伊藤雅俊さんとコーネル・リテールマネジメント・アカデミーと荒井伸也さんの主張
伊藤雅俊さん。
イトーヨーカ堂創業者で、
現在、セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。
時価総額約60億円の個人所有株を、
幹部社員や勤続年数の長い社員に、
贈与される。
今朝の日経新聞一面のコラム記事。
「今年で50周年を迎えるのを機に、
社員の士気を高める」
こう、記者は書いているが、
それは、全く違う。
私は何よりも、伊藤さんの、感謝の気持ちが、
一番の動機だと思う。
日本最高の「商いの心」をもった企業グループ。
この商いの心を担ってくれた社員たち。
その社員への感謝の念。
創業以来の50年を思うときに、
伊藤さんの胸を去来したもの。
想像するだけで、ジンとする。
伊藤さんは昨年の決算期で、
2159万株を個人所有していらっしゃるが、
その1割を、この贈与に当てるという。
「無私と利他」を公言する私も、
改めて、伊藤さんに、脱帽のうえ、心より合掌。
さて、
コーネル・リテール・マネジメント・アカデミー。
この秋、10月にスタートします。
米国アイビーリーグのひとつ、コーネル大学。
そのフード・エグゼクティブ・プログラムをベースに、
日本で食品産業を中心としたリテール・マネジメントを教える。
次代の経営者・経営幹部を養成する。
ドラッカー用語でいう「トップ・マネジメント」
その体系を教授し、その育成・養成をお手伝いする学校。
日本のスーパーマーケットの中の「産業内大学」。
日本の「スーパーマーケット大学」
大分、固まってきました。
28日、東京・神田の日本セルフ・サービス協会で、
会議がもたれました。
70時限のカリキュラムの叩き台を、私から提出。
それについての議論も進められました。
これが煮詰まって、さらに講師陣も決まっていきます。
荒井伸也さんを、主任講師に迎えます。
ご存知、作家・安土敏。
最近は小説『後継者』(ダイヤモンド社刊)が評判。
「結城義晴君の独立を励まし商人舎発足を祝う会」の
発起人代表をお引き受けくださった。
その荒井さんの言葉。
「サービス残業をなくすこと。
これが、日本の小売業にとって、
最も重要なことです。
サービス残業を認めるというのは、ゴルフで言えば、
手で好きなところにボールを運んでよろしい、とうこと。
それならば、どんなによいスコアでも出せる」
私も、もちろん賛成。
私のいう「働きたい会社、働きたい店」は、
お客様と働く人が、ともに満足する状態が維持されたもの。
だから当然ながら、サービス残業はあってはならない。
あってはならないと言いつつも、
それがあるべき論に終始してしまってはいけない。
荒井さんは、そこから始めるべきだと言う。
「サービス残業しないで、
高い給料を出せる高収益体質をつくる。
そのために科学的なマネジメントが、
必要になる。
だから科学的な作業体系が必要だし、
バックルームや店舗も、品揃えも、
科学的に設計されなければならない」
もちろんマーチャンダイジングもプロモーションも。
サービス残業を完全否定する厳しさの中から、
理想に近いマネジメントが生まれる。
「ドラッカーの考え方がベースです」と荒井さん。
私ももちろん、ドラッカー派。
ドラッカー主義者といってもよい。
コーネル・リテール・マネジメント・アカデミーは、
この精神をもとに、スタートします。
私は、思う。
ドラッカーの言うことは、
身も蓋もないことばかり。
しかしそれを実現させることが、
すなわちサイエンスなのです。
サイエンスでなければ、
名門コーネル大学からお墨付きをもらうことが、
出来るはずがありません。
この考え方を植えつけられた経営者が、
毎年、次々に育って生きます。
この考え方が、ベースにあれば、
卒業生は、自ら、道を切り拓いてくれます。
私は、そんな論理的な学校がつくりたい。
荒井さんの参戦は、なんとも心強いものです。
ありがとうございます。
会議の後、荒井さん、事務局と会食。
志が高いから、食事も会話も盛り上がった。
すべての人に感謝。
お店は、御茶ノ水に近い「土桜」(におう)。
トマトは、実にワイルドで瑞々しかった。
来週からの渡米は、
コーネル大学マクラフリン教授にお会いするためでもある。
FMIジャパン事務局の中間徳子さんが先乗り。
頼りになります、中間さん。
日本商業の現代化に向けて、
ひとつ、足を、踏み出した気がします。
「志定まれば、気盛んなり」
合掌。
<結城義晴>