日経BP・ホーム出版合併は損保・生保統合を意味する!
日経BPと日経ホーム出版社が合併する。
2008年7月1日。
私も出版人の端くれ、
ある意味、歴史的な出来事だと思う。
日経BPは、ビジネス・パブリケーションを担当する。
日経ホーム出版社は、コンシューマー・パブリケーションを受け持つ。
前者は、ビジネス読者対象。
後者は、一般読者対応。
前者は、『日経ビジネス』や『日経アソシエ』を持つ。
『日経レストラン』も前者。
後者は、『日経トレンディ』など。
前者は、約年商550億円。
後者は、約70億円。
だから存続会社は、日経BPと称する。
私はこれらを保険会社にたとえる。
前者は、損害保険。
後者は、生命保険。
今回の合併は、
いわば損保と生保の統合を意味する。
出版においても損保的な媒体と生保的な媒体の垣根がなくなってきた、
あるいは壁が低くなってきた。
それが、第1の理由にして、
マクロに捉えた市場環境における理由である。
しかし、大きな要因は、出版業界の構造不況にある。
日本のパブリケーション・ビジネスは、1996年をピークとしている。
業界年商、2兆6563億円。
私が、商業界で取締役に就任した年である。
私は、『食品商業』の編集長として、絶好調の時期であった。
その後、日本の出版界は、シュリンクし続ける。
2兆1525億円と、この10年間で、18.97%の減少。
とりわけ月刊誌や週刊誌という雑誌部門はひどかった。
だから企業として、利益をより多く出すために合併し、
不採算の構造をリストラする。
これが、今回の日経グループ内の「損保と生保の合併」の第2の理由。
第3の理由は、雑誌の流通チャネルの変貌。
ホームは、取次⇒書店という既存の流通チャネルを通した販売方法。
BPは、それを通さずに読者に届ける直販方式。
つまり問屋・小売店無用論に基づく。
書店が潰れている。
出版の販売アウトレットが消失している。
だから売れなくなっている。
雑誌においても、書籍においても、流通チャネルが激変しているのだ。
そして、第4の理由が、インターネットの急速な普及。
特に雑誌を買って、読む読者が減って、
インターネットに移っているのだ。
だから新日経BP社は、『日経トレンディネット』を開設した。
私は、2002年から2003年にかけて、
日経BP社と、正面から闘った経験を持つ。
同社が、商業界のドル箱『食品商業』に対して、
競合を仕掛けてきたのだ。
『日経食品マーケット』という名の月刊誌の創刊であった。
私は、専務取締役として、陣頭指揮に立った。
そして闘いつつ、代表取締役社長に就任した。
みんな良く闘ってくれた。
1年後、『日経食品マーケット』は休刊した。
出版業界では、店舗閉鎖を意味する。
その日経BPの、日経ホーム出版社との合併。
出版における「損保と生保の統合」。
時代は、大きく変わっている。
私が、自分の人生において深く関わった
出版業においても、
商業においても。
<結城義晴>