結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年05月10日(土曜日)

アメリカ FMI とsupermarket 巡り⑤デジャヴの中のラスベガス店舗めぐり

三つの次元が交錯するような、
不思議な感覚を覚えています。

このブログを書いているのは、
サンフランシスコの5月9日、午前3時。

しかし日本を想像しながら書いているから、
日本時間は10日、午後7時。

内容は、時系列で追いかけているから、
まだラスベガスの7日、午前10時。
三つの時間と場所を意識しながら、
ものを考え、思い出し、
事実を書いていく。

不思議な感覚です。
しかし、これは海外旅行をしなければ、
味わえない感覚でもあります。

デンゼル・ワシントンの「デジャヴ」という映画、
思い浮かべます。
クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングにも、
「デジャヴ」というアルバムがあった。
「デジャヴ」には名作が多い。

 

さて、過去が現在を追いかける展開。
5月7日の砂漠の中のラスベガスの朝。
ラスベガス渓谷の南西部のヘンダーソン地区。
典型的なサバーバン。

サバーバンというのは、単なる「郊外」ではなく、
新興住宅地が広がる地域。
だから小売業は、何をやっても比較的うまくいく。
しかしだから、次々に競合店が出てくる。
それも一番新しくて強いフォーマットで。
だから激戦区となる。
だから見どころ満載となる。

今回のコーディネーターは、
アクセス・インターナショナルのロバート・鈴木さん。
私は、あくまでエグゼクティブ・アドバイザー。
この後の記事の数字など、ロバートさんの解説に、
現地店長などのインタビューから得られた情報、
そこに私の知識・情報を混ぜ合わせたものになる。
ロバートさんに感謝。
店の見方は、いつものように私流。

①スミス・フレッシュフェア
全米第1位のスーパーマーケット企業・クローガーの、
ネバダ州・ユタ州などを担当するのがスミス。
ソルトレークシティを州都とするユタ州出身で、
いま約130店舗。クローガー傘下。
ラスベガスでは39店舗で、この地区の31.7%のシェアを占める。
ナンバー1シェアの企業。
そのアップスケール・タイプが、このフレッシュ・フェア。
フード&ドラッグ。
スミス
1999年オープンの8年目。
店舗面積は7万平方フィート(2000坪)。
週の売上高60万ドルというから年間30億円を超える規模。

青果部門は、スーパーマーケットの生命線。
この店では全体の10%の構成比になる。
ボリューム陳列も原則通り。
日本のスーパーマーケットのほとんどが放棄してしまった。
青果

青果部門のトップに来るのが、
オーガニックコーナー。
見事!
オーガニック

担当者にカメラを向けたら、ポーズをとってくれた。明るい。
成績がいいから、明るくて元気なのです。
だから成績も良くなる。
ポーズ

精肉対面売り場では、大皿盛りで、
その上に肉を盛り上げて陳列している。
ミート・シーフードも、10%の構成比。
ミート

魚の売り場。盛り付けが美しい。
魚

グロサリーの構成比は、35%から40%。
缶詰売り場は、客層ごと、用途ごとに、
ベースの部分を色分けして、プレゼンテーションしている。
缶詰

ストアディレクターのダニーさんが、インタビューに応じてくれた。
ロバートさんとともにFMIジャパンの中間徳子さんが的確な通訳を。
店長
ダニーさんによると、この店の従業員数は150人。
45%がフルタイマーと、多い。
「客数は日曜、土曜、月曜、金曜、水、火、木の順」
「テスコのフレッシュ&イージーが近隣にオープンしたが、
全く影響はない。
うちは前年比118%で伸びている」
「フレッシュフェア全体のアップスケールが、
最強のカスタマーサービスです」

店舗総合力のスケール(基準)を上げ続けることが、
最大の競争対策であるというコメント。

②ホールフーズ・マーケット
ご存じオーガニック&ナチュラル・スーパーマーケット。
昨年、この分野の第2位ワイルド・オーツを買収した。
その分、ちょっともたもたしている感じ。
米国の消費が減退していて、
ホールフーズにとって、正念場を迎えている。
ホールフーズ

年商65億9200万ドル、276店舗。
既存店の伸び率は、なんと7.1%。
それでも最近の3年間は既存店がずっと2桁で伸びていたから、
やや停滞感がある。
この日のこの店のオーガニック青果アイテム数は196だった。
青果

青果部門壁面の「ショートカット・シェフ」という対面コーナー。
野菜、果物をカットし、調理するサービス。
ショートカット

コーヒー、お茶の売り場には、おなじみのUCCな缶。
その下の段に伊藤園の500ミリリットルペットボトル。
コーヒーと茶
ホールフーズの良さは、店舗間のばらつきが極めて少ないことだった。
それが少し、崩れているように思われる。
マーチャンダイジングの問題ではなく、
マネジメントの問題に起因する。

③フレッシュ&イージー
イギリス最大の小売業は、スーパーマーケット企業テスコ。
そのテスコが5年間の調査・研究の末に、
米国に出店した話題の「フレッシュ&イージー」
現在ロス、ラス、フェニックスに65店。
ファサード
私はノブ・ミゾグチさんと一緒に、
昨年11月9日、ロサンゼルスでオープンしたばかりのこの店を、
一挙に3店、視察した。
ミゾグチさんはシアトル在住の、
「商人舎オーガニック/ナチュラル研究会座長」
その時、私は、
「50%ほどの売り場構成比を占めるプライベート・レーベルが、
いかに顧客に受け入れられるかがポイントである」
と指摘した。
すなわち、ストアロイヤルティを、
プライベートブランド・ロイヤルティは超えることができない、
という結論に至った。
7カ月後の現在、果たしてそれはどうなのか。
それが最大の関心事だった。
青果
青果部門は、ケース陳列。
これはイギリスと変わらない。
回転するか否かが問われている。
ラック

ゴンドラは、ラック方式。
アイテムが絞り込まれていて、
限定品揃え型のグロサリーストアである。
コンセプトそのものは、オープン時と全く変わらない。
ネスレ
しかし、目立つことがあった。
プライベート・レーベルのフェース数は依然、多いが、
売り場で目立つのは、ナショナルブランドの安売り。

極めつけは、店頭。
左がコカコーラ、右がネスレのパレット陳列。
コカ・コーラ
本来のコンセプトならば、ここに、
「フレッシュ&イージー」のプライベートブランドを持ってくるべきだ。
ホールフーズなど、堂々と入口でPB展開をしている。
ということは、フレッシュ&イージーが、
いまだストアロイヤルティを築き上げるのに、
典型的なナショナルブランドを前面に押し出している、
ということだ。

この店では、未だ、道遠し、の観あり。
(ロサンゼルスでは違っていたのだが)

④ウォルマート・ネイバーフッド・マーケット
ウォルマートが1998年にスタートさせたスーパーマーケット。
今年の1月決算時点で134店。
1年間に22店増。
昨年1月にニューデザインストアを開発したが、いまだ微々たる存在。
約1000坪のフード&ドラッグ。
ヘルスケア・ビューティケアに力を入れるも、
今夏、マーケットサイドというさらに小型の新フォーマットを実験し、
このタイプを止めるか、転換するかの瀬戸際にきている。
NM
フレッシュ&イージーとは、道路を隔てている。
これはフレッシュ&イージーが仕掛けてきていることを示す。
仕掛けられたからか、そんなにひどくはない店となっている。
ウォルマートは不思議な会社だ。
競争が好きな企業といえる。
odemukae
店頭入り口にも、プロモーションの仕掛けがある。

青果
青果部門も以前より少しよくなった気がする。

EDLP
そして、「オールウェイズ・ロープライス」の連発。

だが、「エブリデーロープライス」という点では、
フレッシュ&イージーも同様の政策をとっているから、
この点では、変わらない。
両店の、この時点での勝負、
水入り、再勝負となる。
それも低次元の。

しかしこの両店を視察して痛感したこと。
「店舗を小型化していくことの、難しさ」
増やしたり、大きくしたりする行為は、
比較的にやさしい。
「小さく、狭く、濃く、深く」
これは私が主張している標語だが、
この仕事が困難を極める。
米国と英国の、小売業では最高の頭脳を集めているはずの、
ウォルマートとテスコにおいて、然り。

普通の頭脳の集団は、
小型化などに挑戦しないほうがいい。

大型化は、易しいのだ。


⑤スーパーセンターHE5タイプ

ラスベガス最後の店は、王者ウォルマート・スーパーセンター。
その環境対策店舗HE5型という。
今年3月18日オープン。
ダラスとデンバーの環境対策プロトタイプ。
そのダラス型を普及版にアレンジした店。
ファサードも地域に合わせた色づかい。
wal

マーチャンダイジングは、スーパーセンターそのもの。
ただし、消費不況に対応して、
ベーシックな商品の低価格を前面に出している。
オーガニックなど絞り込んで、
ロープライスを徹底的に訴える作戦。
フロント

マグネット売場のミルクコーナーも、
御覧のように目立つ。
リーチインケースは省エネタイプ。
リーチインケースの多用そのものが、省エネルギー。
マグネット

ファションは、現在、消費環境から売れてはいないが、
商品とプレセンテーションは各段にレベルアップした。
一目瞭然。
ファッション
ウォルマート・スーパーセンターにとっての最大の問題は、
やはり、じりじりと迫っている自らの飽和だけのようだ。

ラスベガスでは、ナンバー1企業の取り組みを見た。
スーパーマーケット1位のクローガー系スミス。
オーガニック&ナチュラルスーパーマーケット1位のホールフーズ。
そしてイギリス1位テスコと世界1位のウォルマート。

みんなすごい会社ばかり。
でも第1位が、それぞれ悩みばかり抱えている。
その自分の悩みに対しては、こんなもんだ。
なんか、安心するよなァ。
皆さん?

<ロサンゼルス編に続く、結城義晴>


4 件のコメント

  • いやぁ、面白い。写真も鮮明ですし、解説もグー!
    結城先生、のりに乗ってる感じがします。
    勉強させていただいています。

    でも、睡眠不足にご注意。

  •    元気です。疲れてはいるけれど。
       刺激を受けて、変わろうとしています。
       睡眠、とります。
       気をつけます。

  • こんにちは
    人偏の「自働化」でコメントさせていたたせいて二回目のkentnkです。
    スミスはラスベガスの店に五年前に行かせていただいたのですが、外観はその当時のスミスと同じながら、陳列がまったく違っています。へえ?、ほお?とブログの写真みながら感心。貴重な写真 ありがとうございました。

  •    スミスはクローガーの傘下にありますが、
       スーパーマーケット三強も峠を越えたという表現を
       私は、しました。
       これはあくまでも、現場を見た印象です。
       しかし、クラブカードの中毒にかかっていて、
       これを何とかしなければなりません。
       リージョナルチェーン・ローカルチェーンのほうが、
       その意味では柔軟です。
       

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.