Eテレ「100分de名著・ドラッカー」によって明らかにされた「社会の許しがあって存在する企業」
Eテレの番組『100分de名著・ドラッカー』第2回。
今回も、良かった。
今回のテーマは、
「何のための企業か」
上田惇生先生、絶好調。
上田節に私は再び、酔いしれた。
第2回で上田先生が選んだ文章がこれ。
企業が存続する意味を、
これほどに明確に論じた文章はない。
どんな企業も、
どんな組織も、
社会や経済の許しがあって、
存在している。
社会や経済は企業を、
一夜にして消滅させる力を持つ。
企業の中にいて、内側の目しか持たないと、
まるで「真空に独立して存在している」と、
勘違いしてしまう。
会社と個人がこのままの状態を続けると、
やがて「ゆでガエル」となる。
そんな会社、あなたは知らないか。
上田先生、今回も存分に語ってくださった。
そしてドラッカーの真髄が随所に現れた。
バランスには三つある。
とりわけ二番目が大事。
近い将来と遠い将来との間のバランス。
両方大事だというところに、
ドラッカー思想のカギがある。
どちらかではない。
トレード・オフではない。
両方大事で、そのバランスのとり方に、
経営の本質がある。
「実も蓋もない話」だが、
それが21世紀の問題解決の心構え。
最後に上田先生は語る。
「金もうけのためにやっていると思った途端、
変になる」
忠告の言い回しであるところが、
ドラッカーの真骨頂だが、
これは、倉本長治の『商売十訓』第一訓そのもの。
「損得より先に善悪を考えよう」。
「金もうけ」と考えるな、
しかし「明日のために利益も必要」と、
ドラッカーはいい、
倉本長治は、
「欠損は社会のためにも不善と悟れ」という。
最後に、手厳しい言葉。
ドラッカーは、組織の中のこんな存在に、
我慢がならなかったに違いない。
ドラッカーの観察者としての鋭い目が表れた言葉。
「知りながら害をなすな」
私はこういった表現が、大好きだ。
これまた、あなたの会社に、
この類の存在は、ないか、
こんな人間は、いないか。
あなた自身は、
そうなってはいけない。
それと闘わねばならない。
さて今朝の日経新聞に商品比較記事。
面白い。
「夏向けの女性用機能性肌着」
ユニクロを中心に、
イオンとイトーヨーカ堂、
3社のコンパリゾン。
機能性肌着とは、
「着るだけで夏を涼しく過ごせる効果をうたった」商品。
今年は、節電とクールビズで、
大ヒットの予測が立つ。
そこで日経新聞の特集は、
機能性肌着の中で、
「吸汗速乾」の1枚1000円前後のPBを比較。
ユニクロのブランドは「サラファイン」。
旭化成のキュプラ素材、
そこに「東レの特殊なナイロンを組み合わせた糸」を使っている。
ユニクロは2007年から販売して、もう4年目。
「機能の向上と肌触りのよさをいかに両立させるか」
ここに「知恵を絞っている」
一方、イトーヨーカ堂は、
「ボディクーラー」のブランド名。
女性用には「涼しさ機能」が加味された東レの技術を活用。
商品デザインを二つ持つ。
「肌着として着用するタイプとアウターとして着られるタイプ」
それを「春、初夏、盛夏の3シーズンに分けて投入」。
今年からの取り組み。
イオンは「クーリッシュファクト」のブランド名。
こちらは東洋紡との共同開発の新繊維「ドライスピンR」を使う。
それによって「速乾性能が昨年よりも約30%向上」。
さらに「消臭と抗菌防臭のダブルデオドラント機能」を加えた。
3社とも、メーカーとの共同開発で、
その機能性の効用をうたう。
3社の販売目標。
ユニクロは3600万枚、
イトーヨーカ堂とイオンは1000万枚。
まだ3.6倍の差があるが、
ユニクロの独壇場ではなくなりつつある。
すなわちコモディティ化現象が起こりつつある。
<結城義晴>
2 件のコメント
結城先生へ 第1回は視聴できませんでしたが、今回はしっかり視聴できました。特に「どんな企業も、どんな組織も、社会や経済の許しがあって、存在している。」との警句には、思わず私の足元を見つめました。かつて読んだ松村 清先生の著作に、米国No1のDg.sのウォルグリーンが過去に国税当局から脱税の嫌疑がかかったときには、ウォルグリーンの顧客達から「あの私達が信頼するウォルグリーンが脱税をする訳が無い、節税の間違いだ。」との声があがったと、書かれていました。わが国で消費者からそんな声があがる企業が何社あるでしょうか?
いまちゃん、ありがとうございます。
ドラッカーは企業は社会のものだ、と繰り返し強調しています。
社会と経済に許されて初めて、存在を続けることができる。
大きくても、小さくても、変わりません。
最大を目指すより、最適を志向せよ。
日本にもウォルグリーンのような企業が増えてほしいものです。