百貨店・総合スーパー・スーパーマーケット・コンビニの7月販売統計と「一人は万人のために、万人は一人のために」
島田紳助が去り、
前原誠司が表舞台に。
夏の終わりには、
何かしら事件が起こる。
さらりと受け流して、
秋に目を向けよう。
さて、うれしいことがありました。
今春卒業した立教大学大学院生の渋木克久さん。
結城ゼミのゼミ長だったが、
その渋木さんの修士論文が、
吉野家ホールディングス『CSR報告書 2011』に、
掲載された。
渋木さんの論文は外食産業の海外投資をテーマにしたものだが、
吉野家の田中常泰専務がインタビューに応じてくれた。
渋木さんも渾身の力を込めたすぐれた論文となり、
もちろん出来上がった作品は吉野家にお送りした。
それが「学生の企業研究活動のサポート」という項目で、
『CSR報告書』に写真入りで掲載されたわけ。
CSRとはCorporate Social Responsibilityの頭文字をとったもので、
「企業の社会的責任」を示す。
それを報告書として毎年発表する。
吉野家HDはこのあたりしっかりした会社で、
上質のCSR報告書となっている。
(ダウンロードして中身もご覧いただきたい)
渋木さんも大喜びだが、
私も指導教授として、これ以上にない誇りと感激。
さて、百貨店からコンビニまでの7月の実績報告。
まず全国百貨店の7月の売上高概況。
日本百貨店協会が発表。
総売上高は6006億6333万円。
2カ月ぶりの前年同月比マイナスだが、
そのマイナスも0.1%。
ほぼ前年並みといえる。
7月は意外なことに、
宝飾品や特選衣料雑貨などの高額商材の動きがよかった。
身のまわり品はプラス3.8%、
美術・宝飾・貴金属プラス5.3%と好調だった。
これは震災の影響が少しずつ薄らいできて、
消費マインドが回復してきたことが要因。
次に、7月のコンビニの販売統計調査。
日本フランチャイズチェーン協会発表。
既存店ベースの売上高は7454億1100万円で、
前年同月比は、こちらはプラス9.5%。
これで9カ月連続プラスを記録して、
ちと古いが中畑清張りに「絶好調」。
来店客数プラス2.4%、
客単価プラス6.9%。
さらには商品別売上高の前年同月比が、
日配プラス7.1%、
加工食品プラス0.7%、
非食品プラス26.1%、
サービスがプラス14.3%と、
すべての項目でプラスを達成。
冷やし麺や飲料などの夏物商材が売れたが、
非食品が26%も伸びているところに注目しておきたい。
コンビニの社会的機能が、
広がりつつある。
そして、日本チェーンストア協会の販売統計。
加盟するのは総合スーパー9社を中心に、
スーパーマーケットやニトリ、ダイソーといった企業60社。
総売上高は1兆1226億8741万円。
前年同月比プラス2.1%で、
2カ月連続で伸びた。
住関連商品の中でも特に
「家具・インテリア」の売れ行きが好調で、
プラス10.9%だった。
ここにはニトリの数字が貢献している。
さらにアナログ放送が7月24日に終了し、
地上デジタル放送へ完全移行したことに伴い、
薄型テレビやレコーダー、チューナーなどの
駆け込み需要も大きかった。
最後に、スーパーマーケット3団体発表の
7月の販売統計。
総売上高は堅調な伸びを見せた。
既存店ベースで8709億4400万円で、
前年同月比プラス1.7%。
4月以降、ずっと前年同月比を割っていたので、
久しぶりの好調な数字。
新日本スーパーマーケット協会副会長の増井徳太郎さんも嬉しそう。
数値を細かく見ていと、
食品の合計が7324億5247万円でプラス1.4%。
青果は相場高の影響があり、
1063億7582万円で、プラス1.1%。
水産は全体的な水揚げ高の不足に加え、
関東では、天候の影響で「土用の丑」のうなぎ販売が不調だった。
売上高は757億6634万円、マイナス1.3%。
畜産は810億2010万円で、プラス0.6%。
牛肉の放射線汚染問題があったにも関わらず、
プラスを維持できている。
なぜか。
「牛肉の売上げが20~30%下がったからといって、
売上げが水産品へは流れていかない。
鶏や豚、輸入牛の売上げが増加する。
つまり、日本人に『肉中心の食生活』が定着している」(増井さん)からだ。
畜牛農家やそれにかかわる産業医は大きな痛手だが、
スーパーマーケットでは代替商品が売れていく。
それが輸入牛肉、豚肉、鶏肉。
惣菜は763億8607万円のプラス3.1%で、
今月も好調。
日配品は1600億6683万円で、プラス2.0%、
一般食品は2328億3670万円で、プラス1.7%。
最後に、非食品が930億8941万円のプラス1.9%、
その他が476億8202万円でプラス1.3%だった。
今月のゲストスピーカーは
日本生活協同組合連合会の青竹豊執行役員。
生協とは、
「組合員が出資して、
自分たちの生活をよりよくするために
必要な事業を行うことを目的とする」組織。
つまり「売る機関」ではなく「買う組織」だ。
日本では、地域生協や大学生協が有名だが、
今日では、地域生協の宅配事業が、
もっとも大きなウエイトを占めている。
「この宅配事業が震災後、大きな役割を果たしている。
震災後、近隣のスーパーマーケットがなくなってしまった地域がある。
そんなところでは買物難民や高齢者の宅配利用が増えている」
「宅配事業で使用されるトラックも大いに役立った。
トラックを改造し、移動販売ができるようにしたのだ。
この移動販売へのニーズは今、非常に高い」
「例年、8月は宅配事業が不調となる傾向があるが、
今年は内食需要の高まりによって、
好調をキープしている」
「被災地域にあるみやぎ生協は、
県民の約70%が生協に加入している。
さらに宮城県との災害協定を結んでいたため、
震災直後の支援物資を非常にスムーズに
避難所へ届けることができた」
日本生協連では、
今後は放射線問題などに関する学習会を
積極的に開催していく。
私は、震災や原発問題が起こった時こそ、
生協の出番であると考えている。
「一人は万人のために、万人は一人のために」
協同・助け合いの理念は生協の根底にあるものだが、
それはすべての商業・小売業、サービス業も、
共有しなければならないものだ。
理念だけ声高で、
実行が伴わないのが、
一番いけない。
<結城義晴>