福岡伸一「科学史」の薦めと結城義晴「スーパーマーケット史」
みどりの日。
無条件に緑。
立教大学キャンパスの銀杏も緑。
横浜商人舎横の新田間川の緑。
日本は「緑の国」だけれど、
ほんとうの「緑の国」にしたいな。
日本列島には山が多い。
平地が少ない。
背骨のような山脈・山地が、
列島を貫く。
だから国土のおよそ7割が森林である。
つまり日本は「緑の国」だ。
毎日新聞巻頭コラム「余録」
知者は水を楽しみ、
仁者は山を楽しむ
孔子の『論語』の言葉を引いた。
「知恵のある人は水のように自在に動き、
徳の高い人は山のように動じない」
水と山。
そしてみどりの木々。
「古代から知者も仁者も、
自然の山水を楽しんできた」
「きょうは”みどりの日”。
山水を楽しみ、慈しんできた先人たちの
歩みにも思いをはせたい」
同感。
そして本当の「緑の国」にしよう。
朝日新聞の連載。
「福岡伸一の動的平衡」
今日のタイトルは、
「スター・ウォーズ、力の源は」
福岡さんは生物学者。
私、大好きです。
「5月4日は”スター・ウォーズの日”。
なぜなら5月(メイ)4日(フォース)だから」
「導師が若き主人公に与える言葉は
“フォースと共にあらんことを”
(メイザフォースビーウィズユー)」
わからない人には全然わからない。
わかる人は、小躍りして面白がる。
ここからの福岡さんの提案がいい。
「これから科学を学ぼう
(あるいはもう一度学び直したい)
と思っている人におすすめの方法がある」
「それは科学のかわりに
科学史を勉強すればよいのだ」
これ、何かを学ぶときの定石、
鉄則、王道、決定版。
大賛成。
だから学問にも、
「経済史」や「経営史」がある。
「美術史」「文学史」もあるし、
「音楽史」などもとても面白い。
学習院大学名誉教授の湯沢威先生は、
経営史をご専門にされている。
学習院マネジメントスクール顧問。
私は「商業史」「流通史」が大好きだし、
死ぬまでに、これは一冊、
書きたいと思っている。
ミドルマネジメント研修会でも、
アメリカ視察研修会でも、
いつも商業史やチェーンストア史を、
テキストに入れて学ぶ。
福岡さん。
「ミトコンドリアとは、
細胞内小器官のひとつで、
酸化反応によってエネルギーを生産する
――教科書的に上から目線で言われると
意欲をそがれる」
「それより名前の由来を調べてみよう」
「100年以上前、
顕微鏡で細胞を観察していた科学者が
糸くずのような影を見つけた。
最初はゴミかと思ったが、
どの細胞にも散らばっている」
「そこで糸を意味するミトに、
微粒子を意味するコンドリアを
くっつけて命名した」
ミトコンドリアの歴史。
「顕微鏡で観察するとき
細胞は薄くそぎ切りにされる。
だから糸に見えたものには厚みがある。
実際、ミトコンドリアは
きしめんが折りたたまれたような
構造をしていた。
狭い細胞内で面積をかせぐ工夫だ。
調べてみるときしめんの表面には
びっしり酸化酵素が並んでいた。
かくしてミトコンドリアは
細胞内呼吸の現場であることが
わかってきた。
これが科学史」
すばらしい。
福岡さんは実にいい先生だ。
私も例えば、
スーパーマーケットの歴史を使う。
世界のスーパーマーケット前史は、
1859年のA&Pの創業に始まる。
ザ・グレイト・アメリカン・ティカンパニー。
このお茶の小売店の会社が、
コーヒーも扱い、缶詰や菓子を売った。
グロサリーストアの誕生である。
そしてそのグロサリーストアを、
多店化し、チェーンストアとした。
10年後、社名を変えた。
ザ・グレイト・アトランティック&パシフィック・ティカンパニー。
略して「A&P」。
それから60年後の1930年、
マイケル・カレンが「キングカレン」をオープン。
「スーパーマーケット」を発明した。
第一次革命だった。
〈『スーパーマーケット 流通革命の先駆者』(M.M.ジンマーマン著)より〉
ここからスーパーマーケット史が始まる。
グロサリーストアに生鮮の青果と肉を加えた。
さらにマージンミックスによって利益を確保し、
爆発的な安さを生み出した。
さらに50年後の1980年、
スーパーマーケット第二次革命。
業態の多様化、すなわち、
フォーマット化が進んだ。
第1にスーパーストア化が行われた。
日本では変な呼び方が流行った。
「スーパースーパーマーケット」。
第2にコンビネーションストアが登場した。
具体的にはフード&ドラッグである。
第3にクォリティ&サービス型が生まれた。
ホールフーズの創業は1980年である。
第4にリミテッドアソートメントが始まった。
アルディがドイツから上陸した。
このうちのフード&ドラッグで、
HBCやファーマシーが併設された。
今や当たり前の部門構成である。
かくて現在のスーパーマーケットの、
商品分類は大きく三つに分かれる。
フードマーケティング協会の分類。
⑴グロサリー
⑵ペリシャブルス
⑶ゼネラルマーチャンダイズ
グロサリーは1859年のA&Pによって、
ペリシャブルスの生鮮や冷食は、
1930年のマイケル・カレンによって、
それぞれに品ぞろえに加えられていった。
そしてゼネラルマーチャンダイズは、
「その他」の意味で、
HBCやファーマシーなどである。
これが1980年代から、
スーパーマーケット必須の、
カテゴリーとなった。
三つの歴史の上に、
現在のスーパーマーケットの商品構成が、
出来上がってきた。
面白い。
福岡さんのエッセイのオチ。
「ちなみにスター・ウォーズでは、
フォースの源泉は
ミディ=クロリアンという微粒子。
それってミトコンドリアのことでしょ。
もう一声ひねってほしかった」
ありがとう。
〈結城義晴〉