徳島県鳴門市「大塚国際美術館」結城義晴の私的回遊鑑賞録
今日は、お盆の送り火の日。
心なしか、蝉の声も、
枯れ始めたように聴こえる。
お盆商戦は、名残りの時期か。
日経新聞一面コラム『春秋』。
「京都五山の送り火」の中の「『い』の送り火」を紹介。
「いろはのい。だから『仮名がしら』と呼び、
その年に家族を亡くした人が焚く習わしだった」
「初盆であれば悲しみは生々しい」
東日本大震災のための「い」の送り火。
しかし「い」の送り火は今、なくなった。
「もし続いていたら震災の犠牲者の供養に
どれほどふさわしい場だったろう」。
同感。
8月もあと半分。
子供の頃、
夏休みが終わっていくことのむなしさを、
いつも実感していた。
それは大学生になっても、
社会人になっても、
そして今になっても、
変わらない。
朝日新聞の「経済気象台」。
コラムニスト可軒氏が、
「円高異聞」のタイトルで書く。
イントロは「天変地異こもごも至る」
「世界最大の債権国家とはいえ、
財政は危機的状況にある」
「にもかかわらず『円高』である」
可軒氏、結論に落ち着く。
「日本も悪いが外国はもっと悪いからだ」
そして「円高ドル安」は、
「ひとえにかかって米国のあり方による」
しかし「その場その場の綱渡りで、
根本的解決にはほど遠い」
可軒氏の友人の米国人の発言。
「米国の民主主義というのは、
時間がかかるのでなあ」
米国人は続ける。
「紆余曲折あらゆる意見が出尽くした末に、
最後は最善の結論になるさ」
プラグマティズムの原動力は楽観主義。
「それは歴史が物語っている」
可軒氏の結び。
「この国の現状もそれなりに評価できるわけで、
あまり一喜一憂することなく、冷静な、
歴史の評価に耐えうる対処が必要であろう」
うなづける。
歴史の評価に耐えうると言えば、
徳島県鳴門市の大塚国際美術館。
2000年以上にわたって保存可能な陶板名画美術館。
「模倣」もここまでの域に達すると、
「歴史の評価」に耐えられる。
㈱キョーエイのみなさんにご案内いただいて訪問し、
阿波踊りに負けないくらい感動。
心から感謝。
結城義晴、徳島にはまった。
8月14日(日曜日)の朝一番で、
キョーエイ本部に集合。
安友健雄専務、埴渕豊専務、森雅之常務、
そして後藤聖治経理部部長、
山中達夫食品事業部デイリーマネジャー。
コーネル・ジャパンのメンバー、
通称「コーネル連(中)」。
徳島市から鳴門市へ。
大塚製薬の迎賓館につく。
その前面に万国旗。
この美術館に展示されている作品が生み出された国々の旗。
「大塚国際美術館」。
大塚製薬グループ創立75周年記念事業として、
1998年3月21日オープン。
敷地面積6万6630㎡、延床面積2万9412㎡、
地下5階、地上3階。
山をくり抜いて建てられた8フロア。
入り口は地上だが、
地下5階と位置付けられている。
施工は竹中工務店。
展示室は地下三階から地上2階までの5フロア。
ここに世界名画の複製陶板1000点以上が、
堂々、展示されている。
展示方法は3つの特徴を持つ。
①環境展示 環境空間を再現して展示。
②系統展示 古代⇒中世⇒ルネサンス⇒バロック⇒近代⇒現代
美術史的に理解できるような展示。
③テーマ展示 人間にとっての普遍的主題ごとに集められた展示。
素晴らしい。
結城義晴の自慢話になるが、
世界三大美術館を制覇した。
パリのルーブル美術館、
ニューヨークのメトロポリタン美術館、
レニングラード(当時)のエルミタージュ美術館。
それ以外にもロンドンのナショナルギャラリー、
パリのオルセー美術館、オランジェリー美術館、
様々な都市の様々な美術館。
北欧の美術館、スペイン・イタリアの美術館。
ドイツ・オランダの美術館。
北米の美術館。
日本の美術館。
しかし徳島県鳴門市の大塚国際美術館は、
これらのすべてを網羅している。
5つのフロアに世界中の絵画が集まった。
そんな趣。
是非、この鳴門を訪れてほしいものだ。
お勧めしたい。
入り口を入ると、
長い長いエスカレーター。
コーネル連も、ワクワクドキドキ。
地下3階の展示場がスタート。
トップバッターはシスティーナ礼拝堂の環境展示。
ミケランジェロが描いた天井画と壁画。
バティカンのシスティーナ礼拝堂の再現。
上階の地下2階から見下ろすと礼拝堂そのものが、
この美術館内につくられていることがわかる。
天井画の中央に、
アダムの創造。
天国と地獄。
ミケランジェロ自身の投影画が中央。
天井画のマグダラのマリア像。
その現物が地上にある。
近くで見ると横に広がった絵柄となっている。
これを天井に据えると、自然な姿となる。
ミケランジェロは天井に横に広がった絵を描いた。
それが下から見ると、ちょうど良い具合になる。
そこまで計算して描いた。
ミケランジェロの天才ぶりがうかがえる。
地下3階には「フェルメールの部屋」があった。
私、フェルメールのファン。
牛乳を注ぐ女。
手紙を読む女。
部屋の右サイドにある。
左サイドは、デルフトの小路。
この絵、大好き。
デルフトの眺望。
そして真珠の耳飾りの少女。
別名、青いターバンの少女。
素晴らしい。
地下3階には環境展示が多い。
エル・グレコの部屋。
上階のフロアから見る。
聖マルタン聖堂。
壁画は「ヘタウマ」のイラストのようで面白い。
これも環境展示の聖ニコラウス・オルファノス聖堂。
屋外の貝殻のビーナス。
聖テオドール聖堂。
陶板画の美術館というだけでなく、
聖堂そのものの再現がなされている。
言葉がない。
地下3階の古代、中世の環境展示を観終わると、
地下2階のルネサンス。
ルートの最初に出てくるのは、
「受胎告知」のオンパレード。
こういったテーマ性が大塚美術館の真骨頂。
世界各地の美術館に点在する名画を集めたからだ。
レオナルド・ダ・ビンチの受胎告知。
そしてティントレットの受胎告知。
聖母マリアに天使ガブリエルがイエスを身ごもったことを告知している図。
そしてミケランジェロと並び称されるラファエロ。
有名なアテネの学堂。
中央にプラトンとアリストテレス。
余談だが、
イタリアンレストラン・チェーン「サイゼリヤ」の本部壁面に、
この絵が描かれている。
その対面に、これも大画ラファエロの聖体の論議。
ルネサンスの秀才ボティチェリの2作。
ラ・プリマべーラ(春)。
チェーザレ・ボルジアが私蔵し、
ベッドサイドに飾って、
毎朝毎晩楽しんだと言われる名画。
そしてビーナスの誕生。
ボティチェリは、現代画としても、
秀逸の新しさ、繊細さを持つ。
うつくしい。
その美しさ、陶板画が見事に再現している。
地下2階の愁眉はレオナルド・ダ・ビンチの最後の晩餐。
この美術館全体の価値をも高める展示。
なぜならば修復前と修復後が、
対面に並んで展示され、
それらを比較鑑賞できるからだ。
これこそ本物を超える展示。
再び、言葉もない。
このフロアにはモナリザを筆頭に、名作ぞろい。
そしてこの地下2階には屋外に池がある。
池には睡蓮の花。
そしてその連想に続いて、
モネの大睡蓮。
四方を睡蓮の絵画にかこまれた空間。
FMIジャパンの中間徳子さんと。
パリのオランジェリー美術館の大作「モネの睡蓮」。
2010年10月24日のこのブログでも紹介した。
題して「ジジとオランジェリー」
それがここ、大塚国際美術館で再現された。
地下1階のバロックに移って、私の好きな絵。
大工の聖ヨゼフ、ラ・トゥール作。
レンブラント、べラスケス、リューベンスと並んで、
最後はゴヤ。
右の着衣のマハと裸のマハが、
並んで展示。
素晴らしい。
地下1階はその後の近代の印象派まで、
よだれが出るほどの名作ぞろい。
ただし、印象派など小型絵画は、
ちょっと陶板では物足りない感じがした。
ここではクリムトの接吻。オーストリア美術館蔵。
そしてシーレの家族。
同じくドラッカー先生の故郷オーストリア美術館。
そしてこのフロア最後にムンク作品群。
。
病める子、メランコリー、叫びと続くが、
ここでは思春期。
これもいい。
次にエレベーターで最上階の2階へ。
ここに庭園がある。
2階は現代。
モディリアニ、ユトリロ、ピカソ、シャガール、マティスから、
現代抽象画まで。
最後に1階に下りてテーマ館。
ピカソのゲルニカがすごい。
陶板画としても秀作。
ゴーギャン。
われわれは何処から来たのか?
われわれは何者であるのか?
われわれは何処へ行かんとしているのか?
私はゴーギャンは好きではない。
しかし、この絵とこのテーマだけは評価している。
顧客はだれか?
顧客はどこにいるか?
顧客は何を求めるか?
ドラッカー先生の問いに通ずるものがある。
そして最後は、これ。
ベラスケスのキリストの磔刑(たっけい)。
言葉がない。
圧倒された。
感動した。
大塚製薬という会社の凄さも、
思い知らされた。
私は徳島に、
はまった。
最後に、
キョーエイの安友さん、森さんに、
心から感謝。
安友さんはコーネル・ジャパン奇跡の第2期生、
森さんは実行の第3期生。
同志はいい。
仲間もいい。
みな、知識商人。
それがなおさら、いい。
<結城義晴>
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スゴイ 大天井画ですね。生で 見たいナァ。寸法は 800㎡なのかなぁ?あるページで 読みました。
人の技なんだろうか?建築 絵画 彫刻 ~天才ですね。
絵画同好会(名前検討中 ミケランジェロ