17日間あめりか漂流記⑩テスコ“fresh&easy” 開発の推理
今日は、移動日。
アリゾナ州フェニックスから、テキサス州オースティンへ。
ミスター・ミゾグチと別れて、一人旅。
私、この一人も大好き。
1992年の秋に、シアルドールに審査委員になって、
パリ・ロンドンを訪れたときから、
一人で動くことの快感にはまった。
ホテルと航空便さえ決まっていれば、
どこへでも行く。
とはいっても今回は、移動するだけ。
砂漠とサボテンと岩山のアリゾナから、
穀倉地帯のテキサスへ。
緑が多くなる。
移動しながらの考察。
テスコの“fresh&easy”のこと。
テスコは現在、イギリス国内で主に、4つの店舗フォーマットを展開している。
①テスコ・エクストラ ⇒欧州型ハイパーマーケット、4600~9200m2
②テスコ・スーパーストア ⇒これが中心となるフォーマット、2800m2
③メトロ⇒都心型の小型スーパーマーケット、1000m2
④テスコ・エクスプレス ⇒コンビニタイプ、200m2、日本で実験したフォーマット
“fresh&easy”は、この4フォーマットのうちの、
メトロとエクスプレスの中間型である。
テスコはアメリカで、
新フォーマット開発を試みたと考えるのがよい。
“fresh&easy”は1万平方フィート、約900m2で、
しかもリミテッド・アソートメント(限定品揃え)だからである。
①のエクストラでアメリカに進出しようとすると、
当然ながら、ウォルマートスーパーセンターと真っ向対決となる。
韓国では、このパターンで展開。
「ホームプラス」と名づけて、大成功。
しかし、アメリカでは、避けたい。
②のスーパーストアでは、
クローガー、セーフウェイはじめ、
各地のローカルチェーンの主力タイプや、
ウォルマートのネイバーフッドマーケットとも競合する。
しかもこのスーパーストアの競争が最も激しい。
そしてこれら「メインストリーム」(主流型)は、
いまや、コンベンショナル型(平凡な従来型)となりつつある。
③のメトロタイプは、ロンドンなど大都市型である。
私は、スーパーストアの特殊な小型版としか見ていない。
④は、これも大都会のコンビニ型ミニスーパーである。
コンビにではなく、グロサリーストア。
アメリカ、特にカリフォルニアやアリゾナなど米国西側では、
200m2の店舗自体、力を持たない。
何より、テスコはスーパーマーケット企業である。
イギリスでは、このスーパーマーケット企業が最大小売業なのである。
だからテスコは、ここから逸脱することは絶対にない。
そこで考えたのだろうと思う。
相当に時間もかけて、プライベートブランド開発も行った。
結論が、この店“fresh&easy”である。
ロサンゼルスタイムスは、
「トレーダー・ジョーとラルフのブレンド」と表現した。
しかし、テスコ側から見ると、
「メトロとエクスプレスのブレンド」である。
そして、もう一つ、重要な点。
食品屋のテスコは、ウォルマートを除けば、
アメリカでどこが強いと見ているか、という観点である。
答えは「トレーダー・ジョー」。
私も同感である。
私は、コストコとトレーダー・ジョーが、
「品揃えを絞り込み、客層を広げる」という、
シンプルで最強の考え方を貫徹しつつ、仕事をしていると思う。
今回の17日間の折り返し点でも、
その認識は、強まるばかりだ。
ただし、トレーダー・ジョーは、
マーケティングの対象としてならば、興味あるところだが、
このビジネスモデルは、再現できない。
投資回収にも時間がかかる。
急成長は望めない。
そこで、トレーダー・ジョーと同じグループのアルディに目をつける。
ドイツから進出したアルディは現在、
850店で47億5000万ドル。
この、ノンフリルのグロサリー・ディスカウンターが、
もう一つのモデルとなった。
つまり「トレーダー・ジョーとアルディのブレンド」である。
それが図らずも、イギリス国内の、
「メトロとエクスプレスのブレンド」の延長上にぴたりはまるものとして、
プランの中で浮上してきた。
すなわち、
①小型
②低価格
③限定品揃え
④プライベートブランド中心
⑤低投資
⑥多店化
⑦ドミナントエリア主義
この七原則に、「現代化」されたコンセプトの網を大きくかぶせた。
⑧健康・環境対応
トレーダー・ジョーの255店50億ドル。
アルディの850店47億5000万ドル。
まずはその中間あたりに照準を定めて、
“fresh&easy”はスタートしたのではないか。
すなわち500店で50億ドル。
分かりやす過ぎるだろうか。
もちろん1000店100億ドルは構想しているに違いない。
いかがだろう。
私の2007年11月13日時点の推理。
<つづく、結城義晴>