『岡田卓也の十章』(㈱商業界 発行者・結城義晴)発刊の内幕
日本最大の流通企業「イオン」を創始した人物の信念は凄い!
この本には、著者名がありません。
イオンの創始者であり、
名誉会長の岡田卓也さんが、
商業界ゼミナールで語った数々の講演録を、
通称「工藤出版事務所」の工藤澄人が、
まことにすっきりとまとめ、
それに私がちょいちょいと手を入れたもの。
(偉そうな言い回しで恐縮!
しかし私は、彼の最初の上司で、
いわばサンダース軍曹役を務めたのだから、
許してください)
それにイオン常務取締役の堤唯見さんが、
さらに入念に入念にチェックを入れてくれて、
完成しました。
もちろん岡田さんご自身も何度も目を通してくださって、
たとえてみれば「岡田卓也の実印」がしっかりと押された本となりました。
メインボーカリストと、
バックの3人囃子、トリオによって、出来上がった本といえます。
すべての皆様に感謝いたします。
紛れもなく、日本商業史に燦然と輝く本です。
8月2日の日本チェーンストア協会40周年記念パーティで、
岡田さんに、最後のご報告をしたときの会話。
岡田「あの本の著者名は、勘弁してほしいよ。自分で書いたものではないから」
結城「了解しています」
岡田「君の名前にしてもいいよ」
結城「とんでもありません。発行者名に私の名前が入ります」
こんな経緯がありました。
そして、岡田さんは印税を、ユニセフを通して、
ラオスの学校設立に寄付することにしてくださいました。
『岡田卓也の十章』としたのは、
商業界の創始者・倉本長治主幹の、
『商売十訓』のようなものを、岡田卓也版でつくってみたかったから。
だから以下のような構成となりました。
第一章 「店舗」 「建物」が多いだけで「店」は少ない
第二章 「基本」 「バランスシート」を根幹にすえよ
第三章 「競争」 どんな店にもできないことを行う
第四章 「挑戦」 「絶対不利」は「絶対有利」に通ずる
第五章 「立志」 小売業の地位をあげる気概を持て
第六章 「変革」 企業の成長は合併の歴史である
第七章 「利益」 上げに儲けるな、下げに儲けよ
第八章 「暖簾」 見えないものにこそ価値がある
第九章 「商売」 やり方を考えて考えて考え抜く
第十章 「共生」 地域の一員として社会貢献する
これらの十章が、
はじめに 小売業は平和産業である
おわりに 小売業は人間産業である
この二つの短い章によって、サンドイッチされています。
何度も何度も読み込み、表現を考えたりしましたので、
自分で書いた本のように熟知しています。
これにも私は、デジャヴ(既視感)のような感覚を覚えました。
商業界40周年ですから、今から20年前のことです。
私は、ペガサスクラブ主催・渥美俊一先生と何十時間も、
デスマッチのインタビューをした挙句、
『商業経営の精神と技術』という本を書き上げました。
いわゆるゴーストライターです。
この本は、㈱商業界のロングセラー&ベストセラーとなって、
今日に至っていますが、
おかげで私は、渥美理論の基本を習得してしまったのでした。
『商業経営の精神と技術』発刊で、最もご利益を得たのは、
ほかならぬ結城義晴だったのです。
『岡田卓也の十章』もそんな本になる予感がしたのでした。
岡田さんが、信念としていることは三つ。
第1が、仕事や商売には、何よりも志が不可欠である。
⇒今、イオンは、平和産業、人間産業、地域産業というビジョンを掲げます。
岡田さんは「店は客のためにある」の旗の下、
正札販売運動にものめりこみます。
士農工商の差別とも、徹底的に闘います。
第2は、企業組織は、自己変革し続けねば滅びる。
⇒だから、岡田さんは、岡田屋、ジャスコ、イオンと、由緒あるけれども、古い社名を惜しげもなく捨ててきましたし、
店舗もどんどん閉鎖してきました。
「大黒柱に車をつけよ」です。
岡田さん自身、58歳で社長を降り、
75歳で会長を辞してしまいます。
戻ってくるなどということは、もちろんありません。
第3は、企業経営は、貸借対照表(バランスシート)を元にする。
⇒戦後の焼け跡に残った岡田屋の土蔵から、「大福帳」と「見競(みくらべ)勘定」が出てくるのですが、これがバランスシートでありました。
以来、岡田さんは戦前から続く複式簿記による科学的経営を志向するのです。
私は、現在のイオンの経営が、
実によく分かる本であると感じました。
全国を回ってみると、都市の郊外には決まって、
イオンのショッピングセンターがあります。
その大型商業施設はバランスシートを基にした経営を基本としています。
イオンのモールと闘う地方のスーパーマーケットや商店は、
ほとんどが損益計算書に気をとられた経営です。
だからイオンには長期の視野が出てきます。
対抗者はどうしても短期的視点で、営業してしまいます。
悠々と貸借対照表経営を突き進むイオン。
汲々と損益計算書経営にまい進するその他。
ともすると、大型ショッピングセンター対小型店の構図で見てしまいがちです。
そして、イオンの売場はたいしたことはない、
いや、最近は良くなってきた、
などといった感想で終わってしまいがちです。
けれど、それだけではない経営の違いがあるのです。
もちろん、この本には、
以上のこと以外にもふんだんに、
岡田卓也という流通革命戦士の信条が語り続けられています。
速い人なら1時間。
ゆっくり読んでも2時間の本。
語り手は岡田卓也。
発行者は結城義晴。
内容を、二人が、保障します。
<㈱商業界代表取締役社長 結城義晴>
0 件のコメント
Posted by K at 2007年08月23日 00:38
おもしろそう。
読んでみます!
Posted by 結城義晴 at 2007年08月23日 11:26
是非是非、読んでみてください。
岡田卓也さんは、どうも、誤解されているところがあります。もちろん稀代の戦略家なのですが、その根本に志とビジョンがあります。元也さんにはロマンがあります。この本を読むと、そのあたり、眼から鱗です。<宣伝ではありません>
Posted by 早起き営業マン at 2007年08月23日 23:52
小売業は平和産業、人間産業という言葉はいいですね。本屋で探してみます。
Posted by 結城義晴 at 2007年08月24日 00:25
すみません。
商業界の本としては、3倍くらいの初刷で、全国の書店に配本したのですが。
最近は小さな書店では、ビジネス書が置かれにくくなっています。
渡邉美樹さんは、もうビジネス・カテゴリーから脱してしまったのでしょう。
明日、24日、わが社の『飲食店経営』編集長の千葉哲幸が渡邉さんのインタビューをします。こちらは見事なまでのビジネスインタビューのはずです。