堀口大學の「嘆くをやめよ 目をあげよ」とWal-Martの「混沌なし」
国は小さく 力なく
糧は乏しく 恥多く
命かそけく なりけらし
新潟日報「堀口大學 文化の記憶」より。
堀口大學は、詩人、歌人、フランス文学者。
明治25年生まれ、昭和56年没。
新潟県長岡市生まれなので、
新潟日報が毎日、その作品を掲載している。
「敗戦直後、国民は茫然自失、
詩人は自分で自分を
鼓舞するほかないと悟る」
今日の一文は、詩「声とこだま」の一節。
この詩の結びは、
嘆くをやめよ 目をあげよ
高き梢(こずえ)に なか空に
敗戦の後のちょうど今頃、
堀口は絶望する気持ちを、
払いのけるように歌った。
嘆くをやめよ 目をあげよ
それから73年が経過した。
昭和が終わり、平成も幕を閉じる。
国のGDPは大きくなり、
それなりに力もあり、
糧は豊かになった。
恥もそれほど多くはないかもしれないし、
命が消え入りそうでもない。
それでも、敗戦直後のころのことを、
忘れてはならない。
そして今も変わらないのは、
嘆くをやめよ 目をあげよ
高き梢に なか空に
今日も糸井重里の「ほぼ日」から、
「今日のダーリン」
「生きるがあって死ぬがあるし、
光があって影があるし、
表があって裏があるし、
出会いがあって別れがあるし、
ほんとはどっちも
同じものなんだよなぁと、
つくづく思うようになりました」
「生だけっていうものはないんだよね。
死だけがあるってこともなくてさ、
光だけもない影だけもない、
右だけもなく左だけもない、
そういうものだ」
明だけでもないし、暗だけでもない。
優だけでもないし、劣だけでもない。
「日本の夏、特に八月というのは
なにかが、なにかに生まれ変わる前の
坩堝(るつぼ)のような時間に思える」
お盆があって、
迎え火、送り火があって、
広島・長崎の原爆投下の日があって、
終戦の日がある。
「夏休みの少年や少女たちは、
夏になにかが変わって、
ちょっとだけ別人になって
新しい学期を迎える」
「八月の間は、夢中で
夏と格闘していたので、
じぶんが変わったことに
気づけなかったのだ」
「大人になってからも、
もちろん老人も、
生や死や、光や影や、
出会いや別れを感じる八月には、
こころのなかに混沌に似たものを
見つけることになる」
今日の私も、
この「混沌に似たもの」を感じた。
「年相応の落ち着きや
知ったかぶりができなくて、
夏の暑さにいったん
溶けてみたほうがいいのだろうな。
実際に、溶けてしまうほどの
暑さもあったけれど」
さて、ウォルマートの第2四半期。
この10年で一番の伸びを見せて、
既存店が4.5%の増収だった。
既存店客数2.2%増、同客単価2.3%増。
好調だ。
総収入は1280億ドルで前年比3.8%増。
売上高は前年比4.2%増の1271億ドル。
しかし営業利益は3.7%減少して、
57億5000万ドル。
損失は8億6100万ドルだった。
1株あたりの損失は29セントだった。
この損失はブラジルの子会社の売却が原因。
それを除いた調整後の1株あたりの利益は、
19%増加して1ドル29セント。
だから営業自体は好調だ。
ウォルマート・コムのeコマースは40%増。
米国内ウォルマートの売上高は、
5.2%増の828億ドル、
営業利益は1.4%増の45億ドル。
サムズクラブの売上高は、
0.6%減の148億ドル、
営業利益は2.8%増の4億ドル。
既存店売上高は5.0%増、
客数は6.7%増、客単価は1.7%減。
サムズクラブは不採算店を閉鎖して、
減収増益を果たした。
問題のインターナショナル部門は、
売上高4%増の295億ドル、
営業利益は19.1%減の13億ドル。
日本では西友を売却する話が出ているが、
インドではeコマース最大手フリップカートを、
160億ドルで買収する。
好調な第2四半期の業績発表で、
昨日の株価は9%上昇した。
この10年ほど、
成長力を鈍らせたウォルマート。
しかし現時点では、
アマゾンにフォーカスしている。
だから混沌に似たものはない。
自己を確立したうえで、
競争相手を絞っていく。
そして、
嘆くをやめよ 目をあげよ
〈結城義晴〉