ハナフォード179店舗のローカルチェーンの強み
Everybody! Good Monday!
[vol30]
2011年の区切りの第30週、7月最終週です。
日本では、プロ野球オールスターゲームが、
第3戦まで行われ、終了。
その3戦は、クリネックススタジアム宮城で開催され、
オールパシフィックリーグがオールセントラルリーグを、
5対0の完封勝ち。
仙台で東日本大震災激励の意味を込めた第3戦。
私は見ることができなかったが、
パ・リーグの投手陣の強みが浮き上がったゲーム。
先発投手は、
パの田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス) 、
セの由規(東京ヤクルトスワローズ)。
それにダルビッシュ有(北海道日本ハムファイターズ)など、
東北にゆかりのある投手が活躍。
それもよかった。
こう書いていて思ったが、
プロ野球のチーム名に地名がつけれているのは、
とてもいい。
パシフィックリーグは、5チームがそれ。
福岡ソフトバンクホークス
北海道日本ハムファイターズ
千葉ロッテマリーンズ
埼玉西武ライオンズ
東北楽天ゴールデンイーグルス
セントラルリーグは、3チーム。
横浜ベイスターズ
広島東洋カープ
東京ヤクルトスワローズ
それ以外の4チームは、
読売ジャイアンツ
阪神タイガース
中日ドラゴンズ
オリックス・バファローズ
チームと親会社と地域の関係が見えてくる。
一方、フランスのエビアン・マスターズでは、
女子プロゴルフの宮里藍が優勝。
宮里も東北高校出身で、うれし涙。
スポーツは、何につけても、いい。
我々人間を元気にしてくれる。
今週は7月最後の週。
完全な夏休みモード。
朝日新聞『天声人語』が夏休みをテーマにした。
「ある大人が小学生に
『学校では授業の始まりと終わりにベルが鳴るねえ』。
すると小学生、
『違うよ。休み時間の始まりと終わりに鳴るんだよ』」
「人間だって
つらい事があっても
根をはり むねをはり
もっともっと強くなろう
麦のように」
「福島の児童詩誌『青い窓』最新号に見つけた小4の一節に胸を突かれる。
それぞれの子に、夏の実りの多かれと願う」
今週から、われわれ小売業やサービス業も、
「夏の実りの多かれ」と願いつつ、
仕事に邁進したい。
私は今、ニューヨーク・マンハッタン。
一昨日、イサカからマンハッタンに移動。
その移動中に、
恒例のこととなったが、
ハナフォード(Hannaford Bros. Co.)の店舗を訪問。
地区長、店長、部門マネジャー、
こぞって大歓迎。
心から感謝。
創業は1883年(設立は1902年)。
ベルギーのデルハイツ・グループ傘下のローカル・チェーン。
デルハイツ・アメリカの2010年度売上高合計188億ドル。
これは同グループ全体の68.3%。
フードライオン、スイートベイ、ブルームなどと共に、計1607店舗。
ハナフォード単独の売上高は未公開だが、
店舗数は、176店。
このニューヨーク州以外にも、
メイン州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、バーモント州で店舗展開。
ちなみに、2008年、
「アメリカで最も健康的なスーパーマーケット」
ベスト10に選ばれる。
いつものように、5チームに分かれて、
青果部門から、順に、
現場で説明を受け、質疑応答をする。
真ん中はシェリル・ロンデネリさん。
一昨年10月に来日して、
コーネル・ジャパン開校セミナーで、
パネルディスカッションしてくれた店長。
2008年度全米ベスト店長に輝いた人。
入り口を入った青果部門の天井は高く、
採光システムが入っている。
さらに売場中央に木が植えられている。
これが特徴。
木の隣に馬車のような陳列台。
青果部門を強くしようと考えたら、
こんな演出もいいと思う。
他との違いを出す。
それがポジショニングの一つの手法。
青果部門中央の広いスペースの真ん中に木があって、
通常平台が配置されるところに、
馬車の陳列台が並ぶ。
入り口すぐの島陳列。
バナナの平台。
オーガニックのバナナ。
青果部門で、190品目がオーガニック。
昨年は109品目だったから、
約2倍に品揃えが広がっている。
この1年のオーガニックの拡大は特筆ものだ。
「オーガニックは3割高い」
しかし品揃えはしなければならないし、
店の特徴にしたい。
ハナフォードはそう考えている。
顧客が自分でトウモロコシの皮をはいでいる。
店舗に入った右手の平ケース。
壁面沿いのリンゴの売り場。
美しい縦陳列。
左サイドの壁面の葉物。
スイカには写真で、カットの仕方が提案されている。
青果部門の売上げ構成比は12%。
野菜が8%で果物が4%。
平均よりも高い。
これがハナフォードの強化部門であることは明瞭。
青果に続いてインストアベーカリー・ケーキ部門がある。
全部で350SKU。
売り上げ構成比は3%。
インストアベーカリーは6人体制。
彩りのいいケーキもインストア製造。
売上げの8割がインストアベーカリーで、
2割がメーカー製造のパン。
デリ部門は売上げ構成比6%。
800SKU。
対面デリが8割で、
パックデリが4割。
人件費は全部門の中で2番目に高い。
部門売上げに対して13%。
すしが伸びている。
すしに続いてシーフード部門。
2%の構成比だが、
強化部門の一つ。
健康志向が背景にある。
フィレは氷を敷き詰めた平台。
オール1ポンド5ドル99セント。
冷凍魚も平台で強化中。
多段ケースでもフローズンフードは展開されている。
環境保護のための対策を採用している。
「フレッシュ・サスティナブル・シーフード」
この部門のマネジャーはコリン・ゲブラーさん。
19歳の大学生。
15歳でアルバイトで入社し、
鮮魚部門は2年のキャリア。
「シーフードは嫌い。
でもマネジャーをやるかと聞かれたから、
喜んでマネジャーになった」
そのコリンがたたき出す鮮魚の粗利は28%。
部門には5人が配置され、
160SKU。
そのガッツに感動して、
握手。
ミート部門は構成比11%。
やや低いか。
25%の粗利で、
ディスカウント強化している。
9人のスタッフがいて、
フルタイマーが5人、
パートタイマーが4人。
さらに部門品揃え数は、1000SKU。
バックヤードでセンターストアのマネジャーと副店長にインタビュー。
センターストアとは、ハナフォードでは、
グロサリー、雑貨、それに乳製品、冷凍食品。
「スーパーマーケット」の「中心となる店」という意味。
この部門が全体の60%の売上げを稼ぐ。
5万5000SKUで粗利28%。
売上げに占める人件費は4.7%と、
極めて生産性が高い。
基本的に自動発注で、
商品入荷は水曜日と日曜日を除く5日。
35人のメンバーで回していて、
11人がナイトクルー。
ナイトクルーはフルタイマーばかり。
つまり、極めて重要な役割を担う。
24時間営業のため、
深夜にすべての陳列作業を終わらせる。
段ボールを断裁する機械があった。
500キログラムを処理する機能をもち、
週に4000ドルの収入となる。
ハナフォードのプライベートブランド。
全体の売上げの6割がPB。
デルハイツの中で、
ハナフォードが最も商品開発力がある。
そこでハナフォードのブランドを全体化する計画が進行中。
もちろんファーマシーの売り場も、
店舗中央にある。
アメリカでは9割がたのスーパーマーケットが、
フード&ドラッグである。
ハナフォードはクーポン販促をやらない。
日本で言えばポイントカードを採用しないことと同じ。
チラシも最低限にして、
エブリデーロープライスを展開する。
明らかにウォルマートを意識し、その良さを取り入れている。
それが他のスーパーマーケットチェーンとの違いを出すことに、
効果を発揮している。
しかし一方で、青果・精肉、
そしてデリやベーカリーのぺリシャブルは強化している。
この政策は、テキサスのHEB、ニューヨーク州のウェグマンズと同じ。
インディペンデント・スーパーマーケットの生き方。
つまりコーネル大学のビル・ドレイク教授の見解。
アメリカのローカルチェーンの最新の考え方を、
デルハイツ傘下のハナフォードが採用していることになる。
アメリカのスーパーマーケットは、
基本的な考え方の面で、
大きく変わろうとしている。
ウォルマートを中心に回っていることは確かだが、
そのウォルマートの強みさえ果敢に取り入れて、
同時に自らの強みをさらに活かす。
いい勉強になった。
ハナフォードの皆さんに、心から感謝しつつ、
Everybody! Good Monday!
<結城義晴>