
労働者の善意や意欲、
報酬外の努力によってなされてきた」
「今後はコミュニケーション能力を
評価・報酬に反映する取り組みが
必要になってくる」
同感だ。
日経ビジネス「今日の名言」
最近の2題。
昨日3月14日は、澤田秀雄さん。
エイチ・アイ・エス会長兼社長。
親が子供に
習得してほしいと考える
知識やスキルなんて、
AIが代替してしまいますよ。
「やはり、親はあまり
子供の人生に関与しない方がいい」
「最近は過保護な親が
多いのではないでしょうか。
小さい頃から塾に通わせて、
入学式はまだしも、入社式にまで
付き添う親がいると聞きます。
それはやり過ぎです」
「過保護に育てたり、
塾などで効率よく
知識を詰め込ませたりする教育は、
もう通用しなくなります」
しかしこれは、教育に、
熱心でなくていいというわけではない。
ホーキング博士のスティーヴン家も、
経済的には恵まれなかったが、
父母ともに学者、研究者だった。
一貫して、教育を重視した。
今週月曜日は、
リンダ・グラットンさん。
ロンドン・ビジネススクール教授で、
「LIFE SHIFT」「WORK SHIFT」の著者。
これからは
自分のキャリアを
途中で何度も
刷新させる必要があります。
「仕事を一旦中断し、
学校に通うなどして学び直す。
新しいスキルを身につけることで
労働市場での価値を高める」
ふたたびホーキング博士。
「仕事をあきらめないこと。
仕事はあなたに
意義と目的を与えてくれ、
それがなくては
人生は空っぽになるからだ」
人生100年時代には、
人生を空っぽにしない仕事を、
何度も刷新させる必要がある。
それが生きがいとなる。
そのとき、コミュニケーション能力は、
評価され、報酬に反映されているだろう。
ホーキング博士にも、
人生100年時代を実体験して、
コメントを発してほしかった。
合掌。
〈結城義晴〉