2025年大阪万博開催決定と「後ろには乗客がいる」
晩秋の朝の空。
雲の切れ間から朝日が差す。
一日が過ぎて、
夕日が沈む時間が来る。
秋の日は釣瓶落とし。
そして月が昇る。
昨夜が満月だったが、
今夜の月も美しい。
満月をあげて晩秋くれにけり
〈原石鼎「花影」より〉
原石鼎(はらせきてい)は、
ホトトギスの代表的な俳人。
1886年生まれ、1951年没。
高濱虚子の弟子で、
瑞々しい句を詠んだ。
東京・自由が丘の花屋。
MONCEAU FLEURS。
モンソーフルール。
すっかりクリスマス支度。
サンタクロース。
色とりどりのフラワーズ。
晩秋の気分と華やかなクリスマス。
花屋の顧客はいつも、
一心に花を見ている。
この商店街に「無印良品」。
こちらの顧客も一心に、
無印の商品を見ている。
晩秋とMUJIは妙にぴったりする。
さて、2025年の国際博覧会が、
大阪に決まった。
大阪万博。
おめでたい。
博覧会国際事務局(BIE)には、
170カ国が加盟する。
2025年の博覧会に立候補したのは、
日本の大阪、
ロシアのエカテリンブルク、
アゼルバイジャンのバクー。
三つどもえの開催権獲得競争を、
日本と大阪が勝ち取った。
関西財界だけでなく、
日本を挙げた取り組みにしたいものだ。
「大阪万博」は1970年以来の二度目。
当時、18歳の高校3年生だったが、
私は受験勉強の合間に、
千里の大阪万博を訪れた。
岡本太郎の太陽の塔に圧倒された。
今回の大阪万博は、
健康・医療を中心に技術貢献を目指す計画。
さらに人類共通の「高齢化」に対して、
その課題解決策を示す。
テーマは、
「いのち輝く未来社会のデザイン」
国際博覧会は英語では、
Universal Exposition。
国際博覧会条約(BIE条約)に基づいて、
複数の国が参加する博覧会。
第1回は1851年のロンドン万国博覧会、
第2回は1853年のニューヨーク万博、
第3回は1855年のパリ万博。
この時にエッフェル塔が建てられた。
近年では2010年の上海、
2015年のミラノなど、
記憶に新しい。
しかし 最近の万博は、
入場者数が低迷。
万博の開催理念は、
課題解決と娯楽性の両立。
何とか成功させたいものだ。
エッフェル塔とまではいわないが、
歴史に残る遺産をつくるべきだと、
私は思うが、いかが。
2020年の東京五輪、2025年の大阪万博。
観光立国ジャパンの未来が見えてくる。
さて新潟日報の巻頭コラム
「日報抄」
2011年の映画を取り上げる。
「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」
三浦友和演じる定年を控えた運転士。
新人にこう諭す。
「運転士も人間だ。
心が乱れる時はある。
心が乱れれば運転も乱れる。
そんな時は後ろを見ろ。
俺たちの後ろには、乗客がいる」
「”後ろにいる乗客”を
忘れないでほしいと求める先は、
操縦かんやハンドルを握る
現場に対してだけではない。
組織のリーダーにも
同じ言葉を繰り返したい」
組織のリーダーも、
万博開催のリーダーたちも、
いつも後ろを振り返る姿勢を持ちたい。
しかし後ろを振り向けば、
乗客が見えるような仕事は、
とても幸せだと思う。
小売業やサービス業の店舗では、
いつも顧客が前に見える。
だから、その、
見えることが当たり前になって、
逆に目の前の顧客が、
おろそかになりやすい。
以って自戒とすべし。
晩秋の月を見上げながら、
そう思った。
〈結城義晴〉